記事・インタビュー

2023.09.07

山あり谷あり谷底あり! ドイツ留学(27)

 

ドイツはノルトライン=ヴェストファーレン州にあるボン大学で循環器内科のフェローとして働いている杉浦淳史です。
この記事では、日本生まれ日本育ちの循環器内科13年目がドイツでの研究・臨床留学の中で経験するさまざまな困難・葛藤・喜びを、ありのままにお伝えします。

Approbation取得とドイツの医師の給料

2022年9月、晴れてApprobation(永久医師免許)が下りました。これを以って、一時中断していた診療行為も再開しました。

やはりこれまでと違い、一人の医師として責任が持てる立場となった関係か、診療件数はその後飛躍的に増加しました(月平均でTAVI10件、僧帽弁三尖弁治療3件、冠動脈治療が20~25件程度)。オンコール業務は月3〜5回で、土日通しのオンコール業務は原則として月に1回のみです。専門医あるいは実質上級医としての勤務でしたが、ドイツの専門医資格がなかったため、契約上はAssistenzarztの雇用であり、これに超過勤務手当や休日手当、子供手当がついていました。私はこういった給料面の交渉の関係で、後に述べる専門医資格の取得と上級医へのステップアップをこのあたりから意識するようになりました。

今後ドイツで働こうと考えている方は、こういった必要資格や書類など、なるべく情報を先に集めて準備することが、無駄のない人生設計につながると思いますし、私のブログがそのために役立ってくれれば幸いです。

ちなみに給料ですが、ドイツでは大体(あるいはすべて?)の職種の給料が表として掲載されています。医師の給料表は以下を参考にしてください。
https://www.praktischarzt.de/arzt/tv-aerzte-tarifvertraege/

なおインフレを反映して毎年3~4%の賃金の引き上げが行われています。科長(Chefarzt)クラスになってプライベート保険の患者さんを診療するようになると、この給料に+αで保険会社から支払いがあります。あくまで一例ですが、例えば病棟の患者さんを診察すると1人あたり80€程度出るそうです。患者さんが15人いれば1200€/日、30日続ければそれだけで……!!

もちろん外来の診療や検査、入院後の検査や治療などの支払いが、逐一加算されます。とある近しい大学病院勤務の科長は、1年で日本人の平均生涯年収以上の収入を得ているようです。アメリカンドリームならぬジャーマンドリーム!

また、科長でない上級医でも、Außertariflicher Vertragという、給料表に準じない契約を結ぶことができます。大学病院では比較的稀ですが一般病院では結構あるようです。

ドイツの生活費、2023年

世界的なインフレが進んでいる2023年春の時点での、ドイツでの生活にかかる費用を具体例とともにシェアしたいと思います。

牛乳 1L:1.2 €
卵 12個パック:2 €
パン 1斤:1.2 €
リンゴ 1kg:3 €
ビール 1L:1 €
ガソリン 1L:1.8 €
家族用賃貸住宅:1200〜2500 €/月
電気代:80〜160 €/月
片道電車券:3 €
マクドナルド Big Mac🄬:6 €
携帯電話料金:8 € (4GB+通話)
日本人子女向け補習校:65 €/1人
ラジオ税:120 €/3ヶ月

こうやって見直すと、食品関係は比較的安いですが、家賃は最近高騰していますし、車や自転車などの価格も日本と比較すると結構高いと感じます。給料は、インフレを反映して漸増していますがとても追いつかず、今年と来年にインフレ手当として1250€が2回支払われるようです。

ドイツ、子供の学校

ドイツは小学校(Grundschule)が4年生までで、その後に高等教育に進みます。高校卒業資格試験(Abitur)を受けて大学進学を目指すGymnasium、専門学校的な役割のRealschuleやHauptschule、総合学校のGesamtschuleというように分けられており、成績や語学力・発言能力、目的などによって進学先を決めます。

我が家は子供をインターナショナルスクールに入れていました。学費は学校により異なるものの年間1〜2万€と基本的に高額ですが、学費の減額申請ができるところがほとんどだと思います。授業に関しては、現地の小学校よりも高度の内容が英語で行われ、さらに国際的な視点を取り入れたコミュニュケーションやプレゼンテーションを学ぶことができ、国際バカロレア(IB)のプログラムを取り入れている学校も多いです。

フランクフルトやデュッセルドルフなど、大きな都市には日本人学校があり、日本と遜色ない教育が受けられるようですが、多くは中学校までです。その後はインターナショナルスクールに行くか、ドイツの現地校に入るか、日本に帰国して高校に入学するか、になると思います。

我が家も今回、子供達の現地校への転校を画策したので、次回以降少し情報をシェアしていきます。

<プロフィール>

杉浦 淳史

杉浦 淳史(すぎうら・あつし)
ボン大学病院
循環器内科 指導上級医(Oberarzt)

1983年千葉生まれ。2008年福井大学医学部卒業。
論文が書けるインテリ系でもないのに「ビッグになるなら留学だ!」と、2018年4月からドイツのボン大学にリサーチフェローとして飛び込んだ、既婚3児の父。

杉浦 淳史

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