記事・インタビュー
民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。
医学書を読むのが大好きな先生方が初学者に向けた医学書解説・比較の医学書レビューと、
日々医師のために医学書を作る出版社の担当者がおすすめの良書をこちらで集めて発信していきます。
今回は、非整形外科医が理解しておくべき、必要最低限の骨折対応がよくわかる『骨折ハンター レントゲン×非整形外科医』(増井伸高著/中外医学社)を取り上げます。
購入先のリンク(Amazon)も掲載していますので、お気に入りの書籍があればご購入ください。
レビュー著者:三谷雄己先生(踊る救急医先生)
・手をついて受傷された手関節痛の患者さん。レントゲンを撮ってみたけれど、これって折れているのかな……? どこをポイントに骨折線を探せばいいのか分からない……。
・救急外来で鎖骨骨折と診断することはできた…。でもこの先、どう対応したらいいんだろう?
・橈骨遠位端骨折みたいだけど、これは整復が必要なのかな…?
・どんな骨折の時に整形外科の先生に急ぎで連絡しないといけないのだろう…?
これらは日々ERで骨折対応をする中で感じる悩みや疑問点であり、私自身もこの悩みを解消しようとしてさまざまな本を読み漁っていたところ、この一冊『骨折ハンター レントゲン×非整形外科医』(中外医学社)に出会いました。
- 書評『救急外来での検査値の読み方 ルーチンを超えろ!』
今回は、骨折診療の初学者であった立場から、半年間の整形外科での修練を経て、来年度からは整形外科を専攻する……という、少し骨折診療の経験を積んだ現在の私の視点で、この本を徹底レビューしていきたいと思います。
救急外来で整形外科外傷に遭遇する機会は非常に多いですが、それとは対照的に、医師国家試験では整形外科外傷についての出題があまりないため、学ぶ機会が極端に少ないと感じています。
そのため、“救急外来での整形外科疾患の診断と治療”は、一年目の研修医がぶつかる壁の一つではないでしょうか。
本書を読むことで、今後転倒や交通外傷などの患者さんに救急外来で出会ったとしても、自信を持って対応することができるでしょう!
「非整形外科医が理解しておくべき、必要最低限の骨折対応」を学べる一冊としておすすめします。
1.本書のターゲット層と読了時間
【ターゲット層】
・初期研修医から後期研修医。特に非整形外科医の医師
【推定読了時間】
・12~14時間程度
2.本書の特徴
●治療についてではなく、診断と初期対応だけに特化している
●非整形外科医による、非整形外科専門医のための入門書である
本書を読むことで学べる項目のうち、特徴的なものをピックアップします。
●通読すれば明日からの整形診療が変わるという、実践的な診断方法
●レントゲンの読み方から整復法まで、一通りの整形外科疾患への対応方法
●痒いところに手が届く、診断のポイント・コツ
これらは研修医の先生方にとっては、救急外来を担当するのであれば必ず学んでおくべき大切な事項であると思います。
3.個人的総評
本書の特徴はなんと言っても、非整形外科医による非整形外科医のための骨折への対応本と言える点でしょう!
この本を通読することで、明日からの骨折診療の具体的なアクションプランをより良いものに変えることができるほど、実用性が非常に高い一冊です。
例えば、本書で紹介されているポイントの一つに、「受傷機転と年齢から起こりうる骨折型をイメージしてから読影する」というマインドがあります。
このマインドは、私の経験からも非常に大切だと感じていますし、骨折診療初心者は圧倒的にここが弱いポイントでもあります。
実際の救急対応現場ではポイントを押さえ、理論武装していくことが大切です。本書ではそのようなポイントがまとめられており、“非整形外科専門医が整形外科領域を学ぶための初めの一冊”として非常におすすめです。
その他、時間外の検査体制や入院の閾値、整形外科医の本音やその後のフォロー、非整形外科医がどんな骨折ならギプス固定までするかなど、悩ましいポイントや痒いところに手が届く解説が盛りだくさんです。
特に、診断がつかない場合のマネジメントなど、本書は“不確実性の高い救急外来で意思決定する際、心のよりどころになる一冊”だと感じました。
一方で、あくまで個人的な印象ではありますが、少し気になった点として、 “専門科での勉強をある程度深めた+これからさらに深める立場の人間”としては、それぞれの骨折に対する治療方針に関して一部、疑問に思った部分がありました。
例えば、「脆弱性骨折や腰椎圧迫骨折の入院後の加療」については、骨折の状況や患者背景、入院後の臨床症状によって治療方針が変わってきます。
分かりやすい解説の一方で、あまりに断定的に「保存療法より手術療法の方がベター」などと断定されてしまうと、専門科の意見と乖離する可能性もあるかなと感じました。
以上、この点については少しだけ念頭に置いた上で、ぜひとも一度手にとっていただきたいと思いました。
4.おすすめの使い方・読み進め方
もちろん、目次から関心のある分野をピックアップして、そこから読み始めてもよいでしょう。
●これまで悩んだ診療を思い出しながらまず通読!
●通読できない場合は、興味のある分野について目次の中からつまみ食い感覚で読んでみる
●現場では、整復/固定方法の項や、巻末資料で各パートのマネジメントのまとめをさらっと確認
●その後は経験した症例の前後で読み直して復習!
個人的におすすめの使い方をご紹介します。
本書は、
- 1. 画像を撮る前に、鑑別疾患を挙げて骨折線をイメージする
- 2. 画像確認後に診断名とマネジメントを判断する
- 3. 診断できない時もマネジメントする
の3ステップでさまざまな骨折症例を読み解いていく構成になっています。
内容としては、【本書の特徴】で述べたように、骨折の根本的な治療方法についてはあえて触れず、診断と初期対応だけに徹底的にフォーカスしたものとなっています。
特にレントゲンの読影はポイントを突いた解説となっており、亡霊骨折などイメージのつかみやすいユニークな用語は頭に定着しやすいため、非整形外科非医の先生方にも身につきやすい工夫がされています。
本書は、このように濃い内容となっているので、通読できればしたいところですが、時間が限られている人は、
“これまで自分が悩んだ受傷部位の項をかいつまんで読む”でもよいかと思います。
一度本書に目を通した後は、忙しい臨床現場でも整復/固定方法の項や、巻末資料で各パートのマネジメントのまとめをさらっと確認できるので、診療を行う上で漏れが少なくなるでしょう。
5.まとめ
本書は、「非整形外科医が理解しておくべき、必要最低限の骨折対応」を学べる最適な一冊である!
まとめると、本書は「必要最低限の骨折対応」を学ぶ必要のある非整形外科医の先生方に、本当におすすめの一冊です。
この一冊を通じて学ぶことで、今後転倒や交通外傷などの患者さんに救急外来で出会ったとしても、自信を持って対応することができます!
以下に要点や基本事項をまとめましたので、本書を購入する際にはぜひ参考にしていただければ幸いです。
6.医書レビュー
この記事を読んで参考になった方、面白いと思ってくださった方は、今後も定期的に記事を更新していきますので、その他の記事も是非読んでみてくださいね!
★今回の書籍以外にも、踊る救急医先生の医学書レビューはこちらのページで読むことができます!
想定読者や各診療科ごとにわかりやすくまとめられているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
詳細はこちら≫https://dancing-doctor.com/2021/03/31/review-reader/
<プロフィール>
三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター
立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。
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