記事・インタビュー

2023.05.30

けいれん、てんかん、意識障害―研修医からできるトリアージと専門医へのコンサルテーション―vol.4

はじめに

けいれん、てんかん、意識障害をテーマに以下の全5シリーズでお届けします。

シリーズ1. けいれんに遭遇したら:二次的脳損傷から脳を救うために

シリーズ2. 発作が止まっても思考を止めない:研修医必携の鑑別リスト

シリーズ3. けいれん・てんかんのフィジカル!

シリーズ4. 脳神経内科ローテーションで役立つ神経用語の整理※今回

シリーズ5. 研修医からできる専門医へのコンサルテーション

おまけ. 非けいれん性てんかん重積:ICUでの意識障害に強くなる

シリーズ1と2では救急における発作時の初期対応や病態鑑別を解説し、シリーズ3では発作に関連したフィジカル、つまり発作症候学を紹介しました。今回のシリーズ4では、脳神経内科にローテートする前に押さえておきたい神経用語を紹介します。用語の使い方を間違えるとカンファレンスでのプレゼンテーションもぎこちないものになりますので、きちんと確認。例えば「けいれん」と「てんかん」は、同義ではありません。「ふるえ」や「ミオクローヌス」も要チェックです。さらに「失神」も使い方を間違えやすい用語の一つです。整理していきましょう。

シリーズ4. 脳神経内科ローテーションで役立つ神経用語の整理

1. けいれん 自分の意思とは関係なく、勝手に筋肉が収縮する症状

「けいれん」とは、自分の意思とは関係なく、勝手に筋肉が激しく収縮する症状のことで、英語表記はconvulsion (コンバルジョン)です。ガクガクと激しく筋収縮を繰り返す状態が「けいれん」とイメージしましょう。このけいれんが大脳に由来して発生するものがいわゆる「けいれん発作」であり、英語ではconvulsive seizure(コンバルシブ シージャー)と呼びます。なお、けいれんという症状は末梢の神経や筋肉に由来して発生することもあり、その場合はcramp(クランプ)と呼び、不随意運動の範疇として捉えます(表1)。

2. てんかん発作 大脳の過剰興奮によって引き起こされる発作

「てんかん発作(epileptic seizure)」とは大脳の過剰興奮によって引き起こされる発作を指します。その発作が結果として「けいれん」を引き起こせば、てんかん発作としての「けいれん発作(convulsive seizure)」になります。一方で、てんかん発作は必ずしも、けいれんを引き起こすわけではありません。てんかん発作を慢性的に繰り返す状態を「てんかん」と呼びます。

なお「てんかん重積状態」とは、てんかん発作が長時間持続する場合のことです。具体的にはけいれん性の発作であれば5分以上、非けいれん性の発作であれば10分以上を目安にてんかん重積状態と判断します。そのため、てんかん発作としてのけいれんはconvulsionやconvulsive seizure(けいれん発作)と呼びます。てんかん重積状態(status epilepticus)は、よく「スタータス」と略して臨床では呼んでいます。

3. けいれん発作=てんかんではない

けいれん発作は前述のように激しく筋肉が収縮を繰り返す状態をさし、つまり症候名です。一方の「てんかん」は病名あるいは病態をさします。大事なことは「けいれん発作=てんかん」は常に成立しないという点です。なぜなら、けいれん発作を引き起こす原因は、てんかん以外にもたくさんあるからです。脳梗塞脳出血などの脳卒中や髄膜炎などの中枢神経系の救急疾患もそうですし、低血糖や電解質異常などの代謝性の病態でも生じえます。

喘息発作と気管支喘息の関係性で例えるとわかりやすいでしょう。喘息発作(例えば、喘鳴)は気管支喘息で認められますが、咳喘息あるいはなどの病態でも生じえます。喘鳴があれば気管支喘息と診断しないのと同じように、けいれん発作もてんかん以外の病態で出現しうることは覚えておきましょう。すなわち、慢性の病態として発作を繰り返すものがてんかんであり、対して脳血管障害、頭部外傷や中枢神経感染症、代謝異常などの急性病態により一過性に発作が生じたものは急性症候性発作と呼びます。そのため、初回のけいれん発作に遭遇した場合は、てんかんの診断を急ぐのではなく、急性症候性発作を引き起こすような急性病態がないかチェックすることが重要となります(表2)。

4. ふるえやピクつきとは

「ふるえ」や「ピクつき」という表現を臨床ではよく見聞きします。これらは見たままの様子を表現したものですが、神経学の正式な用語ではありません。

ふるえとは文字通りふるえている様子をそのまま表現したものですが、該当する用語に「振戦」があります。振戦とは不随意に生じる律動的な筋収縮を指します。例えば、人前でスピーチする時に緊張してマイクを持つ手がふるえるというのは、生理的な振戦の範疇です。振戦の判定で大事なポイントは、その動きが「律動的」である点です。つまり繰り返す筋肉の収縮に一定のリズムがある点が重要です。なお、体を動かしていない時に出現する振戦を「静止時振戦」と呼び、パーキンソン病の特徴的な症状です(上図)。

「ピクつき」という表現も臨床ではよく聞きます。これが正しい日本語なのかどうか筆者はわかりませんが、少なくとも神経学の用語としては存在しません。ピクッとなる動きをさしていると思いますので、該当する用語として「ミオクローヌス」があります。ミオクローヌスとは不随意運動の一つで、自分の意思とは無関係に瞬発的な筋収縮が生じる症候をさします。けいれん発作や振戦は持続的であるのに対して、ミオクローヌスは非常に素早く短時間な点が異なります。「電気的な筋収縮」とよく例えられるくらい瞬間的な症候です。ただし、短時間のミオクローヌスが断続的に群発することもありますので、その場合は「持続的」に見えることもあります。

このミオクローヌスが、てんかん発作として出現した場合には「ミオクロニー発作(myoclonic seizure)」と呼びます。一方で、てんかん発作ではなく、不随意運動としてのそれは、そのままミオクローヌスと表現します。ややこしいですが、間違えないようにしましょう。

5. 失神と意識障害 突然起こる短時間の意識の消失

「失神」とは突然生じる短時間の意識の消失をさします。具体的には、脳への血流が減少することで生じる突然の短時間の意識消失です。よって、原因としては、いわゆる「立ちくらみ」などの起立性低血圧/血管迷走神経反射(神経調節性失神)が頻度としては高いです。しかし、心臓に由来して、例えば不整脈や急性冠症候群などによる心原性失神の場合もありますので、失神の原因の鑑別が重要となります。

脳血流が減少することで生じるのが失神であるため、てんかん発作による意識障害を失神と呼ぶことはありません。また、一過性脳虚血発作(TIA)と失神も混同しないようにしましょう。そもそもTIAで意識を失うことはほとんどありません(椎骨脳底動脈系のTIAであれば意識を失うこともありえますが稀です)。そのため、失神と思われるような一瞬の意識消失というプレゼンテーションで「TIAでしょうか?」というコンサルテーションは適切ではありません。もちろん脳の精査も必要でしょうが、「失神」を疑うのであればまずは心原性の病態の検索が優先されます。

研修医の皆さんへ 用語を正しく使い、相手に正しく伝わるよう工夫を

けいれん発作やてんかんに関わる用語を整理しました。脳神経内科にローテする際にはチェックしておきましょう。けいれん発作や、振戦、ミオクローヌスなど、それぞれの定義に当てはめた適切な表現を用いることが望ましいですが、臨床ではどうしても分類しがたい症候や病歴もあります。そのような時は「けいれん様の発作」とか「振戦様の動き」などの表現を使うのも良いでしょう。大事なことは、伝えたい内容が、相手に正しく伝わるかどうかだと思います。

<参考文献>

日本神経学会監修.「てんかん診療ガイドライン」作成委員会編集.てんかん診療ガイドライン2018. 医学書院. 2018

日本てんかん学会編集. てんかん学用語辞典 改訂第2版. 診断と治療社. 2017.

<プロフィール>

音成 秀一郎

音成 秀一郎(ねしげ・しゅういちろう)
所属先:広島大学大学院医系科学研究科脳神経内科学 助教、広島大学病院 てんかんセンター
2008年に大分大学医学部を卒業。脳神経内科での後期研修を経て2015年より京都大学大学院医学研究科臨床神経学講座(同てんかん・運動異常生理学講座)で、てんかんと脳波の臨床研究に従事。福島県立医科大学ふたば救急総合医療支援センターでの復興医療支援を経て2019年4月から現職。脳神経内科での診療に加えてICUでのcritical care EEGにも従事。主催するてんかん・脳波のウェブセミナーには全国から年間のべ3000名以上の医師が参加。管理するLINEチャットでの遠隔脳波診断・診療サポートにも300名以上の臨床医が参加。著書に脳波判読オープンキャンパス~誰でも学べる7STEP~(診断と治療社)がある。

音成 秀一郎

けいれん、てんかん、意識障害―研修医からできるトリアージと専門医へのコンサルテーション―vol.4

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