記事・インタビュー
社会医療法人 彩樹 豊中敬仁会病院 院長補佐 / 内視鏡ロボット手術センター長
奥田 準二
私は今年2023年の誕生日で65歳。1984年に医師・外科医となって、ほぼ40年になる。従来なら第一線の外科医を引退する時期を迎えたと考えられる。
まずは、これまでの経緯を振り返ってみたい。子どもの頃から臆病で血を見るのも怖がっていた私だが、父が外科医として開業していたことが大きく影響して外科医を志すこととなる。1984年当時の消化器外科は、がんに対する拡大手術全盛時代で、入局・師事した大阪医科大学(現・大阪医科薬科大学)一般・消化器外科の岡島邦雄教授は胃がん拡大手術の権威として高名であった。拡大手術の厳格な教えを受けつつ、低侵襲手術への時代の変化と相まって1993年から早期大腸がんを初期適応として腹腔鏡下大腸手術を専門とする機会を与えていただいた(①)。
進行大腸がんへの腹腔鏡下手術の適応拡大に苦慮していた折に参加した1995年の学会で、海外招待演者として日本に招かれていた米国のJeffrey Milsom 教授の講演に魂を揺さぶられた。講演後に直接願い出て、翌1996年にCleveland Clinic に留学し、同教授の薫陶を受ける機会を与えていただいた(②)。
1997年からは谷川允彦教授のもとで同手術の発展に注力することで国内外の多くの新進気鋭の外科医との交流も広がった。現在まで続く、次世代の内視鏡下消化管手術セミナー、骨盤内視鏡外科セミナーや近畿内視鏡下大腸手術研究会を立ち上げる機会を与えていただいた(③)。
2011年の教授選の落選後も内山和久教授のご支援をいただいて、大腸外科チームのトップとして活動を継続でき、がん医療総合センター特務教授を2014年に拝命する機会を与えていただいた(④)。
何よりも多くの素晴らしい人との出会いを介して技術を生かすために最も大事な「人格」を磨き続けることの大切さを痛感し、奥田準二外科医塾を開塾する機会を与えていただいた(⑤)。
体腔内吻合、Pull-through/Reborn 手術などさまざまな工夫と、当初は躊躇していたロボット手術も導入して大学病院での大腸外科チームトップとしての活動もおおむね佳境を超えたと思うようになった。時は2021年、63歳になる年であった。定年まで2年あったが、思い立ったが吉日である。さらに新たな夢を創って成長していきたいと思っていたところ、いろいろなご縁もあり、2022年から豊中敬仁会病院に院長補佐・内視鏡ロボット手術センター長として赴任する機会を与えていただいた(⑥)。
岡博史理事長、阪口正博院長とは大学時代の同級生であった。総病床数60床の小規模病院で消化器、とくに大腸に特化してダヴィンチXiを導入したのは国内外初といわれている。病院全体がワンチームとなり、2022年の1年間で132件の大腸手術のほぼ全てを腹腔鏡下手術で、うち68件はロボット手術で安全的確に行うことができた。胃、胆石、ヘルニアなどに対する腹腔鏡下手術も積極的に行っており、消化器メインのコンパクトなブランド病院となって、より多くの患者さんに迅速的確にお役に立てるようにしていきたいとの思いが高まっていた。
そんな折に「DOCTOR’S MAGAZINE」より巻頭ページ「Doctor’s Opinion」への寄稿の機会を与えていただいた(⑦)。テーマは、「医師のターニングポイント」であった。これは、私にとってまさに今考えるべきテーマであり、下記の思いで有り難くお応えさせていただきたい。
「人生100年時代となった今、これまでの40年間に①~⑦など幾つもの大切な機会を与えられ育てていただきました。これからの40年で今度は後進に機会を与えて人格の立派な外科医を育てていくことで恩返しをしていきたいと思っています。大きなターニングポイントを迎えている今、生きていることに感謝しかありません」
奥田 準二おくだ・じゅんじ
1984年大阪医科大学卒業。一般・消化器外科に入局。1996年米国クリーブランドクリニック大腸外科への留学を経て1997年大阪医科大学に帰局。2007年同大学消化器外科准教授、2014年大阪医科大学附属病院がん医療総合センター特務教授、2022年より現職。中国各地で大腸がんの手術を指導し、上海市東方医院名誉教授に就任。「ドクターの肖像」2019年4月号に登場。
※ドクターズマガジン2023年4号に掲載するためにご執筆いただいたものです。
奥田 準二
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