記事・インタビュー
「痛み以外の症状」の表現①
ここからは「痛み以外の症状」の表現について書きます。まずは主訴です。
試験では、「患者が使ってくる、または患者に対して使う表現(=一般的なドイツ語)」だけでなく、「医師同士のコミュニケーションで用いる専門用語(=ラテン語)」を使い分ける必要があります。ラテン語の単語は日本でも知らないうちに使っていることも多いので、むしろ専門用語の方がとっつきやすいかもしれません。
[気分が悪い・吐き気がする]
吐き気は「Übelkeit」です。専門用語は「Nausea」。英語と同じですね。会話では“Ich habe Übelkeit.”で間違いないのですが、実際の会話では“Mir ist übel.”や“Mir ist schlecht.” と言われることが多いです。(試験の模擬患者もこれらの表現を使ってきますよ!)
寒かったら“Mir ist kalt.”です。(文法的には“Es ist mir kalt.”の“Es”が省略された形です。)“Ich bin kalt.”だと「私は冷たい」になっちゃいますので要注意!
因みに、実際に吐いたら“Ich habe erbrochen.”です。
[便秘]
「Verstopfung」 。専門用語は「Obstipation」。
問診の際は“Haben Sie ein Problem mit dem Stuhlgang?”ー便通に問題がありますか?ー と聞きます。
[下痢]
「Durchfall」。専門用語は「Diarrhö」です。これも英語っぽいですね。テストに落ちることもDurchfallです。以前、「テストに落ちたー」と友人に言った時に、下痢止めを渡されたことがありました。センスが鋭すぎて、気づくのにだいぶ時間がかかりました。
[息苦しい]
名詞では「Luftnot」もしくは「Atemnot」と言いますので、“Ich habe Luftnot.” 「私は息苦しいです」で通じます。
しかし実際の問診では、“Ich habe keine Luft.”や、“Luft weg.”と言われることも多いです。(テストの模擬患者も使ってきます!) 直訳すると「空気を持っていない」「空気がなくなる」みたいな感じです。これは辞書でもあまり見かけません。実際に実習などして初めて知った表現でした。
息苦しさに限らないのですが、安静時(in der Ruhe)に無症状で、体動時に発症する時は「unter Belastung」もしくは「bei Belastung」を付けます。
“Ich habe unter Belastung Atemnot.”
ー運動すると息が切れますー
お年寄りの患者さんは“bei Treppensteigen” ー階段を上った時にーと言うことが多いです。
[悪寒]
「Schüttelfrost」。これは上級医へのプレゼンでもそのまま使います。
[冷や汗]
「kalter Schweiß」。冷や汗は「気づく」と表現します。
“Haben Sie dabei kelten Schweiß bemerkt?”
ーその時、冷や汗をかきましたか?ー
[睡眠障害]
「Schlafstörung」。専門用語では「Insomnie」ですが、実際はあまり使わないのです。試験でも「Schlafstörung」で大丈夫です。
[胸焼け]
「Sodbrennen」。専門用語は「Pyrosis」。英語と同じですね。まあでも、医師同士の会話でも「Sodbrennen」を使います。試験のプレゼンの時でも「Sodbrennen」で問題ないと思います。
[浮腫む/腫れる]
「geschwollen」。「浮腫んだ足」だと“geschwollene Beine”となります。名詞だと「Schwellung」、専門用語だと「Ödem」。これはプレゼンの際には必須の専門用語です。試験では、模擬患者は浮腫んでいる場合に「Wasseransammlung」や「Wassersucht」といった単語をよく使ってきます。
[めまい]
「Schwindel」。回転性とか浮遊性とか、あまり区別されることはありません。一応、英語と同じく、回転性めまいを「Vertigo」と言う先生もいますが、試験を含め、全て「Schwindel」でも問題ないかと思います。
[動悸]
「Herzklopfen」。 特に脈が早くなる時は“Herzrasen”と表現することもあります。“Haben Sie Herzrasen bemerkt?” ー脈が早くなるのを感じたことがありますか?ー
[しびれ]
皮膚に触れて感覚が無い状態を「Taubheitsgefühl」と言います。「Taubheit」は「耳が聞こえない」や「感覚障害」といった意味があります。「Gefühl」は「〜と言う感覚」というニュアンスでよく使われます。
[湿疹]
「痒み=Jucken」を伴う皮膚の「炎症=Entzündung」を、「湿疹=Ekzem」と言います。赤く腫れている部分は「Rötung」と表現します。「Rötung」の専門用語は「Rubor」。
主訴一覧は以上です。試験では症状は一つとは限らないので、たくさん知っておくに越したことはありません。
<プロフィール>
安 健太(あん・けんた)
カールスブルグ心臓糖尿病センター
心臓血管外科 医師
安 健太
人気記事ランキング
-
【2023年最新版】令和の初期研修医1年目におすすめの参考書10選
- ベストセラー
- 研修医
- 医書マニア
【2023年最新版】令和の初期研修医1年目におすすめの参考書10選
三谷 雄己【踊る救急医】
-
医師国保のメリットとデメリット、国保との違いとは?
- ライフスタイル
- お金
医師国保のメリットとデメリット、国保との違いとは?
-
3Rで整理する 輸液の基本の「き」 ~Redistribution:低K血症の補正~
- 研修医
- 専攻医・専門医
3Rで整理する 輸液の基本の「き」 ~Redistribution:低K血症の補正~
柴﨑 俊一
-
【医療用語変換を快適に!】医療用語変換辞書“DMiME”の導入を1から解説【画像あり】
- 研修医
- 学習ツール
【医療用語変換を快適に!】医療用語変換辞書“DMiME”の導入を1から解説【画像あり】
三谷 雄己【踊る救急医】
-
医師の働き方改革についてよくあるご質問(FAQ)
- ワークスタイル
- 就職・転職
- 専攻医・専門医
医師の働き方改革についてよくあるご質問(FAQ)
福島 通子
-
海外で医師として働くためのステップ
- ワークスタイル
- 海外留学
海外で医師として働くためのステップ
-
しくじりレジデントから学ぶ!研修医のルール・マナー ~文章力(紹介状)編~
- 研修医
- ワークスタイル
しくじりレジデントから学ぶ!研修医のルール・マナー ~文章力(紹介状)編~
三谷 雄己【踊る救急医】
-
食事の再開を遅らせると、下痢が長引く?
- Doctor’s Magazine
食事の再開を遅らせると、下痢が長引く?
名郷直樹、五十嵐博
-
海外の医師免許を取得する方法
- ワークスタイル
- 海外留学
海外の医師免許を取得する方法
-
医学部で教えてくれない労働基準法~働くときに重要な3つのこと~ Vol.1
- 研修医
- ワークスタイル
- 常識の非常識
医学部で教えてくれない労働基準法~働くときに重要な3つのこと~ Vol.1
柴田 綾子