記事・インタビュー
民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。
医学書を読むのが大好きな先生方が初学者に向けた医学書解説・比較の医学書レビューと、
日々医師のために医学書を作る出版社の担当者がおすすめの良書をこちらで集めて発信していきます。
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レビュー著者:三谷雄己先生(踊る救急医先生)
「さっき説明したはずなのに同じ質問を繰り返している、うまく相手に伝わっていないのか……?」
「患者さんが感情的になりすぎていて話が前に進まない……。」
これらは日々、ERやICUにおいて、患者さんやそのご家族と接する中で感じる悩みや疑問点であり、なかなか正解のない悩ましい問題です。私自身も普段ERやICUで診療を行う際に、患者さんと治療方針について議論する機会が多いのですが、本当に自分のコミュニケーションのとり方が正しいのかどうかと、もやもやする日々を過ごしていました。専攻医になりたての頃は、患者さんと話すときに上級医に同席してもらうことが多かったのですが、最近は一人で話をすることも多いので、改めて自分のコミュニケーションを客観的に見直すきっかけにしたいと思い、この本を手に取りました。
「緊急ACP~Vital Talkに学ぶ悪い知らせの伝え方、大切なことの決め方~」を読むことで、今後治療方針について話し合う際に役立つヒントをたくさん学ぶことができ、コミュニケーションをとることへのストレスは減らせると感じました。
患者さんやそのご家族とのコミュニケーション方法について学ぶ際に読むべき1冊として、自分が自信をもっておすすめするのがこの本です。
これから皆さんにご覧いただくのは、研修医時代に100冊以上の医学書を読み、その中でもオススメの医学書レビューを月5冊以上書いていた、ある救急科専攻医のレビューです。
医学生や研修医、各分野の初学者の気持ちが痛いほどわかるので、是非この本を手に取ってみたいと思っていただけるようなレビューを心がけています!
- 書評『緊急ACP ~Vital Talkに学ぶ悪い知らせの伝え方、大切なことの決め方~』
1.本書のターゲット層と読了時間
【ターゲット層】
・治療方針についてご家族や患者さん本人と話し合うという役割を担い始めた若手医師
・ERやICUに従事しており、日常的に家族と今後の治療方針について話し合う機会がある医師
【推定読了時間】 2~3時間程度
2.本書の特徴
本書は、帝京大学医学部附属病院救命救急センターの伊藤香先生とブリガム・アンド・ウィメンズ病院救急部の大内啓先生が執筆されました。
「あらかじめ」ではなく「いざという場面で」行うAdvance Care Planningのことを「緊急ACP」と称し、その実際について、基本的コミュニケーションスキルをベースに、わかりやすく体系的に解説した1冊です。本書を読むことで学べる項目の中でも、特徴的なものをピックアップしました。
●悪い知らせの伝え方(SPIKES)
●感情に対応するスキル(NURSE)
●治療のゴールを決めるためのロードマップ(REMAP)
●感情があふれて話が前に進まないご家族への対応方法
●患者さんもご家族も混乱する中で、いかに患者さんの価値観に沿った治療のゴールを見出すか
●コミュニケーションスキルトレーニング“VitalTalk”から学ぶ、緊急ACPの具体的な進め方
研修医の先生方にとっては今後どのような診療科に進んでも学んでおくべき大切な事項であると思います。
3.個人的総評
本書の特徴はなんと言っても、ACPやコミュニケーションスキルについて、これまで体系的に学んできていない医師にとってもわかりやすく丁寧に解説されている点です。ページ数も多すぎることなく完結にまとまっているので、苦痛を感じることなく通読することができます。それによって、ACPやコミュニケーションスキルについて学んだ後も、今後医師として診療に当たるうえで、一生活用できるバイブルとして、何度も手に取れる1冊になるのではないでしょうか。
本書の内容としては、悪い出来事を伝える前には必ず事前に知らせること、多く話しすぎていると感じた際には相手が理解できているかを再確認すること、相手が感情を受け止めきれていないと感じるときにはあえて沈黙の時間を設けることなど、明日から実践できそうな学びがたくさんありました。
僕自身のおすすめ度が高いのは総評を見ていただければわかるとは思いますが、何よりアマゾンの評価の高さが本書の素晴らしさを物語っています。これらは本書の個人的な評価であり、しかも何様だよと言われてしまうことは重々承知ではありますが、僕は
本書はER・ICUで勤務する医師にとって、患者さんやそのご家族と話すうえでのバイブルとなる1冊である!
と感じました。
4.おすすめの使い方・読み進め方
●これまで悩んだインフォームドコンセント(IC)やコミュニケーションのパターンを思い出しながらまず通読
●その中で、今後実践できそうなスキルや言い回しをメモしておく
個人的にオススメの使い方をご紹介します!
僕個人の意見としては、本書の分量はそこまで多くないので、まずはこれまで悩んだ診療でのパターンを思い出しながら通読することをおすすめします。
これまでうまくいかなかった患者さんやご家族とのコミュニケーションを思い出したり、それぞれの想定症例で自分だったらどうするかをイメージしたりしながら読み進めるといいでしょう。
そして、それぞれの症例で登場する表現や思考回路で、今後活用できそうなものについてはメモしておき、次のICやコミュニケーションの場において一度見返してから話しはじめると、本書で学んだことが生かせると思います。僕自身、この方法を現在まで三度実践してきていますが、これまで少し、表現に困っていた場面でも、よりスムーズに言い換えて伝えることができたと感じています。
一方で、個人的には緊急ACPが必要になるシチュエーションはかなり個別性のある場面なので、患者さんやそのご家族の立場や考え方に寄り添うことが何よりも大切だと思います。本書の内容を参考にしつつも、あまりに形式ばったり型にはまったコミュニケーションを意識すると、少しぎこちなくなるかもしれません。まずは、患者さんやご家族のお話をしっかり聞くこと、そして時にぎこちなくても、相手の気持ちに寄り添って対話することも大切だと感じます。
5.医書レビュー
6.まとめ
本書は、緊急ACPについてわかりやすく説明しており、ER・ICUで勤務する医師にとって患者さんやそのご家族と話すうえでのバイブルとなる、本当におすすめの1冊です。
この本を通じて、患者さんやご家族とより良好なコミュニケーションを取ることができるヒントを得ることができます。
今後の業務をより良いものにしたい方には是非手に取っていただきたい1冊です。
この記事を読んで参考になった方、面白いと思ってくださった方はハートマーク(お気に入り)をタップして今後も定期的に覗きに来ていただければ幸いです。今後も定期的に記事を更新していく予定ですので、みなさまのリアクションが今後の記事を書くモチベーションになります!
★今回の書籍以外にも、踊る救急医先生の医学書レビューはこちらのページで読むことができます!
想定読者や各診療科ごとにわかりやすくまとめられているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
詳細はこちら≫https://dancing-doctor.com/2021/03/31/review-reader/
<プロフィール>
三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
広島大学救急集中治療医学所属
広島大学病院 救急科 医科診療医
日本医師会公認健康スポーツ医
日本救急医学会認定ICLSインストラクター
立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。
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