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2021.08.30

書評『明日のアクションが変わる ICU輸液力の法則』 ICU輸液に対する思考回路が劇的に変わります!

明日のアクションが変わる ICU輸液力の法則

はじめに

ICUでの業務の合間に後輩たちからよく聞くのは、次のような質問です。

「この患者さんの点滴の量をどう調整していいかわかりません…」

「輸液反応性って何ですか…?下肢静脈瘤をエコーで見たらいいんですか?」

自分自身いろんな輸液の本を読んできましたが、それぞれについて病態生理に基づいたアセスメントと解説をするのは難しいな…と、返答に困ってしまうこともしばしばありました。初期研修医の先生方と一緒に、ICUの体液バランス管理についてもっと理解を深めたいなと思っていた時にこの一冊に出会いました。今回、ICU領域での輸液の知識を深めるために読むべき一冊として、自分が自信を持っておすすめするのがこちらです。
明日のアクションが変わる ICU輸液力の法則

目次
    1. 1.本書のターゲット層と推定読了時間
    2. 2.本書の特徴
    3. 3.個人的総評
    4. 4.おすすめの使い方・読み進め方
    5. 5.まとめ

1.本書のターゲット層と推定読了時間

【ターゲット層】
  • 研修医(特に2年目)からICUや重症患者管理をメインに行う後期研修医まで
【推定読了時間】
  • 7-8時間程度

完全に初めてというよりは、少し点滴療法の基礎がわかってきた段階で読むと勉強になることが多々あるかと思います。

2.本書の特徴

本書は、神戸市立医療センター中央市民病院の集中治療部に所属されている川上大裕先生が、次のような思いを込めて書き下ろした一冊です。

  • 集中治療医を志す若手医師だけでなく、急性期の輸液や循環管理に携わるすべての医師に向けての輸液の指南書を作りたい
  • 新しいエビデンスが次々と乱立していく現在、それらに振り回されることなくそれらを使いこなすことができるようになってほしい
  • そのための根っこである循環生理をしっかり理解してほしい

この本を読み終えた時には、輸液反応性やその指標、そして各疾患の循環生理やフェーズを意識した管理など、今後、初期研修医の先生方が何科に進んだとしても、大事な基礎となる急性期の輸液や循環管理で学ぶべき重要事項を理解していることでしょう。後期研修医の先生方にとっては、普段臨床で上級医の先生方がどのような知識やエビデンスに基づいて輸液管理を行っているのか、その思考回路を学ぶことができると思います。

3.個人的総評

この本を読み進めていくと、これまで断片的にしか理解できていなかった循環管理における知識が見事につながっていき、頭の中で整理されていくのを感じました。通読していてここまで気持ちいいと思った本は、本当に久しぶりでした。

本書は輸液の参考書かと思いきや、敗血症や急性心不全、ARDSの循環動態を中心とした管理の内容についても言及されており、重症患者さんに想定される病態が網羅されています。特にスワンガンツカテーテルや右心不全の項目は、これまで苦手意識が強かった自分にとってはまさに目から鱗の内容ばかりでした。

一方、僕自身の知識や理解力が不足しているのかもしれませんが、P-Vループなど個人的には一度通読するだけでは理解が十分ではないなと感じたことも多く、読み込んだり臨床で症例に出会うたびに何度も読み返したりする必要があるなと思いました。
あくまで個人的な評価ではありますが、本書は集中治療領域の循環管理を学ぶ上でバイブルとなる一冊である!と感じました。今後出会う初期研修医の先生方に本書をおすすめしたいと思います。

4.おすすめの使い方・読み進め方

  • 難しい内容に立ち止まることもあるが、ある程度理解できていないことを許容しながらまずは通読
  • 本書に出てきた症例を経験した後で読み直して復習
  • 後輩に本書の内容を駆使してアウトプットすることで、自分の理解度を高める

個人的におすすめの使い方をご紹介します。個人の意見としては、上記のようにまずは集中治療領域の体液管理について全体的に学んだ後に、様々なシチュエーションでアウトプットすることで理解が深まるなと思いました。内容が一部難しいなと感じたとしても、まずは全体像の把握に努めて読み進めてみるのがよいでしょう。その後は実際の症例はもちろん、勉強会や普段の後輩への指導の際に本書の内容を用いて、自分の言葉でアウトプットし続けてみましょう。人に説明するためには自分が一番理解していなければいけないので、人に説明することこそが理解を深めることにつながると思います。

5.まとめ

まとめると、本書は集中治療領域の循環管理を学ぶ上でバイブルとなる一冊です!今後のICUや重症患者さんにおける、輸液管理をより深く理解したい方は、ご一読いただければ幸いです。最後に要点や基本情報をまとめましたので、購入する際には参考にしてみてくださいね。

詳細

タイトル

明日のアクションが変わる
ICU輸液力の法則

明日のアクションが変わる ICU輸液力の法則
基本情報
  • 著者:川上 大裕
  • 出版社:中外医学社
  • 発行年月日:2019/9/11
ターゲット層

研修医(特に2年目)からICUや重症患者管理をメインに行う後期研修医まで

推定読了時間

7-8時間程度

評価 明日のアクションが変わる ICU輸液力の法則
購入先

★今回の書籍以外にも、踊る救急医先生の医学書レビューはこちらのページで読むことができます!
想定読者や各診療科ごとにわかりやすくまとめられているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
詳細はこちら≫https://dancing-doctor.com/2021/03/31/review-reader/

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<プロフィール>

三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター

立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。


【踊る救急医】
Twitter https://twitter.com/houseloveryuki
ブログ https://dancing-doctor.com/

三谷 雄己【踊る救急医】

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