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2017.03.07

世界中の研究者が注目するiPS細胞の可能性とは?

世界中の研究者が注目するiPS細胞の可能性とは?

iPS細胞の製作を理由に京都大学の山中教授がノーベル賞を受賞したことは記憶に新しいでしょう。さまざまな可能性を持ったiPS細胞。抑えておきたいiPS細胞の基本をまとめました。

iPS細胞とES細胞の特徴について

ヒトへの臨床適用が期待されているiPS細胞が誕生したのは2006年のこと。4個の遺伝子を分化した細胞に導入することで多能性を持つ細胞となるiPS細胞=人工多能性幹細胞の発見となりました。
このiPS細胞の優れている点は、さまざまな臓器や組織になる万能細胞であることと、胚を必要とせず増殖する力を持っていること。自己細胞を利用するため、移植時の拒絶反応の可能性が低い点からも将来的な汎用性の高さを期待され、日本だけでなく世界でも一躍注目を浴びました。
一方、ES細胞は、1998年にヒト由来で作製された細胞で、iPS細胞の前身とも言えるものです。
ES細胞で用いられるのは、不妊治療で不要となった廃棄前の受精卵であり、倫理上の問題からアメリカでは一時研究が中断された経緯もあります。また、移植後の拒絶反応も大きな焦点となる問題です。さらに、細胞を分化・増殖させて作製するES細胞・iPS細胞は、体性幹細胞と違って未分化の細胞がガン化する可能性が指摘されていました。

iPS細胞の研究はどこまで進んでいる?

わずか数年で世界中の研究者の耳目を集めるテーマとなったiPS細胞ですが、医療の現場で実際に使用するためには多くの課題があります。
まずは安全面に関して。画期的な治療法でも、治療によるリスクが高かったり、経過に問題があったりすれば、なかなか臨床の場に広がりません。
実際に、iPS細胞が発見された当初は、iPS細胞の腫瘍化という問題がありました。「腫瘍化」の問題は新たな研究によって解消されつつありますが、実際に治療に導入するにあたっては、さらなる課題をクリアする必要があります。
「ヒトへの実用化は10年先」と言われますが、前段階として行われるのが動物実験です。
国内外問わず、iPS細胞の研究は盛んにおこなわれていますが、2016年10月には信州大学からサルを対象とした実験結果が報告されています。「心筋梗塞を患ったサルにiPS細胞によってつくられた心臓機能を移植した」というこの実験では、移植によってサルの心臓機能が回復したという良好な結果が報告されました。ただし、心機能は回復したものの一過性の不整脈が副作用として見られました。
こうした副作用を克服することが、将来的なヒトへの応用に役立つのではないかと考えられています。

iPS細胞のこれからと医療現場の展望

2014年、目の病気である加齢黄斑変性に対して、世界で初めてiPS細胞で作製した網膜細胞シートの移植手術が行われた、というニュースが世界を駆け巡りました。
このプロジェクトを推進したのは理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダー、手術は神戸市にある先端医療センター病院で行われました。懸念であった「ガン化」の問題や「拒絶反応」もここ数年で研究が進み、加齢黄斑変性手術では他家培養によるiPS細胞による移植の準備が進められています。
サルにおける実験のように、今後は心臓など重要な器官における臨床研究も視野に入るでしょう。実際に、血液疾患やパーキンソン病、脊髄損傷、軟骨疾患など数年以内に臨床研究に移ることが予測されています。
iPS細胞の研究は、再生医療の実用化に向け、2006年からほんの10年でここまで進んでいます。

まとめ

研究が続くiPS細胞。このまま臨床実験での良好な結果が得られれば、さまざまな病気に対してiPS細胞が活用される日もそう遠くはないかもしれません。

最終更新(2016/10/31)

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