記事・インタビュー
民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。
医学書を読むのが大好きな先生方が初学者に向けた医学書解説・比較の医学書レビューと、
日々医師のために医学書を作る出版社の担当者がおすすめの良書をこちらで集めて発信していきます。
今回は、救急外来でよくある検査値の読み方とその後の対処法がわかる『救急外来での検査値の読み方 ルーチンを超えろ!』(薬師寺泰匡著/日本医事新報社)を取り上げます。
購入先のリンク(Amazon)も掲載していますので、お気に入りの書籍があればご購入ください。
レビュー著者:三谷雄己先生(踊る救急医先生)
救急外来の診療で「胸痛の患者さんが搬送されてくるから、とりあえず検査出しておいて!」と言われたけど、どんな検査項目が必要なのだろうか…?
検査項目を相談したら、「とりあえず胸痛セットのルーチン検査を出しておいて!」と言われた。でも、どうしてこんなにたくさんの検査項目が必要なのかよくわからない…。今回は、救急外来で特に必要になる検査での値の読み方を解説した『救急外来での検査値の読み方 ルーチンを超えろ!』(日本医事新報社)を紹介します。
- 書評『救急外来での検査値の読み方 ルーチンを超えろ!』
救急外来での検査は、研修医のよくある臨床プラクティスの一つで、「ルーチンのセットで出す」というものがありますよね。このような行動プランは安全性が高く、一見大きな問題がないように感じるかもしれませんが、研修医の思考が停止してしまい、医師としての成長の機会が奪われているかもしれません。一方で、不確実性の高い救急外来では、「◯◯の検査値が高かったら、□□の処置をしよう」というように、値から導いた対処法が1対1とはならないことが多いことから、短絡的に「ルーチンのセットで検査」という対応をとってしまうことがあるかと思います。
本来は、必要な検査を必要なだけオーダーし、行った検査はきちんと解釈して患者さんのケアにいかすべきです。しかし、ルーチンで意図せず提出された項目は解釈もされず、単に検査値が表示されるだけになっていることも散見されます。
そんな風に、救急外来のルーチン検査について日々もやもやとした思いを抱えていたところ、この度著者の薬師寺泰匡先生より本書を贈呈いただきました。
本書を読むことで、ルーチンを超えて検査項目を活用できるようになること間違いなしです!
今回、救急外来や一般外来での“検査項目の総論”や“臨床での応用”を学びたいときに読むべき一冊として、私が自信をもって本書をおすすめします。
これからお読みいただく医学書レビューは、これまで研修医時代に100冊以上の医学書を読み、その中でもオススメの医学書のレビューを月5冊以上書いている、私こと、ある救急科専攻医のものです。私も医学生や研修医、各分野の初学者の気持ちが痛いほどわかります。「この一冊を手に取ってみたい」と思っていただけるようなレビューを心がけています!
1.本書のターゲット層と読了時間
【ターゲット層】
・医学生から専攻医・看護師・検査技師
【推定読了時間】
・7~8時間程度
2.本書の特徴
●ルーチン化された検査、プロトコル化された診療の解釈に注力
●スイスイと読み進められる会話形式
本書を読むことで学べる項目として、以下のことが特徴的です。
●ルーチン検査項目を行う意義から、その結果の解釈まで
●検査結果を臨床診断や方針決定に活かす方法
これらは学生や研修医、救急後期研修医を含め、救急医療に関わる医療従事者にとって、今後どのような診療科に進んでも学んでおくべき大切な事項であると思います。
3.個人的総評
本書の特徴はなんと言っても、“ルーチン検査項目”について、それを行う意義からその結果の解釈までに焦点を当てている、という点です。
「その検査は一体何を見ていて、どんな時に異常値となり、検査結果を実臨床にどのように落とし込んでいくのか」といった点について徹底解説しており、“まさにルーチンを超えるための一冊”だと感じました。
通読する中で、各検査項目の1つの側面しか知らなかったことがたくさんあり、ルーチン検査項目と呼ばれる各項目を、思考停止の“ルーチン”解釈で終わらせないよう、何度も読み返して勉強させていただきたいと思いました。
加えて、本文はもとより、コラムにも筆者の薬師寺先生の想いや経験談が凝縮しています。
血算はバイタルサインの一種といっても過言ではない…といった一文に、読んでいてハッとさせられました。
各所にちりばめられている秀逸なコラムでニヤニヤしていると、各項目があっという間に読み終わります。
なにより、この薬師寺先生の自画像や細胞のイラストもご自身で作成されたとのことで、非常に驚きました。本当に凄すぎます……!
これらは本書についての私の個人的な評価であり、しかも「おまえは何様だよ」と言われてしまうことは重々承知ではありますが、私は本書を「あえて検査の意義から掘り返して、救急でどのように応用していくかに向き合った、救急外来における検査項目の真髄を学ぶことができる一冊である!」と感じました。
4.おすすめの使い方・読み進め方
●これまで悩んだ診療を思い出しながら、まず通読!
●次にシチュエーション別の検査項目など、臨床現場でのアクションに直結する項目を改めてじっくりと読み込もう!
●そのあとは経験した症例の前後で読み直して復習!
個人的に、本書の効果的な読み方をご紹介します。
私個人の意見としては、まずは一度通読してみることが大切だと感じました。
臨床に検査をどう応用しているか、救急医の思考回路をくみ取ることに注力しながら、さっと読み進める形でも大丈夫です。
その後は各項目を読み込んでいきましょう。
特に外傷、ACS、腹痛、内分泌疾患疑い、貧血、敗血症、中毒など、「実臨床に即して検査をどのように使用していくか」を記載した項目は非常に実践的なので、ここは何度も読み込んで、自施設のルーチンと比較してみてください。
そのあとは実際の症例を通じてインプットとアウトプットをたくさん経験していきましょう。
何度も振り返りをすることで、検査のオーダーや解釈に自信を持てるようになること間違いありません!
5.まとめ
検査をその意義から掘り返して、救急の現場でどのように応用していくかに向き合った、救急外来における検査項目の真髄を学ぶことができる一冊である!
本書は救急外来における検査について、深く学ぶことができます。救急外来診療に関わる医療者には本当におすすめです。
本書を読むことで、ルーチンを超えて検査項目を活用できるようになること間違いなしです!
今後の学びや業務をより良いものにしたい方には是非手にとっていただきたい一冊です。
以下に、改めて要点や基本事項をまとめましたので、
購入する際には是非参考にしていただければ幸いです。
6.医書レビュー
この記事を読んで参考になった方、面白いと思ってくださった方は、今後も定期的に記事を更新していきますので、その他の記事も是非読んでみてくださいね!
★今回の書籍以外にも、踊る救急医先生の医学書レビューはこちらのページで読むことができます!
想定読者や各診療科ごとにわかりやすくまとめられているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
詳細はこちら≫https://dancing-doctor.com/2021/03/31/review-reader/
<プロフィール>
三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター
立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。
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