記事・インタビュー

2020.08.23

山あり谷あり谷底あり! ドイツ留学(18)

ドイツはノルトライン=ウェストファーレン州にあるボン大学で循環器内科のフェローとして働いている杉浦 淳史です。
この記事では、日本生まれ日本育ちの循環器内科がドイツでの研究・臨床留学の中で経験するさまざまな困難・葛藤・喜びを、ありのままにお伝えします。

ZAB

ドイツでは医師の給料はカテゴライズされていて、医師のランク(Assistenzarzt/Facharzt/Oberarzt/Chefarzt)、病院のタイプ(民間病院/大学病院など)、そして勤務年数に拠ります。その交渉をしている中で事務局に言われたのが、「ドイツにおける日本の教育の同等性を示したものを提出しないと、医師として雇用できないよ」ということです。ここにきてまた書類か〜、とグチりながら調べてみると、どうやらZAB(Zentralstelle für ausländisches Bildungswesen)という機関に以下の書類を提出して審査されなければいけないようです。
(参照:https://oeffentlicher-dienst.info/aerzte/

  • eine beglaubigte Kopie : 博士の卒業証明書(日本語版)の認証コピー
  • eine beglaubigte Kopie : 博士の学位記(日本語版)の認証コピー
  • eine beglaubigte Kopie : 博士の成績証明書(日本語版)の認証コピー
  • eine deutschsprachige Übersetzung : 博士の卒業証明書のドイツ語公式(認証)翻訳または大学発行の英語版
  • eine deutschsprachige Übersetzung : 博士の学位記のドイツ語公式(認証)翻訳または大学発行の英語版
  • eine deutschsprachige Übersetzung : 博士の成績証明書のドイツ語公式(認証)翻訳または大学発行の英語版
  • einen Nachweis über die Anfertigung einer Doktorarbeit / the proof of a doctor thesis : 博士の卒業論文の証明書類
  • eine einfache Kopie : 修士の卒業証明書(日本語版)の普通コピー
  • eine einfache Kopie : 修士の学位記(日本語版)の普通コピー
  • einen Nachweis : 修士の卒業論文の証明書類
  • eine einfache Kopie : 学士の卒業証明書(日本語版)の普通コピー
  • eine einfache Kopie : 学士の学位記(日本語版)の普通コピー
  • eine einfache Kopie : 高校卒業証明書(日本語版)の普通コピー
  • eine einfache Kopie : 高校成績証明書(日本語版)の普通コピー
  • eine einfache Kopie : 有効の身分証明書の普通コピー

 

左:週末のひととき、家族と小川で水遊び、右:嫁のご機嫌を取るための、誕生日の手作りタルトケーキ

3日でsubmitしよう

「3日で(論文を)投稿しよう」「僕だったら3日で投稿する」

これはボスが、特に大事な論文作成の時に僕らに言うセリフです。ハッタリではなく、その後こまめにチェックが入り、「書き終えたか?」「どの段階でスタックしているんだ?」「必要なら僕が書くから知らせてくれ」と、夜だろうが朝だろうが連絡が来ます。

7月は2つの原著論文にこのオーダーが出て、なかなか大変でした。(1つはデータを提示した段階で言われ(原稿は白紙)、もう1つはなんとデータリストも無い状態!)。

ボスだったらきっと実現させるのでしょう。ただまあ結局、英文校正やボスのチェックがあるので、論文投稿までに前者は1週間、後者は3週間かかりました。夏休み期間でカテ室は人手不足だし、個人的には引っ越し前でパッキングを嫁に全部任せてしまったが故に嫁も機嫌悪いし、いや〜きつかった!

ドイツで引っ越し②

住居退去時のトラブルは珍しくないドイツ。日本では考えられませんが、訴訟の多いドイツではほとんどのドイツ人が弁護士保険に入っています。我が家のトラブルは「床のシミ」です。我が家の賃貸の床は日本のようにコーティングされていないので(というか、こっちの多くの家の床は無垢)、水をこぼすとあっという間にしみこんで跡になってしまうのです。防音のためにマットを敷いていたため、ある日マットを開けて「あらびっくり」の状態でした。

大家と床業者が持って来た見積もりは、びっくり仰天4000€!!! よく見ると、住居の床「全て」をキレイにする計画になっている。当然噛みつく自分。

私:1m2にも満たないのに全部の床修理をする必要はないし、僕が払う必要はない。
大家:シミのところだけ修理すると目立ってしまうから、修理を分からないようにするためには全体を作業する必要がある。

結局、僕の加入している個人賠償責任保険に報告。その保険会社が手配した「鑑定人」が我が家に参上し、後日鑑定書が送られてきました。結果は

  • 床の修復は全体に及ぶ必要がある
  • 修理見積もり金額は妥当である
  • 床の時価は原価の**%である

という内容で、保険会社としては上限970€まで負担、残りは自腹。辛すぎる……

しかし、そんなことでクヨクヨしている間も無く、新居への引っ越し。引越会社に頼む案もありましたが、ここはやっぱり楽しい方で!ということで、引越用の車を借り、友人の協力を募り、写真の車で合計6往復。引越し後にはみんなでピザとビールでパーティーをしました!!

<プロフィール>

杉浦 淳史

杉浦 淳史(すぎうら・あつし)
ボン大学病院
循環器内科 指導上級医(Oberarzt)

1983年千葉生まれ。2008年福井大学医学部卒業。
論文が書けるインテリ系でもないのに「ビッグになるなら留学だ!」と、2018年4月からドイツのボン大学にリサーチフェローとして飛び込んだ、既婚3児の父。

杉浦 淳史

山あり谷あり谷底あり! ドイツ留学(18)

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