記事・インタビュー

2020.11.20

山あり谷あり谷底あり! ドイツ留学(20)

ドイツはノルトライン=ウェストファーレン州にあるボン大学で循環器内科のフェローとして働いている杉浦 淳史です。
この記事では、日本生まれ日本育ちの循環器内科がドイツでの研究・臨床留学の中で経験するさまざまな困難・葛藤・喜びを、ありのままにお伝えします。

新規デバイスの治験

弁膜症カテーテル治療の分野では日進月歩で医療技術が開発されています。その中にはすでに保険で認可されたもの以外にも、保険適応外での治療デバイス使用や、新規デバイスの治験などもあります。この最先端の医療技術に関する日本との時差、通称「デバイスラグ」、が僕がドイツで留学している理由の一つです。

先日、ある治験デバイスの治療がありましたが、正直に言うとかなり難渋していました。デバイスに改善が必要なことはさておき、治療をガイドする「指導者」も10-20件の経験しかないこと、どういった要素が術中手技の成功に関連するかが不透明なこと、などが挙げられます。術者のNickenig教授は、3-4時間集中し続け、なんとか手技を完遂させていました。今後普及するかどうかは、この最初の治験成績が大きく影響するためもちろん適当なことはできませんし、まさに最先端でその新規デバイスを評価し、改善点を見つけ出しているようでした。

僕も帰国後は、新規デバイスの日本への導入をサポートするために治験施設で働きたいと思っているので、そう言った意味でもボン大学でNickenig教授の背中を見てるのは大きな意味があるのかもしれません。

母校で医学生に講義

高等教育機関(高校・大学・大学院など)の同等性評価のための書類(前項参照)を準備している際に、母校の福井大学の国際科の包囲網に引っかかり、今回留学にかんする講義をすることになりました。講義を録画して投稿し、それをオンデマンド形式で学生が視聴し、後日質疑応答の会をする形式です。今回COVID-19の関係で、海外にいながら日本に発信しやすくなったなあと思います。

さてそんなCOVID騒動で遅れること半年弱、須藤先生と田中先生がボンのリサーチフェローとして来られました。お二人ともご家族に先行して渡独され、要領よくセットアップを済ませ、1ヶ月足らずで研究の打ち合わせをしたり、データ集めをしたりと、自分が来た時に比べかなり順調に進んでいて素晴らしいです。ちょっとだけくやしい(笑)。写真はある日のカテ後の風景、まるで日本のカテラボのよう。

ドイツ医学生に講義

先日ドイツ医学生に授業をしてきました。テーマは急性・慢性心不全。
同僚はみんな「おお楽勝だね〜♪」って。いやいや、母国語なら楽勝でしょうが、如何せんドイツ語。事前にドイツ語のサイトをみて勉強し、You tubeを見て練習して、そして悟りました。かなりキツイ(笑)。

もうどうしようもないので、簡単な質問を学生に投げかけて、「Richtig!(正しい)」とか「Genau!(その通り)」とかを連呼して気分を良くさせつつ、その答えの重要性を(下手くそなドイツ語で)強調する作戦に。さらに「日本だと・・・」という感じで日本とドイツの相違点や共通点に持っていって、「その原因はなんだと思う? はい君。」的な感じで、みんなに降って、各人に時間を使わせるプランに。笑

同僚にもついてきてもらい、そんな感じのノリでなんとか第一回を乗り切りました、はい。が、しか〜し、第二回のテーマはなんとARDS。日本語でもキツイっす。。。

<プロフィール>

杉浦 淳史

杉浦 淳史(すぎうら・あつし)
ボン大学病院
循環器内科 指導上級医(Oberarzt)

1983年千葉生まれ。2008年福井大学医学部卒業。
論文が書けるインテリ系でもないのに「ビッグになるなら留学だ!」と、2018年4月からドイツのボン大学にリサーチフェローとして飛び込んだ、既婚3児の父。

杉浦 淳史

山あり谷あり谷底あり! ドイツ留学(20)

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