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2023.07.18

書評『ICU思考のつくりかた』 ICUローテを始めた初期研修医の悩みも解決

民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。

医学書を読むのが大好きな先生方が初学者に向けた医学書解説・比較の医学書レビューと、日々医師のために医学書を作る出版社の担当者がおすすめの良書をこちらで集めて発信していきます。

今回は、筆者がいつもお世話になっている川上大裕先生から恵贈いただいた『ICU思考のつくりかた』(中外医学社、4,840円)を紹介します。

購入先のリンク(Amazon)も掲載していますので、お気に入りの書籍があればご購入ください。

レビュー:三谷雄己先生(踊る救急医先生)

初めてICUをローテーションするけど、研修医はどのように動けばいいんだろうか、そして何から学べばいいんだろう……と不安になる人も少なくないと思います。ICUでの研修は、初期研修医にとってはハードルも緊張感も高いものの一つですよね。

しかも、学ぶべき内容が多すぎて、何から順番に学んでいけばいいのか悩むことも少なくありません。

私自身は、この書籍を読んで、若手指導医という立場としてICUローテーションを始める初期研修医に対してどのようにオリエンテーション・教育を進めていくべきかを改めて再確認しました。

本書を読むことでICUでの動き方、考え方の大原則を明確に知ることができるので、研修医だけでなく、指導医も含む多くのICU勤務の先生方におすすめです。

今回、ICU初学者にとっての必読書として、自分が自信をもっておすすめするのがこちらです。

ICU思考のつくりかた
川上 大裕 (編集), Minatojima ICU GoodFellas (著)/ 中外医学社 発行
価格:4,840円(税込)
発刊:2023/3/3
Amazon

書評『ICU思考のつくりかた』
    1. 1.本書のターゲット層と読了時間
    2. 2.本書の特徴
    3. 3.個人的総評
    4. 4.本書の読み方・活用方法
    5. 5.まとめ
    6. 6.医書レビュー

1.本書のターゲット層と読了時間

【ターゲット層】
・集中治療に興味がある研修医や若手医師
・ICUで働いている医師(指導医含む)

【推定読了時間】
・7~8時間程度

2.本書の特徴

【本書の構成】
●急変対応から蘇生後の管理までが、7日間の研修形式でまとめられている
●神戸市立医療センター中央市民病院のICUで行われている教育回診の内容をベースに構成

本書を読むことで、以下のことが学べます。

【本書で学べること】
●病棟回診マニュアルをもとにしたICUでの動き方、基本の考え方
●医療倫理、ノンテクニカルスキル、臨床疑問の調べ方など、現場で必要となる知識・スキル

これらは研修医の先生方はもちろん、ICUに勤務するすべての先生方にとって学んでおくべき大切な事項であると思います。

3.個人的総評

本書の特徴はなんといっても、実在の病院のICUで行われている教育回診の内容がベースとなった病棟回診マニュアルであるという点です。

自分が研修医であった頃の視点で読むと、「臨床現場に即した知識がちりばめられており、ICUローテを始めた初期研修の時にこの本があれば、自分が悩んだことがすべて解決されたのに…」と思いました。

医療倫理やノンテクニカルスキル、臨床疑問の調べ方など、現場で本当に必要な知識・スキルにも触れられており、こういった内容が会話形式を交えて学べる書籍は、他にないと言えるでしょう。

特に臨床疑問の調べ方についての章は“思考回路の言語化”が素晴らしく、私自身、「研修医の時にこのようなマインドを上級医に教えてもらえたら、どれだけ良かっただろう…」と強く感じました。さらに、会話形式の記述の中にも思わず唸ってしまうような発展的な内容がちりばめられています。そのため、研修医の先生方だけでなく、教育を行う指導医の先生方にもさまざまな気づきのあるものとして、本当に読んでいただきたい一冊となっています。

一方で、あくまで個人的な印象ではありますが、「学び始めたばかりの本当の初学者には少し難しい箇所もあるかな」と、少々気になりました。実際に、初期研修医2年目の先生方に、ICUローテーションの1週間の段階で「1日1章を読了する」という課題を出してみました。

すると、章の内容によっては、難易度が高いと感じられる先生が多かった印象でした。初心者向けの書籍とはいえ、集中治療自体が研修医の先生方にとっては少し難しい分野の一つのため、無理もありませんよね。

もちろん、本書に加えてさまざまな初学書を組み合わせるなどの工夫ができますので、この点については少しだけ念頭に置いた上で、ぜひ読んでみてくださいね。

ともあれ、私は本書について、ICUでの動き方・考え方の大原則がわかる、ICU勤務医にとっての必読書である!と強く感じました。

4.本書の読み方・活用方法

【本書のおすすめの読み方・活用方法】
●まずは、自分のペースで通読!
●わからないところを調べ直して復習!
●その後は指導を通して、また経験した症例の前後で読み直して定着!

著者個人の意見としては、

1日1章など、まずは自分なりのペースを決めて通読してみることが大切だと感じます。

その際、いくつか悩んでしまう項目もあるかとは思いますが、リズムを大切にそのまま通読し、ICU勤務についての概観を掴むことがポイントです。

通読した後は気になった項目について、他の書籍や論文などを参考に調べ直してみましょう。本連載では、他にも参考になる書籍を厳選して紹介していますので、目を通していただくと良いかと思います!
その後、自分なりに学び終えた後は、後輩への指導へ活かしてみましょう。

指導を通して学びを深め、理解が不十分な部分を見つけたらその都度本書に戻り、自分の知識・スキルとして定着させていきましょう!

5.まとめ

本書はICU治療を学ぶ研修医、上級医にとって必読の参考書の一つである!

本書はICU治療の大原則について、わかりやすく、かつ深く学ぶことができる、本当におすすめの一冊です。

この一冊を通じて学ぶことで、ICUでの動き方、考え方の大原則を明快に知ることができます。

今後の学びや業務をより良いものにしたい方は是非、手にとっていただきたい一冊です。

以下に要点や基本事項をまとめましたので、購入する際には参考にしていただければ幸いです。

6.医書レビュー

基本情報 タイトル:ICU思考のつくりかた
編集:川上 大裕
著:Minatojima ICU GoodFellas
出版社:中外医学社
発行年月日:2023/03/03
ターゲット層

●集中治療に興味がある研修医や若手医師
●ICUで働いている医師(指導医含む)

推定読了時間

7-8時間程度

本書の特徴

●急変対応から蘇生後の管理までが、7日間の研修形式でまとめられている
●神戸市立医療センター中央市民病院のICUで行われている教育回診の内容をベースに構成

本書で学べること

●病棟回診マニュアルをもとにしたICUでの動き方、基本の考え方
●医療倫理、ノンテクニカルスキル、臨床疑問の調べ方など、現場で必要となる知識・スキル

評価
購入先

本書の読み方・活用方法

●まずは、自分のペースで通読!
●わからないところを調べ直して復習!
●その後は指導を通して、また経験した症例の前後で読み直して定着!

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この記事を読んで参考になった方、面白いと思ってくださった方は、今後も定期的に記事を更新していきますので、その他の記事も是非読んでみてくださいね!

★今回の書籍以外にも、踊る救急医先生の医学書レビューはこちらのページで読むことができます!
想定読者や各診療科ごとにわかりやすくまとめられているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
詳細はこちら≫https://dancing-doctor.com/2021/03/31/review-reader/

<プロフィール>

三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター

立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。


【踊る救急医】
Twitter https://twitter.com/houseloveryuki
ブログ https://dancing-doctor.com/

三谷 雄己【踊る救急医】

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