記事・インタビュー

2022.09.02

けいれん、てんかん、意識障害―研修医からできるトリアージと専門医へのコンサルテーション―vol.1

はじめに

けいれん、てんかん、意識障害をテーマに以下の全5シリーズでお届けします。

シリーズ1. けいれんに遭遇したら:二次的脳損傷から脳を救うために ※今回

シリーズ2. 発作が止まっても思考を止めない:研修医必携の鑑別リスト

シリーズ3. けいれん・てんかんのフィジカル!

シリーズ4. 脳神経内科ローテーションで役立つてんかんの診断と治療戦略

シリーズ5. 研修医からできる専門医へのコンサルテーション

おまけ. 非けいれん性てんかん重積:ICUでの意識障害に強くなる

まずは救急外来やICUなどのセッティングを想定し、研修医からできるけいれん発作時のトリアージを確認していきましょう。けいれん発作は救急診療のcommonであり、神経救急(neurocritical)の登竜門です。そこには研修医だからこそ活躍できるポイントがたくさんあります。

また入院中の症例で「予期せぬけいれん」に遭遇することもしばしばあります。正しく、焦らずに対応するためのポイントや鑑別点も整理していきましょう。そしてシリーズの後半では、これからローテーションする脳神経内科病棟での研修を想定した予備知識を概説します。

以上5回のシリーズを経て、神経救急での初期対応、カンファレンスでのプレゼンテーション、上級医への報告、さらには専門医へのコンサルテーションに自信が持てるようになることを目指します。

シリーズ1. けいれんに遭遇したら:二次的脳損傷から脳を救うために

<症例>

特に既往のないADLは自立した80代女性
自宅で倒れてけいれんしているところを発見されました。救急隊到着時もけいれんは持続しており、重度の意識障害(JCS 3桁)を呈していましたが、気道は確保されており、循環は保たれていました。けいれんに伴いSpO2は 88%と酸素化は低下していたため酸素投与が開始されました。なお、外傷はありませんでした。けいれん発作は持続していたため受け入れ要請を経て当院に搬送されました。

<てんかん重積状態はTime is Brain>

脳梗塞など脳卒中急性期はまさにtime is brainですが、けいれん発作も時間との勝負です。なぜなら初期治療が遅れて発作が止まらない重積状態に至り、さらに重積状態が長く続けば続くほど、長期的な転帰不良へとつながるからです。5分以上持続する発作は「早期てんかん重積状態(early status epilepticus: early SE)」と呼ばれ治療適応です。さらに30分以上持続する発作は「確立したてんかん重積状態(established SE)」と呼ばれ、後遺障害のリスクや死亡率が上昇します。重積状態が続くことで脳への酸素供給バランスが破綻し二次的脳損傷へとつながるのです。このため 「早期」であってもSEへの治療介入を遅らせる理由はありません。特に高齢者や過去に重積の既往のある症例では転帰不良と関連するため要注意です。

POINT 2.
●5分以上持続する発作は「早期てんかん重積状態(early SE)」と判断
●まずは1st lineとしてベンゾジアゼピン系(ジアゼパム 5-10mg、ミダゾラム5-10mg、ロラゼパム 2-4mgなど)の静注投与を行い迅速な発作の「消火活動」を開始。
<30分のタイムリミットで研修医ができること>

てんかん重積状態(SE)の転帰は、発作をいかに早く止めるかにかかっています。5分を皮切りに治療を開始し、30分以内(遅くとも60分以内)の発作鎮火を目指して、2nd line(ホスフェニトイン 22.5mg/kg、フェノバルビタール 20mg/kg、レベチラセタム 20-60mg/kgなど)さらには3rd line(ミダゾラム、プロポフォール、チオペンタールなど)を選択していきます(図)。3rd lineは鎮静薬であるため実臨床ではICUに入室してから導入することが多いでしょう。一方の2nd lineの薬剤は救急外来レベルで使用できる薬剤です。つまり2nd lineまでは研修医でできる大事な薬剤使用の準備があります。

研修医のToDo1:
先ほどの症例で考えてみましょう。自宅でけいれんを起こし、ホットラインでもけいれんが続いていることが情報として入っています。つまり発作は確実に5分以上持続していると判断できます。早期てんかん重積状態として受け入れるべく、救急車が到着するまでに以下の準備をしましょう。
1)モニター、点滴ルート、酸素投与の準備
2)血液検査や血糖測定の準備、ルーチン検査のオーダー
3)1st lineと2nd lineの薬剤の準備

研修医のToDo2:ジアゼパムはいつでも使えるように
前述の1)と2)はあらゆる救急対応と同様なので特殊なものはないでしょう。ポイントは3)です。まず1st lineの薬剤については、例えば私はジアゼパムを事前にシリンジに吸っておくように指示します。時間との勝負であるSEを想定した場合、直ちに投与できる準備が理想です。激しい全身けいれんを確認してからでは遅いのです。なおジアゼパム投与後の呼吸抑制を懸念して、例えば小柄な高齢者であれば1/2A毎に分けて投与することもあります。しかし、気道確保の準備もできているのであれば、ジアゼパム投与そのものを躊躇すべきではありません。

研修医のToDo3:second lineは調剤室へ取りに行く
ベンゾジアゼピン系の薬剤は救急外来に常備していると思いますが2nd lineのレベチラセタムやホスフェニトインなどの点滴製剤は常備されていないところが多いでしょう。2nd lineの使用タイミングも迅速でなければならず、「オーダーをしてから取りに行く」では遅すぎます。患者が到着する前に「事前にオーダーしておいて取りに行く」ことが大事です。もちろん、実際には必要としないケースもあるでしょう。準備はしたけど使わなかった(返却した)、ということもあっていいです。必要と分かってから、慌てて薬局に走って取りに行くことがないよう、救急車が到着する前に準備しましょう。なおホスフェニトインの初期投与量は体重換算しますが、50kgで約1.5バイアル、70kgで2バイアルがおおよそ必要です。したがって、まずは2バイアル分を準備しておけば良いと思います。

POINT 2.
●ホットラインの情報で「早期てんかん重積状態」は確実と判断し、
●1st lineと2nd lineの薬剤を準備し、上級医への報告とともに発作に備える
<治療介入すべきリスト>

全ての発作が治療介入を要するわけではありません。例えば、てんかん患者は発作を繰り返しますが、発作の持続時間は通常1-2分程度です。発作は自然に止まります。つまり応急的な追加治療を施さずとも普段の状態に戻るのです。逆の視点で言えば、 そもそも通常のてんかん発作が5分を超えて持続することはありません。だからこそ5分以上持続する発作はemergencyであり、早期てんかん重積状態(early SE) と判断します(表1)。他にも、初回の発作である場合、あるいはバイタルサインが不安定な場合には治療介入が必要です。もちろんバイタルサインが不安定な場合は発作を止めることよりも、まずはバイタルサインの安定化が優先されます。

<けいれんです!と病棟からのコールがあったら>

入院中の患者で当直帯に予期せぬ発作が出現することもあるでしょう。病棟看護師より「先生、○○さんがけいれんしています!」と報告を受けた場合、「てんかんの既往もないはずなのになぜ?」と思うでしょう。原因も検索ももちろん大事ですが、初期対応が遅れないようにしたいです。急いで駆けつけるのは当然として、電話を切る前にバイタルサインや意識状態についてまずは確認し、危険なバイタルサインであれば院内救急コールを要請しましょう。そうでなければ、他の人員(看護師)も確保してもらい、点滴、採血、ジアゼパムなどの初期対応セットの準備を指示しましょう。

<ジアゼパムで発作が止まったらすぐに行うこと>

ジアゼパム投与にて発作が止まった際の注意点があります。それは最後まで気道確保を怠らないことです。ジアゼパム投与で速やかに鎮痙したとしても、薬剤により鎮静・筋弛緩作用が生じます。特にけいれん時に過剰分泌した流涎物によって気道閉塞や、その後の誤嚥性肺炎に至ることがあります。そのため鎮痙後はバイタルサインの再確認に加えて、速やかに側臥位とし吸引等の処置を行います(図)。鎮痙後の適切な処置、特に側臥位への体位変換は発作後の誤嚥性肺炎の予防にもつながるため極めて重要な対応です。

<研修医へのメッセージ>

初回のシリーズ1ではホットラインからのけいれん発作の一報に始まり、受け入れ前の準備、発作への対応について概説しました。けいれん発作が5分以上持続すればemergencyと判断し、直ちに準備していたジアゼパムなどの1st lineを投与しましょう。発作の迅速な鎮火そして二次的脳損傷の回避ができるかどうかは研修医の先生たちの初期準備にかかっています。酸素供給バランスの破綻した状況から一刻も早く脳を救ってあげる、そのような意識が大事です。あらゆる火事では、その鎮火を消防隊の初動に依存している一方で、燃え広がってしまってからでは遅いということも覚えておきましょう。

<参考文献>

日本神経学会監修.「てんかん診療ガイドライン」作成委員会編集. てんかん診療ガイドライン2018. 医学書院. 2018
池田昭夫他編集. てんかん、早わかり!~診療アルゴリズムと病態別アトラス~. 南江堂. 2020

<プロフィール>

音成 秀一郎

音成 秀一郎(ねしげ・しゅういちろう)
所属先:広島大学大学院医系科学研究科脳神経内科学 助教、広島大学病院 てんかんセンター
2008年に大分大学医学部を卒業。脳神経内科での後期研修を経て2015年より京都大学大学院医学研究科臨床神経学講座(同てんかん・運動異常生理学講座)で、てんかんと脳波の臨床研究に従事。福島県立医科大学ふたば救急総合医療支援センターでの復興医療支援を経て2019年4月から現職。脳神経内科での診療に加えてICUでのcritical care EEGにも従事。主催するてんかん・脳波のウェブセミナーには全国から年間のべ3000名以上の医師が参加。管理するLINEチャットでの遠隔脳波診断・診療サポートにも300名以上の臨床医が参加。著書に脳波判読オープンキャンパス~誰でも学べる7STEP~(診断と治療社)がある。

音成 秀一郎

けいれん、てんかん、意識障害―研修医からできるトリアージと専門医へのコンサルテーション―vol.1

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