記事・インタビュー
ドイツはノルトライン=ウェストファーレン州にあるボン大学で循環器内科のフェローとして働いている杉浦 淳史です。
この記事では、日本生まれ日本育ちの循環器内科がドイツでの研究・臨床留学の中で経験するさまざまな困難・葛藤・喜びを、ありのままにお伝えします。
カテーテル心臓弁膜症治療について
私は弁膜症カテーテル治療(胸を切らずに血管に治療用の管を入れて治す)を勉強・研究するリサーチフェローとして、ボン大学の循環器内科で雇われています。(スズメの涙のような給料です…)
1980年代に始まり標準治療として世界中に普及した冠動脈カテーテル治療に続き、2000年代には心臓弁膜症のカテーテル治療が欧米から始まりました。TAVI(経カテーテル大動脈弁置換術)の普及の速さは日本でもよく知られているとおりです。
カテーテル治療の強みは何といっても胸を切らず、そして心臓を止めずに治療できることです。私は今や標準治療となったTAVIの診療と研究にも深く関わっていますが、優先順位を付けると、僧帽弁と三尖弁の治療が一番です。
また、治療器具の代表はMitraClipで、血液の逆流が起きている弁尖をクリップでつまんで治すという発想です。その他にも同じ発想のPASCAL、弁の周りを囲んで締めることで弁尖の合わさりを改善して逆流を改善するCardioband、切れた腱索(弁を支える糸)を新たに縫い付けるNeoChordなどの治療器具があります。
高齢者や手術のリスクが高い患者さんを低侵襲に治療できるという点は良いのですが、必ずしも治療成功率が高くないことや、再発率が高いのが目下の課題です。治療選択の基準や治療中の判断など、多くの問題が未解決のまま残っているのが現状です。私の留学の目的は、それらの点を研究して最先端の治療器具を学び、日本の医療に還元することです。といいつつ、仲間とビールを飲みに行ったり家族旅行に行ったりもして、こちらの生活をenjoyしています。
ハンブルグへのショートトリップ
学校が夏休みに入り、家族が一時帰国して時間ができたので、ハンブルグのアスクレピオス病院の不整脈部門でアブレーション治療を行なっている橋口先生に会いに行きました。ハンブルグでは、ドイツ語のB2レベルの証明書があればFSP(医師患者面接試験:参照(7)医師患者面接試験を受けて)を受けることなく2年を期限に医師労働許可を申請することができます。
橋口先生は千葉大の先輩でもあるので、2泊3日でズカズカとご自宅に転がりこませてもらいました(ありがとうございます!)。それにしてもハンブルグはとても素敵な街でした。魚介は美味しいし、港は綺麗だし、女の子も綺麗だし。
夏といえばプール
暑い日は仕事になりません。40℃くらいまで気温が上がると、クーラーがないボン大学病院の病室では男性患者さんたちはパンツ一丁でベッドの上に転がっています。日本では考えられない光景です。
そんなある日、プールで7.5mの飛び込みに初挑戦してみました。飛び込み台のところでサングラスをかけたイケイケのお姉ちゃんが、笑顔で「Go!」と言ってきたので、ここで行かないとダサいと思い、笑顔で「Klar! Los gehts!」と言って飛び込みました。正直ちょっとだけ、いや、かなりビビっていましたが。まあでも、飛び込む勇気って大事ですよね!
プールでも、仕事でも、留学でも。
<プロフィール>
杉浦 淳史(すぎうら・あつし)
ボン大学病院
循環器内科 指導上級医(Oberarzt)
論文が書けるインテリ系でもないのに「ビッグになるなら留学だ!」と、2018年4月からドイツのボン大学にリサーチフェローとして飛び込んだ、既婚3児の父。
杉浦 淳史
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