記事・インタビュー
たかせクリニック
理事長
髙瀬 義昌
2020年オリンピック東京の開催が決定しましたが、まさにこの2020年こそ高齢化問題、認知症問題のまっただ中です。大都市の高齢化は進み、あと10年もすると女性の平均寿命が90歳に到達すると言われ、何らかの形で医療に関わる患者数は450万人から750万人に増える見込みです。
つまり東京で行われるオリンピックでの諸外国のお客様に対する「おもてなし」のうちの全部と言わないまでも一部は日本の高齢者が元気に努めなければならないでしょう!
さて、前回の内容を掘り下げ、今回は病院医と在宅医の違いについて切り込んでいきます。それを理解するためには、日本の医療をとりまく現状に注目しなければなりません。
前回ご紹介した「在宅医療認定講座テキスト」の武久洋三先生の論文では、2012年秋、厚生労働省で社会保障担当政策統括官をされていた香取照幸氏(現年金局長、実は私の中学・高校の同級生です)の発言を次のようにまとめています。「介護施設・ケア付き住宅の設備水準が低い。ただし、病院病床(特に急性期病床)はかなり多い」と指摘し、一般病床について言及。「急性期医療については、医療資源の集中投入がより必要な重症患者を中心とした急性期医療の機能分化・重点化が十分ではなく、さらに、平均在院日数も諸外国と比較しても長くなっており、全体として非効率であるのみならず、医療の質、患者のQOLにも影響を与えている。他方、そのような重症急性期患者の退院の受け皿となる、いわゆる亜急性期・回復期にふさわしい、ある程度安定した急性期後の治療やリハビリ等の機能を有する病床は非常に不足している。このことが、一般病床と療養病床の機能分化、平均在院日数短縮が進まない一因となっている」。これらはきちんとした分析であり、同じ文脈で、「生活支援」の観点から、在宅療養診療所の活躍が期待されることになります。最重要キーワードは「地域包括ケアシステム」です。地域包括ケアシステムの定義の中には、統合された・連続的かつ継ぎ目のないサービスの提供と利用の体制、というものがありますが、医療に関して言えば、急性期から慢性期、在宅へと病床がうまく流れることの重要性を示唆しています。このことは患者のQOLの向上、また医療費用・介護費用の最適利用にもつながります。同時に、医療提供者側の立場からシステムの一員として参加しなければ、診療報酬改定等においておそらく評価されないことは言うまでもありません。
ここで「問題は急性期病院の医師の危機感のなさである」と武久先生が指摘されています。病院に関わる先生方にとっては耳の痛い話かもしれませんが、日本の医療システムは生活支援にむけて大きく舵取りしている現状を充分に把握しなければなりません。日本医師会もこの問題にしっかりと取り組んでいます。【かかりつけ医の在宅医療 超高齢社会―私たちのミッション】(日本医師会発行)まず、しっかりとした主治医意見を書くところからはじめるのも一方法です。
是非、若い気力あふれる医師の皆さんが「書を捨てよ、町に出よう」の精神で週に一度は地域医療、在宅医療に触れる機会を持たれる事を期待して筆を置きます!

※ドクターズマガジン2013年11月号に掲載するためにご執筆いただいたものです。
髙瀬 義昌
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