記事・インタビュー
民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。
医学書を読むのが大好きな先生方が初学者に向けた医学書解説・比較の医学書レビューと、
日々医師のために医学書を作る出版社の担当者がおすすめの良書をこちらで集めて発信していきます。
購入先のリンク(Amazon)も掲載していますので、お気に入りの書籍あればご購入ください。
レビュー著者:三谷雄己先生(踊る救急医先生)
「心房細動の患者さんにジルチアゼムなどのカルシウム拮抗薬を使いたいけれど、どれくらいの量をどれくらいの時間をかけて投与すればいいのだろうか……。」
「気管切開前にヘパリンナトリウムの持続投与を中断したいけれど、半減期や効果持続時間を考えると、どれくらい前に中止するのが妥当なのだろうか……。」
ERやICUで使用する薬剤は多岐にわたります。
それら薬剤の中には、直接治療予後に関わる強力かつ即効性の高いものが多い一方で、適切な投与量の調整をしなければ治療効果が得られないばかりか、重篤な合併症を引き起こす可能性をもつものもあります。
急性期治療の第一線ともいえるERとICUであるからこそ、薬剤投与量を“正確に、そして迅速に”判断しなければいけません。
今回は、そんな救急領域で頻用される薬剤の具体的な組成や投与量が網羅されている書籍を紹介します。
ERやICUで自信をもって薬剤を使うために読むべき一冊として、私がおすすめするのがこちらです。
- 書評『あなたも名医!もっと使いこなす!救急頻用薬【現場のリアルな選択とさじ加減】』
1.本書のターゲット層と読了時間
【ターゲット層】
・ERやICUで自信をもって薬剤を使いたい研修医・専攻医
・日常的に用いている薬剤の使用感覚が果たして正しいのか、体系的に学びたい専攻医
【推定読了時間】
・4~5時間程度
2.本書の特徴
●薬剤投与量の「さじ加減」に焦点を当てた解説
●使用用途別に合計80種類の薬剤を解説
していることを特徴とする一冊です。
本書は、東京都立多摩総合医療センター救命救急センター部長・センター長である清水 敬樹先生が執筆された。
本書を読むことで学べる項目の特徴的なものをピックアップすると、このようになります↓
●薬剤の基本的プロフィール
●薬剤の典型的使用シーンにおける考え方
●薬剤投与技術のワンランクアップのためのさじ加減
これらはERやICUに関わる先生方の知識の整理や学び直しに、非常に役立つ事項であると思います。
3.個人的総評
本書の特徴はなんといっても、薬剤の投与量の“さじ加減”にフォーカスしていることです。
合計80種類の薬剤について、
① 作用機序や半減期、用量の解説
という基本の情報に加えて、
② 薬剤を用いる典型的なシチュエーションに応じて、薬剤を使用する根拠や投与量の調整について
解説されています。
私個人の感覚ですが、頻用薬というだけあって薬剤の8~9割は処方経験があるものでした。
本書は投与量の“さじ加減”に特にフォーカスしているため、カテコラミンや鎮静薬など普段何気なく選択することも多い薬剤の“妥当な使用感覚”を再確認することができました。
また、本書に登場する「使用時に気を付けるべきポイント」は、明日からの診療に生かせる実践的なものばかりでした。救急専攻医である私ですが、注意すべき副作用が意外と多いことに驚き、いい勉強になったと思います。
例えば、アンチトロンビンやリコモジュリン、ハプトグロビンなどの適応に迷うことがある薬剤についても、適応するかどうかの判断方法を丁寧に解説されています。
その他、私自身には処方経験がなく他科の先生方が処方されている薬剤についても、作用機序や使用上の注意点を読むことで非常に勉強になりました。
一方で本書において注意すべきだと感じた点としては、
「症例がどの薬剤の適応であるか、を気付くことができる前提での解説となっているので、どの症例に必要な薬剤なのか判断できる知識を持っていなければならない」ということです。
例えば、「体液バランス過剰と判断した場合にフロセミドを投与するとしても、まずは体液過剰の程度や原因を評価するエコーや病歴、身体所見を知っておかなければならない」といったところです。
そのため、「この症例にはこの薬剤」という判断方法については他の書籍で学ぶことをおすすめします。
もう一点、各薬剤の具体的な治療効果判定といった評価方法についても、他の書籍で学ぶ必要があると感じました。
これらに関しては、本書において、もちろん概念的な解説はされていますが、「臨床ですぐに使うためにはより一歩踏み込んだ解説が欲しい」といった印象がありました。
以上の点については頭の片隅においた上で一度手にとっていただければと思います。
これらは本書の個人的な評価であり、しかも何様だよと言われてしまうことは重々承知ではありますが、私は本書について“薬剤投与量のさじ加減や使用感覚を学ぶために最適な一冊である!”と感じました。
4.おすすめの使い方・読み進め方
●どんな薬剤が本書に掲載されているのか、ざっくりと通読
●薬剤を使用する度に参照して確認
●その後は経験した症例の前後で読み直して復習!
個人的にオススメの使い方をご紹介します!
個人的におすすめの使い方をご紹介します。
私個人の意見としては、ざっと読むだけなら3~4時間程度あれば十分なので、まずはどんな薬剤が本書に掲載されているのか、ざっくりと通読することをおすすめします。
高度な知識を要する内容であり一度読んだだけでは理解しにくいことばかりであるため、その後は本書で登場した薬剤を使用する度に参照して確認しましょう。
(ちょっとした参照に便利な電子版も存在しています!)
特に、使用上の注意点は自分を守るためにも、再確認しなければならないことが多いと感じました。
その後は実際の症例を通じてインプットとアウトプットをたくさん経験していきましょう。
5.医書レビュー
6.まとめ
本書は薬剤投与量について学びたいERやICU勤務の医師にとって必須の一冊である!
まとめると、本書は薬剤投与量のさじ加減について、わかりやすく学ぶことができる本当におすすめの一冊です。
この一冊を通じて学ぶことで、今後は自信をもって頻用薬を投与できるようになるでしょう。
今後の学びや業務をより良いものにしたい方には是非手にとっていただきたい一冊です◎
以下に要点や基本事項をまとめましたので、
購入する際には是非参考にしていただければ幸いです。
この記事を読んで参考になった方、面白いと思ってくださった方はハートマーク(お気に入り)をタップして今後も定期的に覗きに来ていただければ幸いです。今後も定期的に記事を更新していく予定ですので、みなさまのリアクションが今後の記事を書くモチベーションになります!
★今回の書籍以外にも、踊る救急医先生の医学書レビューはこちらのページで読むことができます!
想定読者や各診療科ごとにわかりやすくまとめられているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
詳細はこちら≫https://dancing-doctor.com/2021/03/31/review-reader/
<プロフィール>
三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター
立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。
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