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2022.01.18

『研修医川柳コンクール』で振り返る、2021年

『研修医川柳コンクール』で振り返る、2021年

1年後 まだ続いてるとは 思わずに

昨年に引き続き、今年も新型コロナウイルス感染症の影響からは逃れられない一年でしたね。昨年度末に、ワクチン接種も始まるから来年はきっと落ち着いていてほしいと切に願っていたのを懐かしく感じます。常識や生活様式、仕事内容まで、突然の変化を強要された2020年を経験していたとはいえ、やはりこの話題なしには2021年を振り返ることはできないでしょう。

皆さんと同様に、私自身の医師人生もコロナウイルス感染症の影響を大きく受けています。外傷や敗血症など、どんな病態の重症患者さんであっても全力で命を繋ぎ止めていく救急医療に憧れて、私は2020年4月より救急医1年目として勤務し始めました。
今回は「年忘れ!研修医川柳コンクール2021年」で 拝見した素敵な川柳を引用させていただきながら、最近思っていることを2021年の総括としてつらつらと綴らせていただきます。

肺炎を みたら疑え コロナかな

研修医時代に必死で覚えた初期対応の流れや鑑別診断の常識は、コロナウイルス感染症によって大きく変わってしまいました。コロナウイルス感染症の流行期間中に、発熱や酸素化不良を主訴に搬送される患者さんでまず考えなければいけないのは、Primary survey や治療介入ではなく、コロナウイルス感染の可能性の見積もり、感染防御、対応スペースの調整なのです。また感染拡大の影響もあり、私が数多く経験したかった重症外傷症例や、外科的手技の頻度は、例年に比べて圧倒的に減ってしまいました。ICUで診療する重症患者さんも、コロナウイルス感染症に伴う重症呼吸不全ばかりだった時期も長く、人工呼吸器管理やECMO管理ばかりを行う、偏った救急医1年目を過ごしました。この変化は、私が研修医時代に思い描いていた救急医療とは大きく異なり、時に焦りを感じモチベーションを低下させることとなりました。

一方で2021年は前年と比較すると、ワクチンの普及によって流行期間の長さや流行期の患者数や重傷者数は減っている印象でした。救急症例が私の研修医時代に経験してきた患者層に、徐々に戻りつつあると実感しています。しかし、コロナウイルス感染症が我々の生活に及ぼす影響はやはり計り知れません。

スタッフの 素顔を知らぬ マスク越し

私は2021年の半ば、救急医として初めて勤務した病院から異動することになりました。勤務していた病院では、感染拡大のタイミングとも重なったこともあって、歓迎会も送別会も開催されることはありませんでした。しかし、異動前の最終日、様々なスタッフに「記念にせっかくなのでマスクを取って撮影しましょう!」と声をかけていただいて、たくさん写真を撮ったのですが、そのタイミングでスタッフの方々の素顔を知ったのを覚えています。世の中の人全員が我慢していることですから、自粛しなければならないというのは重々承知していますが、やっぱり寂しいものですね。

今度こそ 飲んでみたいな 指導医と

2021年も感染拡大を何度も繰り返したため、多くの研修医の先生方は上級医の先生方といわゆる“飲みニケーション”を気軽には取ることができなかったことでしょう。なぜだかわかりません が、とてもタメ になる知識や経験談は職場ではなく、飲みの席で話されることが多いのです。私自身、研修医時代の志望科選択で最も参考になったのは、講義やセミナーよりも上級医の先生方との飲み会で聞いたそれぞれの先生方の本音でした。杯を交わしてこそ、ざっくばらんな話ができるなどと言ってしまえば、Z世代の先生方には古臭く感じてしまうかもしれませんね。しかし職場以外の場所で対面し、ゆっくりと話し合う機会を持つことはとても大切だと感じます。気兼ねなく将来のことについて職場のスタッフと語り合える、そんなこれまで当たり前だった幸せな日常を、みんな の努力によって取り戻すことに期待したいです。

2年間 繋がり増えた Webセミナー

一方、コロナウイルス感染症の流行がもたらした副産物として、皆さんが一番と言ってよいほど有益だと感じているのは、おそらくWebセミナーが普及したことでしょう。私自身、研修医向けの勉強会の開催や運営に携わる機会が多いのですが、オンラインをメインにすることで日本全国から多くの先生方に参加していただけるため、たくさんの繋 がりが増えていることを実感しています。その一方で、手技のハンズオンやグループディスカッションなどをメインで行っていたオンサイトでの勉強会は軒並み中止となってしまいました。
そんな中、オンサイトの勉強会ならではのテーマを伝えたいと思い、流行期間の合間を縫ってなんとか勉強会を開催しました。きっとみんな 現地 での勉強会を望んでいるはずだと思い準備を進めましたが、実際には想定していたほどの数の参加希望者は集まらなかったのを覚えています。受講者のニーズが、現地 での双方向性のレクチャーから、気軽に自宅で参加でき、効率よく情報を享受できるレクチャーへと次第にシフトチェンジしている傾向をひしひしと感じました。今の研修医の先生方は、勉強会とはあくまで効率よく情報収集し、学ぶためのものであるという認識を持っている人 が多そうですね。私が研修医時代、勉強会に持っていたイメージは、他病院に散らばった大学時代の友人で集ま ってワイワイ楽しむというものだったので、すでにこの2年でジェネレーションギャップが生じてしまったのかもしれません。私達の日常生活はもちろん、コロナウイルス感染症はたった1、2年でセミナーの価値観にも大きな変化をもたらしました。
もちろん「民間医局コネクトセミナー 」を含め、双方向性や顔の見える関係を意識したWebセミナーでうまくいっているものも多く存在します。しかし、やはり机を囲んで自由に話し合ったり、実地で経験したりするハンズオンはオンラインには代替できません。見聞きするだけではわかり得ない、経験でしか得られない学びは必ず存在します。研修医の医学教育に携わる者として、来年は『レクチャー内容を効率よく吸収できる』勉強会だけではなく、『体験し、心で吸収できる』勉強会をもっと積極的に開催していきたいと思っています。

オミクロン もうあんたらに 負けないよ

早くも2021年の師走から、次の感染拡大の波が押し寄せつつあります。 私達全員で当たり前のことを当たり前に実行しつつ、人と人との繋がりを大切にする2022年にしていきたいと心から願っています。

★今回の書籍以外にも、踊る救急医先生の医学書レビューはこちらのページで読むことができます!
想定読者や各診療科ごとにわかりやすくまとめられているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
詳細はこちら≫https://dancing-doctor.com/2021/03/31/review-reader/

<プロフィール>

三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター

立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。


【踊る救急医】
Twitter https://twitter.com/houseloveryuki
ブログ https://dancing-doctor.com/
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三谷 雄己【踊る救急医】

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