記事・インタビュー

まえがき
現在、ドイツで外国人医師が医療活動を行うためには、医師免許(Approbation)または医師の労働許可(Berufserlaubnis)といった資格を取得する必要があります。これらの資格を取得するためには、Fachsprachprüfung(FSP)という試験に合格することが必須となります。
この試験は厳密に言うと、ドイツ各州の医師会によって定められていますが、大まかな流れは大体同じです。(下記3つのセクションから構成)
- ①模擬患者から病歴を聴取する
- ②聴取した病歴をカルテの形式でまとめ、ドイツ語で記載する
- ③上級医へのプレゼンテーションおよびディスカッション
この中で少し注意しないとダメなのは、「①模擬患者からの病歴聴取」は本来一般の患者に対して行うものなので、一般的なドイツ語を用いることです。そして「②カルテ記載」と「③上級医へのプレゼン」はラテン語による専門用語を用いながら行います。
例えば「不整脈」は一般のドイツ語だと「Herzrhythmusstörung」と言います。「心臓のリズム異常」というニュアンスのドイツ語です。一方、ラテン語では「Arrhythmie」と言います。発音は「アリュトミー」。むしろ専門用語の方が聞き覚えのある単語になっていますよね。日本国内でもラテン語が使用されることは珍しくなく、こちらの方が身近な感じがします。
実際の現場では患者さんと話す際に「Arrhythmie」と言っても割と普通に通じるんですけれど、試験の際に模擬患者に使うと、白々しいくらい「何ですか?その単語は?」って首を傾げられたりします。
私が受験した当時は、試験そのものが始まったばかりで情報がほとんどなく、手探りの中でやっていましたが、現在は情報も出回り、対策を練ることも可能になってきています。
本稿では、ある程度のドイツ語(B2レベル)ができる医師を対象に、FSPの勉強の取っ掛かりになるような情報を提供していけたら、そして今後ドイツで医療活動を行うことを目標にしている先生方の一助になれば嬉しいです。
問診の重要性
ドイツでは治療に入る前の問診がとても重要視されています。問診は「Anamnese」といい、日本でも「アナムネ取っとけ」とか言いますよね。問診を取ることは「Anamnesegespräch」です。また問診票は「Anamnesebogen」で、記入することを「Ausfüllen」で表現します。
因みにドイツでは検査や治療の説明用紙も充実していて、これを「Aufklärungsbogen」と呼びます。州によっては試験の途中にAufklärungsbogenを渡され、模擬患者に説明をさせられることもあります。
医師は自己紹介を終えると、“Was kann ich für Sie tun?”という質問で始めます。お店で店員が言う「何かお困りでしょうか?」も同じセリフです。ほかに“Was führt Sie zu uns?”も同様の意味になります。直訳だと「何があなたを私たちの元へ連れてきましたか?」のニュアンスです。
実際には“Haben Sie irgendwelche Beschwerden?(何か症状ありますか?)” といった感じで質問します。回診中にこの質問をしたところ、Beschwerdenの意味を「症状」ではなく「不平」と取り違え、「飯がまずい!トイレが汚い!」と病院の文句を言い始めたっていう鉄板のドイツジョークがあります。いやー、抱腹絶倒ですね。これがドイツ・クオリティです。
<プロフィール>

安 健太(あん・けんた)
カールスブルグ心臓糖尿病センター
心臓血管外科 医師
安 健太
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