記事・インタビュー
民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。
医学書を読むのが大好きな先生方が初学者に向けた医学書解説・比較の医学書レビューと、
日々医師のために医学書を作る出版社の担当者がおすすめの良書をこちらで集めて発信していきます。
今回は、短時間で見落とすことなく心電図を読む方法がわかる『読み方だけは確実に身につく心電図』(米山喜平著/羊土社)を取り上げます。
購入先のリンク(Amazon)も掲載していますので、お気に入りの書籍があればご購入ください。
レビュー著者:三谷雄己先生(踊る救急医先生)
・日々の診察で必須の心電図。でも心電図ってどこから、どういう手順で読んでいくのだろう……?
・心電図を見てどんな疾患の可能性があるかを考えているけど、どう読影すればいいのだろう……?
これらは日々ERで後輩や同僚と仕事をする中で感じられる悩みや疑問点であり、私自身もこの悩みを解消しようとして日本不整脈心電学会の「心電図検定」を受けたことがあります。
検定を受けるにあたって米山喜平先生(循環器内科)のYouTubeを拝見して勉強しましたが、この度、出版社の羊土社様よりこの書籍を贈呈いただき、レビューをする機会を得ました。
(YouTubeのチャンネル名は「Dr. Kihei Yoneyama 心臓のお医者さん」です。)
米山先生のチャンネルでは循環器内科専門医の“実臨床での思考回路を言語化”しつつ、初期研修医とたくさんの心電図を判読していく動画がたくさんアップロードされています。
- 書評『読み方だけは確実に身につく心電図』
この記事では、私自身の、心電図検定を受ける前の初学者だった頃の視点と、専攻医3年目という現在の視点の2つから、本書の感想を忖度することなく書かせていただきたいと思います。
本書を読むことで、初学者が一番知りたい、短時間で見落としなく心電図を読む方法を知ることができます!
1.本書のターゲット層と読了時間
【ターゲット層】
・心電図に関わる全ての医療系学生、医療従事者
【推定読了時間】
・4~5時間程度
2.本書の特徴
●短時間で見落とすことなく心電図を読む方法を二十数ページに凝縮している
●初学者に向けて短時間で心電図を読む方法を徹底的に解説している
本書を読むことで学べる項目のうち、特徴的なものをピックアップします。
●国家試験の勉強で学んだ心電図の知識を、どのように臨床に生かすのか
●短時間で見落とすことなく心電図を読む方
これらは研修医の先生方にとって、時間的に切迫した状況が多い救急科はもちろんのこと、今後どのような診療科に進んでも学んでおくべき大切な事項であると思います。
3.個人的総評
本書の特徴はなんと言っても、心電図を短時間で見落とすことなく読む方法にフォーカスしているところです。
そのために初学者が覚えておくべき必要な“型”を、「10ステップ判読法」という独自のメソッドで学ぶことができます。
また本書では、「考えるんじゃない、読むんだ!」というフレーズが強調されています。
この言葉に表されているように、心電図を読むシチュエーションというのはERや内科外来など、基本的に時間が切迫している診療科でのことが多いのです。
そのため、そのような切迫した状況下でも“正確で素早い診断”を下すために、短時間で心電図を判読する型を身に付けるのは、とても実践的であると感じました。
参考:10ステップ判読法とは?
1. 心拍数 1)心拍数の数え方 、2)調律 、3)不整脈
2. 電気軸
3. 移行帯
4. P波の異常
5. PQ時間の異常
6. 異常Q波
7. QRSの異常
8. STの異常
9. T波の異常
10. QT時間の異常
また、ページ数も多すぎることなく簡潔にまとまっているので、苦痛に感じることなく通読することができます。
ちなみに、先ほど紹介させていただいた「10ステップ判読法」については、なんと1章分、つまり二十数ページ程度でまとめられているのです。
そのため、「とにかく、ざっくり心電図の読影について学びたい、臨床に出て困らないよう最低限の心電図読影ができるようになりたい」という初学者の先生方にとっては、ぴったりの一冊だと感じました。
一度通読して読影法について学んだ後は、第2章の心電図トレーニングを行うことで、読み方が身に付いてくるのを実感できます。
基本の心電図読影法を身に付けておくことは、半年後や一年後はもちろん、今後、医師として診療にあたる上で、一生活用できる技術になるでしょう。
一方で、本書において注意すべきだと感じた点は、
あくまで心電図の読み方に徹している書籍なので、それぞれの心電図が臨床上見られたときの具体的なアクションプランは、自分で学習する必要がある、ということです。
しかし、本書を読むことで心電図の読影までを学ぶことができるので、読影が苦手な方や初期研修医の先生方は、まずは本書を読んで心電図を判別できるようになるのがおすすめです。
これらは本書の個人的な評価であり、「そういうお前は何様だよ」と言われてしまうことは重々承知ではありますが、私は“本書は短時間で見落とすことなく心電図を読む方法を身に付けるのにベストな一冊である!”と感じました。
4.おすすめの使い方・読み進め方
●まず1章二十数ページを通読!
●2章で問題演習を繰り返し、読影を身に付ける!
●3章でさらに詳しい情報を肉付け!
●その後は経験した症例の前後で読み直して復習!
個人的におすすめの使い方をご紹介します!
まずは一読してみましょう。1章分20ページ程度ですので、すぐに読み切れると思います。
その後は、2章に進み問題演習を繰り返しながら「考えずに判断できる」レベルに落とし込むことが、臨床現場で素早く判断を下すために大切です。
さらに、この読み方を実臨床の心電図読影で活用し、悩んだりわからなくなったりしたら、その都度復習していきましょう。
また、3章にはより詳しいポイントやコツが書いてありますので、さらに3章を読むことで、心電図について“さらに確実に判断“できるように”なります。
その他、米山先生のYouTubeで知識の強化、読影経験を積むのも非常におすすめです。
このYouTubeチャンネルには早期再分極やWide QRSの頻脈のVTの見抜き方など、実践的な動画もたくさん投稿されています。
この書籍と同様の思考回路(米山メソッド)に従って、取り上げる症例を隅から隅まで把握していくことになるので、理解がどんどん深まること間違いなしです。
動画での米山先生は非常にポジティブで話が面白いので、興味のある方はぜひ見てみてくださいね。
本書を読み、動画をチェックした上で、よりいっそう心電図に興味を持ったら、心電図検定の受験を検討してもよいかと思います。テキストを用いて学習し、臨床研修レベルから専攻医、さらには専門医レベルへとより学びが深まり、レベルアップすることができるでしょう。
5.まとめ
“本書は、短時間で見落としなく心電図を読む方法を身に付けるのにベストな一冊である!”
まとめると、本書は心電図の読影について簡単に学ぶことができる、心電図に関わる全ての医療系学生、医療従事者に本当におすすめの一冊です。
本書を読むことで、初学者が一番知りたい、短時間で見落としなく心電図を読む方法を知ることができます!
以下に要点や基本事項をまとめましたので、購入する際にはぜひ参考にしていただければ幸いです。
6.医書レビュー
この記事を読んで参考になった方、面白いと思ってくださった方は、今後も定期的に記事を更新していきますので、その他の記事も是非読んでみてくださいね!
★今回の書籍以外にも、踊る救急医先生の医学書レビューはこちらのページで読むことができます!
想定読者や各診療科ごとにわかりやすくまとめられているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
詳細はこちら≫https://dancing-doctor.com/2021/03/31/review-reader/
<プロフィール>
三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター
立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。
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