記事・インタビュー
ドイツはノルトライン=ウェストファーレン州にあるボン大学で循環器内科のフェローとして働いている杉浦 淳史です。
この記事では、日本生まれ日本育ちの循環器内科がドイツでの研究・臨床留学の中で経験するさまざまな困難・葛藤・喜びを、ありのままにお伝えします。
何となくしれっと治療に参加
飛び込む勇気をプールで身に付け?(前回参照)、仕事でも下手なドイツ語で食いつくことが増えてきました。近頃はちょっとした瞬間に「手伝おうか?」とか「一緒にやらない?」とか言って、同僚が行なっていた冠動脈カテーテル治療やTAVIに、教授陣にバレないようこっそり参加するようになっています。
そんなある日、教授が治療にまさかの途中参加。「ああ終わった! あとで何て言い訳しよう。とりあえず、同僚に誘われて断れなかった風にするか・・・・・・」などと考えていたら、なぜかWelcomeモード。「あれ? いいのか? こうなったら攻めてみるか?」
そこである日、勇気を出して自分も治療に参加させてもらえないか教授に聞いてみました。すると「本当にごめん、自分で治療をさせることは免許がなければできない。以前はよかったんだけどね」
治療の勉強と同時にドイツ語のコミュニケーション能力アップも目的なのですが、それは一向に上達する気配をみせず、相変わらず治療中の雑談には全く付いていけません。
大丈夫だろうか、次のFachsprachprüfung―
(参照:(7)医師患者面接試験(Fachsprachprüfung)を受けて)
イングランド12日間の旅
ドイツといえば「休みをたくさんとる国」。ということで、休暇をたくさん取りたいとお願いしてみました。行き先は妻の希望が不戦勝で勝ち上がり、イングランドに決定。しかし、留学直後からトラブルに愛されている僕が、ただの優雅な旅行で終わるはずがありません。
代表的なものを挙げると、
(1)イングランド入国のイミグレーションで、帰りのチケットが1ヶ月先の予約になっていることを知る。
(2)初日のアパートメントでなぜか1ベッドルームに案内され、交渉するも、その日はやむなく(僕が)ソファで寝る。
(3)牛と羊しかいない携帯圏外ギリギリの田舎で、宿泊予定のアパートメントが予約票に記載されている住所にない、という夜の20時。
その他もろもろ。
しかし、ドイツでのトラブルに鍛えられてきているだけあって、サバイバル能力は着実にレベルアップしていることを実感しました(笑)。
ヨーロッパ心臓病学会
先日、パリで開催されたヨーロッパ心臓病学会に参加してきました。学会自体は循環器全般をカバーするようなもので、最先端な情報はそんなに無かったと思いますが、日本から来た先輩や後輩、いろいろな方に出会い、美味しいご飯やラーメンを食べに行ったりしました。日本のお土産もたくさん頂き、有難い限りです。
学会でのエピソードに戻りますが、私のポスター発表がある日のプログラムを見てみると、僕とChefのポスター発表がなんと隣同士!こんな事もあるんだな〜と思い、Chefを見かけた際に「僕らのポスターが隣同士ですよ!」と声をかけると、「じゃあ、やっといてね。僕はこれから息子と会うんだ。」と冗談を言っていました。しかし結局、Chefは発表の時間通りに登場。Chefのポスターにはその業界の有名人が集まり、私のポスターには同僚や日本の友人が集まり、日本語だか英語だかドイツ語だか、なんだかよく分からない空間が出来上がっていました。
<プロフィール>

杉浦 淳史(すぎうら・あつし)
ボン大学病院
循環器内科 指導上級医(Oberarzt)
論文が書けるインテリ系でもないのに「ビッグになるなら留学だ!」と、2018年4月からドイツのボン大学にリサーチフェローとして飛び込んだ、既婚3児の父。
杉浦 淳史
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