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2022.04.06

結婚する前に知っておきたい4つの法律と制度 Vol.4

結婚する前に知っておきたい4つの法律と制度 Vol.4

研修中や専門医の資格取得後に結婚・妊娠・出産を、と考えている方は多いかもしれません。結婚・妊娠・出産などのライフステージの大きな変化と仕事を上手く両立できるのか、不安や心配を感じている方も多いと思います。2022 年からは育児・介護休業法の改正により、育休制度が大きく変わります。また、 2021年7月からは母性健康管理指導事項連絡カードを利用することで、病名がつかない状態でも勤務調整を依頼することが可能となりました。そこで今回は、結婚・妊娠・出産に関する法律と制度について解説します。

1. 結婚して医籍が変わっても旧姓の医師免許証を使用できる

残念ながら日本では夫婦別姓が認められていないので、結婚した場合、どちらかが姓を変えて相手の姓になる必要があります。そんな中、2019年1月より医師免許に旧姓を併記できるようになりました(1) 。結婚して戸籍に変更があった場合、 変更が生じた翌日から起算して30日以内に(自分の)住所地の保健所に医籍( 名簿)訂正・免許証書換え交付申請を提出します。その申請書の「免許証書換え交付」の文字を二重線で消せば、医籍には戸籍名(新姓)が登録されますが、医師免許証は旧姓のままで使用でき、職場で旧姓を使い続けられます。新しく医師免許を申請する方では、申請書に旧姓使用の希望 の有無と旧姓を記入する欄ができています。
ただし、厚生労働省の「医師等資格確認検索システム」は医籍の内容で登録されているため、医籍を新姓、医師免許を旧姓とした場合、旧姓での検索はできないことに注意が必要です。

2.男性も育児休業が取得しやすくなる

2022年10月1日から「産後パパ育休 (出生時育児休業)」が従来の 育休とは別に取得可能になります 。この制度は男性が育児休業をより取得しやすいように創設されたもので、子供の出生後8週間以内で4週間まで取得可能です (2)。また、育休中も一時的に労働が可能なので、「外来日のみ出勤する」という形もできます。さらに、これまでは男女ともに育休は分割取得ができず、1回短期間で取得すると残りの期間は育休として休めない形でした。しかし、2022年10月からは通常の育休も産後パパ育休も、分割して2回 取得することができるようになります 。

図1. 2022年10月からの育休制度 

3.転勤1年未満でも育児休業が取得できる

これまで育児休業は、雇用期間が1年以上ある人が対象になっていたため、大 学からの派遣など転勤が多い方では、育児休業が取得できないという現状がありました。
しかし、2022年4月からは雇用期間が1年未満であっても育児休業の取得が可能になりました 。ただし、①子供が1才6ヶ月になるまでの間に雇用契約が終了する予定でないこと(育休終了後に復帰の見込みがある)②労使協定で育児休業の取得要件として雇用期間が1年未満であるという条件が除外 されていないこと、の2点が必要になります(2)。育児休業中は、男女ともに雇用保険から休業開始時の賃金の67%(ただし休業開始後6ヶ月経過後は50%)が支給されます(3)。
令和元年度、厚生労働省の「雇用均等基本調査」では、、日本全体での女性の育児休業取得率が83.0%であるのに対して、男性は約7.5 %と非常に低い状態です (3)。このような結果を受け、男性も育児に参加できるような制度と環境をつくっていくことが、働く女性支援にもつながると考えられています。

4.妊娠中は業務軽減を依頼できる

妊娠は病気ではありませんが、妊娠による変化や子宮の増大により心身に大きな負担がかかります。日本では労働基準法と男女雇用機会均等法で、妊娠中の業務軽減について定めており、雇用主はそれらを守る必要があります(表2)。また切迫早産など病名がつかない場合でも、妊娠中や産後の症状に対して母性健康管理指導事項連絡カードを医師等が記入して勤務調整を依頼することができます(カードの発行には施設ごとに決められた費用がかかります)(図3)。

表2. 働く妊婦に関する法律や支援 

注1:均等法…男女雇用機会均等法
注2:医師等による指導があった場合には、その指導を遵守する措置が必要
注3:多胎妊娠では産前14週~産後8週間
※上表は参考文献4を参考に著者作成

図3. 母性健康管理指導事項連絡カード(一部抜粋) 

もっと詳しく知りたい方へ

参考文献
1. 厚生労働省. 各種国家資格における旧姓使用の範囲拡大について
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/committee/20190422/190422honkaigi04.pdf
2. 厚生労働省. 育児・介護休業法 改正ポイントのご案内
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000789715.pdf
3.厚生労働省.男性の育児休業取得促進等に関する参考資料集
https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/000686517.pdf
4.  厚生労働省.妊娠・出産期に知っておくべき法律や制度
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/kensetsu/pdf/guidebook05.pdf

<プロフィール>

柴田綾子 (しばた あやこ)先生
施設名:淀川キリスト教病院 産婦人科
役職:医長
大学時代にバックパッカーとして15カ国を旅行し、沖縄で初期研修に参加。2013年より現職。
著書:『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社、2017)、『産婦人科研修ポケットガイド』(金芳堂、2020)、『女性診療エッセンス100』(日本医事新報社,2021)
私自身の婚活話については(ほとんどニーズはないと思いますが)、もし希望者がいたら追加で執筆しますので編集部へリクエストをお願いします。

柴田 綾子

結婚する前に知っておきたい4つの法律と制度 Vol.4

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