記事・インタビュー
第2章) 入局のメリット・デメリット
司会 ここからは、プログラムを検討する際に気になる方も多い、「入局」「医局」について考えていきます。
アンケートでは「医局に対するイメージ」を聞いたところ、ネガティブなイメージが6割、ポジティブなイメージが2割、という結果となりました。
医局は多種多様。実情を知るには、そこに所属する人に話を聞くべき
山本先生 医局は大学によって様々です。同じ大学の中でも診療科によって様々ですし、各医局の運営の仕方は驚くほど違います。
僕らの消化器外科領域でも、A大学とB大学の医局、と大学同士で比較をすると、その医局の雰囲気や方針は全く違うんですよ。だから、もし皆さんが医局に対する何らかのイメージを持っているとしたら、ちょっと主語が大きすぎる可能性があるんです。
なので、自分が希望する診療科の医局に入るかどうか迷ったら、医局の先輩に聞いた方がいいし、外科系を考えていらっしゃる方がいたら、僕自身に相談していただいても構いません。やっぱり中の人の話を聞かないと、わかりにくいわけです。
「医局に入りたくない」と思って入局しなかった人や、医局をやめた人にアドバイスを求めたら医局のネガティブな情報しか手に入らないですよね。相談するときに、どういう人に相談したらどういう情報が得られやすいかを考えながら情報収集をしないと、バランスよくメリット・デメリットの判断ができないので、注意してほしいと思います。
1回きりの人生なので、やっぱり自分にとってベストな選択肢を選びたいじゃないですか。医局にしても、医局以外にしても、本当は自分に合った選択肢なのに、詳細な情報を知らないまま除外してしまうのは避けたいですよね。

司会 続いて、医局に対するネガティブなイメージの具体的な回答をみていきます。
「こわい」、「勤務先などが縛られる」「地方に飛ばされそう」「自分のライフプランなどが制限されるイメージ」と勤務先や働き方の自由度が低い、というイメージをもつ方が圧倒的に多くみられました。
自分の中の“医局のイメージ”は実情とずれている可能性がある
山本先生 医局に対するネガティブなイメージに「こわい」とか「辞める際が大変」とあって、これは予想通りの回答ではありますが、こういった雰囲気も医局によって違うんですね。同じ大学でも診療科によって全然違うので、自分の候補となる医局がどの程度、このネガティブなイメージに一致しているのか、実際に見てみないとわからないんです。医療ドラマや学生時代に見たイメージのみを頼りにすると、実は実情とずれている可能性があるかなと思います。
例えば僕は京都大学消化管外科のグループに所属していますが、自由で自発性を重んじる風土があり、この回答にあるイメージとはずいぶん違うなと思います。全然怖くもないですしね(笑)。
勤務先の選択肢数は医局次第。事前のリサーチがカギ。
山本先生 回答の中で重要なのは、「勤務先が縛られる」というポイントですよね。医局に所属していると、原則勤務先は医局の関連病院、ということになりますよね。そうすると、その医局の関連病院の数が選択肢の上限になります。この点は医局によって全然違うように思います。
例えば、京都大学外科交流センターの関連病院は全国に60以上あるので(https://kyoto-u-sa.or.jp/)、僕自身は選択肢が狭いというイメージは全くなく、むしろ自分に合った雰囲気、仕事の強度、地域における性質など多様な働き方の選択肢がある点はメリットに感じます。一方で、広いエリアに関連病院があると、将来的な住環境に見通しが立ちにくい点をデメリットと感じる人もいると思います。何せ、こういった状況も医局によって全然違いますよね。だからこそ、医局に対して固定したイメージを持たない方がいいと思っています。

司会 2割の回答があったポジティブなイメージについては、「専門医をとるうえで症例を確保できる」という点や「教育や指導がしっかりしている」という声がありました。
また、働き方について「研究や留学など選択肢も豊富である」「人手が多いため、家庭の事情に応じた働き方ができたり、先輩に相談がしやすい」などの回答もありました。
医局の強みは多様なロールモデル、キャリアの多様性があること
山本先生 初期研修医の方が医局のポジティブなイメージをよくご存知なんだなと、これを見ていて思いました。自分が思う医局の最大の利点は、キャリアに関して悩みがあったときに必ずロールモデルになる先輩がいることです。仲間がたくさんいますから、何かに悩んだ時、必ず同じ境遇で悩んだ経験のある人がいる。すごくリアルな体験をもとに助言がもらえる、親身になって話を聞いてくれる仲間がいるというのはとても恵まれた環境だと思います。キャリアの多様性も重要なメリットですよね。皆さんは今、臨床を生涯バリバリやりたいって思っているかもしれませんけど、ずっとその温度が持続するかどうかは予想がつきませんよね。後進の教育に力を入れたいとか、研究をやってみたいなとか、組織のマネジメントを学びたいな、とか、色々な分野を学びたい時期が来るかもしれません。そうなったときに、多様なキャリアが選択できるというのは、医局のメリットかなと思います。
市中病院プログラムのメリット
山本先生 医局に所属しない働き方のメリットとして重要なのは、働き方や給与面の待遇に自由度が大きいことですよね。自分で好きなところにアプライして自力で選ぶ方が、勤務に関する希望は満たしやすいと思います。例えば週4回働いて残りはバイトをしたい、といった自由度の高い働き方は、医局によっては難しい場合もあるでしょうから、その点は医局に所属しない働き方のメリットだと思います。
山本 健人
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