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2021.09.08

書評『わかって動ける!人工呼吸管理ポケットブック 改訂版』すぐ実践できる人工呼吸管理の参考書の鉄板です!

『わかって動ける!人工呼吸管理ポケットブック 改訂版』すぐ実践できる人工呼吸管理の参考書の鉄板です!

はじめに

3歳の小児患者さんの緊急気管挿管を行うことになったけど、物品のサイズや投与薬剤の量はどうするんだっけ…?

びまん性肺疾患が疑われる患者さんを管理しているけど、鑑別方法や適切な呼吸管理はどうするんだっけ…?

肺に負担がかかっている圧ってどう評価するんだっけ…?

VAPが疑われる患者さんがいるけど、厳密な診断基準や今後防ぐためにはどのように管理したらいいんだっけ…?

これらは日々ER/ICUで後輩や同僚と仕事をする中で出てくる人工呼吸管理における悩みや疑問点です。気道および呼吸の管理は救急や集中治療の分野でとても重要であり、確実に押さえておかないといけないポイントである一方で、臨床の現場での疑問や悩みはつきません。この疑問や悩みを解消しようとして色々な本を読み漁っていたところ、この一冊に出合いました。本書を読むことで今後様々なシチュエーションで人工呼吸管理を行わなければならない時に、自信を持って対応することができます!今回、臨床の現場で人工呼吸管理を行う際に必ず読むべき一冊として自分が自信を持っておすすめするのがこちらです。

わかって動ける!人工呼吸管理ポケットブック

目次
    1. 1.本書のターゲット層と推定読了時間
    2. 2.本書の特徴
    3. 3.個人的総評
    4. 4.おすすめの使い方・読み進め方
    5. 5.まとめ

1.本書のターゲット層と推定読了時間

【ターゲット層】
  • 初期研修医から後期研修医まで
【推定読了時間】
  • 5-6時間程度

ICUやHCUで人工呼吸管理に携わる機会のある若手医師全員におすすめの一冊ですし、半日あれば無理なく通読することができます。

2.本書の特徴

本書は、志馬伸朗先生が編集された、下記の特徴を持つ一冊です。

  • 人工呼吸器の設定から調節、離脱、トラブル対応まで、現場で迷った時に必要なデータがすぐ引用できる
  • チェックリストを参照することで具体的なアクションプランを思い浮かべることができる

序文では志馬先生が本書を編集されるにあたっての思いが記されているので、出版社の公式HPより一部引用させていただきます。

2020年初頭,COVID-19狂想曲のなかでこの序を書いている。狂想曲、とはいささか不穏当で適切でない物言いかもしれない。しかし、連日テレビやネットを賑わす報道やSNSは、何となく騒ぎたいから騒いでいる、この問題を騒げば盛り上がる、的な空気の存在を感じるのは筆者だけではないはずだ。人類の生存は常に感染危機との戦いである。狩猟・移動をやめて定住化・農耕をはじめて以来、感染症アウトブレイクの危険性が増えた。そして近代、定住化に加えて容易すぎる移動を手にした人類には、新興感染症パンデミックの勃興というさらなる生存の危機が訪れている。重要なことは、危機は危機として正確に情報を把握し、冷静かつ理性的に対処することだ。

現時点でCOVID-19に対する特異的治療はない。巷でささやかれる“効くかもしれない特効薬”も、どこまでの効果と副作用があるかまだわからない。手洗いと咳エチケットを励行し、具合が悪ければ外出を控え移動や集会を避け、十分な休息と水分・栄養をとりよく眠ること、医療従事者においては、現場で標準予防策と感染経路別予防策を確実に励行すること、これが一般対応のすべてである。これだけである。

呼吸管理も同様だ。患者予後を劇的に改善する呼吸管理など存在しない。一方でその誤用は、かえって患者予後を悪化させる方向に容易に働く。そして残念ながら、呼吸管理という複雑系を完璧に適用することは難しい。われわれにできることは、その困難性を克服すべく、日々コツコツと精進することに尽きる。生理学をよく理解し、正しく病態を評価診断し、できるだけ侵襲性の少ない基本的な管理を、時機を逸することなく提供することだ。

基本をやり続けるしかないのだ。

出典) M2PLUS | わかって動ける!人工呼吸管理ポケットブック 改訂版
わかって動ける!人工呼吸管理ポケットブック 改訂版~設定から管理・トラブル対応まですぐに役立つ、必須知識とチェックリスト – 羊土社 

人工呼吸管理における基本事項は、初期研修医の先生方にとって今後どのような診療科に進んだとしても学んでおくべき大切なことであると思います。また、日々ICUの診療で悩む後期研修医の先生方にとっても知っておきたい内容がたくさん盛り込まれています。

3.個人的総評

本書の特徴は、なんと言っても現場での使いやすさを徹底的に考慮した上で執筆された一冊であるということです。ページ数も多すぎることなく簡潔なので、苦痛を感じることなく通読することができます◎何より、本書の解説は初学者にも理解しやすいよう丁寧に書かれているので、途中で挫折してしまうことも少ないと思います。気道確保や人工呼吸器の波形など、視覚的な情報がないと理解しにくい事柄についても、図表が豊富に使われているのでスイスイ読み進められます。

僕自身のオススメ度が高いのは個人的総評を見ていただければわかるとは思いますが、何よりアマゾンの評価の高さが本書の素晴らしさを物語っています!本書は人工呼吸管理に携わる医師にとって必読の一冊である!と感じました。

4.おすすめの使い方・読み進め方

  • これまで悩んでいた診療を思い出しながらまず通読!
  • どこに何が書いてあるかをざっくり把握(付箋を貼るのもよいでしょう)
  • 臨床で感じた悩みや疑問点を本書で解消

個人的におすすめの使い方をご紹介します!本書はページ数がそれほど多くはないので、まずはこれまで悩んでいた診療を思い出しながら通読してみることをおすすめします。基本的な事項だと思い込んでいたことでも、しっかり読んでみると理解不足だったという内容も少なくありません。一度通読した後に、どこに何が書いてあるかをざっくり把握し付箋を貼っておくと、臨床で悩んだ時にすぐに参照しやすいでしょう。その後は症例を経験する前と後で読み直して、悩みや疑問点をその都度解消していくことを目指します。個人的に思うのは、知識が身になっているなと感じるのは結局現場で悩み抜くという経験をした後です。参考書を読んだ後は実際の臨床でどれくらい知識が活用できるかを常に意識するとよいかと思います。

5.まとめ

まとめると本書は、人工呼吸器についてわかりやすく、そして深く学ぶことができる一冊です。この本を読んで学ぶことで、この先かなり呼吸状態が悪い患者さんに出会ったとしても、自信を持って対応することができます!今後の学びや業務をより良いものにしたい方にはぜひ手にとっていただきたいです。以下に基本情報をまとめましたので、購入する際には参考にしていただければ幸いです。

詳細

タイトル

わかって動ける!人工呼吸管理ポケットブック
改訂版〜設定から管理・トラブル対応まですぐに役立つ、必須知識とチェックリスト 単行本

わかって動ける!人工呼吸管理ポケットブック
基本情報
  • 著者:志馬 伸朗
  • 出版社:羊土社
  • 発行年月日:2020/8/30
ターゲット層

初期研修医から後期研修医まで

推定読了時間

5-6時間程度

本書の特徴
  • 人工呼吸器の設定から調節、離脱、トラブル対応まで、現場で迷った時に必要なデータがすぐ引用できる
  • チェックリストを参照することで具体的なアクションプランを思い浮かべることができる
評価 わかって動ける!人工呼吸管理ポケットブック
購入先

★今回の書籍以外にも、踊る救急医先生の医学書レビューはこちらのページで読むことができます!
想定読者や各診療科ごとにわかりやすくまとめられているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
詳細はこちら≫https://dancing-doctor.com/2021/03/31/review-reader/

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<プロフィール>

三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
広島大学救急集中治療医学所属
広島大学病院 救急科 医科診療医
日本医師会公認健康スポーツ医
日本救急医学会認定ICLSインストラクター

立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。


【踊る救急医】
Twitter https://twitter.com/houseloveryuki
ブログ https://dancing-doctor.com/

三谷 雄己【踊る救急医】

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