記事・インタビュー
米国イリノイ州にあるシカゴ大学で心臓外科医として働いている北原 大翔と申します。
この企画は、日本で育ち日本で心臓外科医としての研修を受けた僕が、米国での臨床留学中に経験する医療や教育の違い、心臓外科医として、この1週間に対応した症例、手術室で起こる日本ではありえない出来事などを、真面目かつ可能な限りリアルな形で伝えることを目的としています。
今週の症例数
症例 | Apr. | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
29 | 30 | 5/1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
Sun. | Mon. | Tue. | Wed. | Thu. | Fri. | Sat. | ||
robot mass resection ロボット腫瘍切除 |
サンディエゴへ | 1 | ||||||
robot cabg ロボット冠動脈バイパス |
1 | |||||||
AVR 大動脈弁置換術 |
1 |
心臓外科医にとっての学会発表とは
アメリカ胸部外科学会(AATS)に行ってきたので、なんとなく学会発表の話をしてみます。学会は年に1回、研究成果や最新の情報を発信する場として開催されるお祭り的なもので、日本の心臓外科領域では10月の胸部外科学会と2月の心臓血管外科学会が有名です。レジデントの頃などは何かテーマを与えられると、かなりイヤイヤながらやっており、だいたい締め切りギリギリになって急いでデータを集めてとりあえず投稿してみる、みたいなことをしていました。今はもう少し真剣に取り組むようになっており、自分の好きなことを発表することが多くなりました。好きなことや興味あることを発表する時は、自分の伝えたい、自分の言葉になるので発表もしやすいですし、満足度もあります。もともと滑舌も悪く、日本にいる時から何言ってるのかよくわからない、と言われがちであったので発表というものに対する苦手意識がありましたが、今では「どうしたら、観衆に興味を持ってもらえるような発表や伝え方ができるのか」というテーマに非常に興味を持っています。
まぁ興味持っているだけで得意ではないですが。余談ですが、学会発表中にポスター会場をチラ見したところ、ポスター発表する人のマイクのコードが地面に落ちてこんがらがったり足に絡んで大変なことにならないよう鬼のような形相でコードの長さを調整をするおばちゃんを見かけました。アメリカって色々な仕事がありますね。
今週のトピックランキング身近に起きた出来事をランキング形式でお伝えします。
寿司、寿司、寿司
サンディエゴは魚が美味しいということで、サンディエゴ滞在中3日間連続で寿司を食べることになりました。最後の方はなんだか修行みたいになっていました。初日はダウンタウンにあるtaka restaurantという人気店。2日目はsushi otaという少し離れたところにありますが、サンディエゴ人気ナンバーワンの店。ここは去年、国際心肺移植学会が行われた時にも来たお店でした。3日目はTadokoro sushiでした。Tadokoro sushiはもともと予定していなかったところなのですが、結果的には最も満足できたお店でした。お寿司も美味しいのですが、何より対応してくれった日本人店員が素晴らしかったです。サンディエゴに留学に来ている学生なのですが、僕らのくだらない問いかけなどにも親切に対応してくれ、最後には一緒に写真も撮ってもらいました。来年もサンディエゴで学会があるので再訪を誓いました。いずれにしろあと2ヶ月は寿司食べなくても大丈夫そうです。
東京大学つしま君現る
東京大学医学部6年生のつしま君が1ヶ月間シカゴ大学で病院実習をするために現れました。もちろん今まで日本人学生の病院実習を受け入れたことなどないので、上司である太田先生と相談の上「世界で初めて1ヶ月の滞在中に〇〇をした実習生」をテーマに、毎日絵日記を書く、会社を設立する、論文を書くという3つの課題を行ってもらうことにしました。結果がどうなるのか楽しみです。
つしま君はナイスガイかつ優秀であり、すでにヒエラルキーの中で自分は僕より上に存在するという事実を正しく認識しているため、適度に僕をバカにしてくれます。僕は僕でつしま君の意見を聞くと非常に勉強になるので、つしま君の下へ下へと潜り込んでいます。
もっと若手の心臓外科医の勢い
僕は若手心臓血管外科医の会が運営するブログを毎日のように更新しているのですが、サンディエゴに行く前に現地でご飯を食べにいく人が全くいなかったのでブログ上で声をかけてみました。もちろん反応はほぼなかったのですが、一人だけ、京都大学の山下先生という若手(5年目?)の先生から連絡がきました。あのブログを見て僕に連絡をしてきたってことは相当なバカか狂人を想像していたのですが、それは全く違いました。山下先生はとても優秀でコミュニケーション能力が高く、何より強い個としての信念みたいなものを感じました。
食事会後、上司の太田先生から「先生、完全に負け越しやね。2時間で12敗くらいしてたで」と言われました。「でも、山下先生はブログ書いてないですよ。ブログ書いているって意味ではブログ枠は僕の不戦勝じゃないですか」と鼻息荒く言うと、太田先生は「そうやね、じゃあ1勝12敗やね」と、どこか悲しそうな顔で言っていました。
北原 大翔
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