記事・インタビュー
ドイツはノルトライン=ウェストファーレン州にあるボン大学で循環器内科のフェローとして働いている杉浦 淳史です。
この記事では、日本生まれ日本育ちの循環器内科がドイツでの研究・臨床留学の中で経験するさまざまな困難・葛藤・喜びを、ありのままにお伝えします。
Fachsprachprüfung合格

ドイツに来て1年半、前回の撃沈から3ヶ月、晴れてFachsprachprüfung(医師患者面接試験)に合格しました!
前回の反省をもとにやってきたことは、「頻出症例を朗読する」「通勤途中にフレーズを繰り返しつぶやく」「問診と称して毎日病棟患者さんと雑談する」「カルテ記載を同僚に直してもらう」「可愛い医学生の女の子に発音を矯正してもらう」という感じです。試験前日は息子の友人の誕生日会でドイツ人に絡みまくっていました。一番効果があったのは、可愛い医学生との発音矯正だったかもしれません(笑)。一番集中してできました。
大変でしたが、これでようやく医師労働許可の申請ができます。ドイツで永久医師免許を取るには、ここからさらに書類で医学教育の同等性を示すか(4ヶ月待ち、申請費用平均1000ユーロ)、Kenntnisprüfung(最近は約12ヶ月待ち、同600ユーロ)を受けて合格するかです。(下図①参照)

ところで、どうやって労働許可を申請するのか、教授に聞いても秘書さんたちに聞いても、みーんな「知らない」の一辺倒です。大丈夫だろうか……
鯖の燻製と胆石発作
今回の症例は一言で言うならば、「鯖の燻製と胆石発作」でした。
57歳女性、2時間前にパーティでGeräucherte Makreleを食べた後から上右腹部痛、嘔気、嘔吐×3回。腹痛は間歇性で右肩への若干の放散あり。発熱なし、下痢なし、その他の症状は否定。既往歴に特記事項はないものの、幼少期に扁桃腺の手術と、10年前にTOTAL(子宮・卵巣全摘)を施行されている。喫煙なし、機会飲酒、覚せい剤なし。既婚、夫と同棲、二人の子供。母が糖尿病65歳で死去。
前回と同様、食べた物(Geräucherte Makrele)が分からないので、患者さんにspell outして説明してもらうことに。魚の一種と言っていたので、「ははーん、わかったぞ、これは食中毒による急性胃腸炎症状だな」と、「急性胃腸炎疑い」として患者さんに説明し、カルテ記載もばっちり。
そして上級医との議論の際、
Oberarzt:Geräucherte Makreleって知ってる?
杉浦:知りません。患者さんに聞いたところ、燻製した魚の料理と言っていました。
Oberarzt:この魚、すごい脂が多いんだよね。
杉浦:(ああそういうことね、やっちまったな……)あ〜なるほど! そういうことですか! ピンときました。胆石発作!
Oberarzt:その通り! 急性胃腸炎だと合わない症状があるよね。
杉浦:発熱がないことですか?
Oberarzt:それはなくてもいい。
杉浦:下痢がないことですか?
Oberarzt:その通り!
杉浦:(最初は下痢出ないやん……)確かにそうですね。でも2時間前からの症状なので、これから下痢症状が出てくるのかと考えました。
Oberarzt:なるほど、たしかにその可能性もあるね。いずれにしてもこれから行う検査は?
という感じで疑い、病名を間違えていました(笑)。まあでも、もちろん胆石発作は鑑別診断に上げていましたし、その除外のための検査も説明していました。
あとは胆石発作のMurphy兆候の説明と、病状が重篤化した際の症状(黄疸)をドイツ語で説明して、その所見が出現する部位の名称(角膜)を答えます。(これはなかなかキツかったです)
杉浦:僕はもう、日本で循環器内科として10年働いているから、消化器疾患のことは忘れてしまいました。すみません。
Oberarzt:これは専門知識を問う試験じゃないから大丈夫だよ。
杉浦:じゃあなんで聞くんだよ!
他には、(検査室からの血小板低値の報告に対して)行うべき対応、疑うべき症状、考えられる原因とその対処、などを聞かれました。
ただ基本的には、あくまでも専門知識を問う試験ではなく、やはりよく言われているように、医師としてのコミュニケーション能力・会話能力を問う試験のようです。
<プロフィール>

杉浦 淳史(すぎうら・あつし)
ボン大学病院
循環器内科 指導上級医(Oberarzt)
論文が書けるインテリ系でもないのに「ビッグになるなら留学だ!」と、2018年4月からドイツのボン大学にリサーチフェローとして飛び込んだ、既婚3児の父。
杉浦 淳史
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