記事・インタビュー
このシリーズでは、多様な環境で働く6人の若手家庭医・総合診療医が、今考えていることや取り組んでいることを熱く語ります。
本連載も第4話となりますが、実は我々6人は、日本プライマリ・ケア連合学会の下部組織である「専門医部会 若手医師部門」の執行部を務めています。そこで今回、私の視点から学会活動を紹介し、「学会活動を通じて若手家庭医・総合診療医同士の連携を促していきたい」という思いをお伝えします。
アカデミックではない私が、どーして学会活動に関わるのか?
学会運営活動というと、研究や教育の領域にある程度精通した方々が中心となり推し進めていくもの、という認識が一般的でしょう。では、学術的にほとんど実績を持たない私がなぜ学会活動に関われているのでしょうか。
まず、日本プライマリ・ケア連合学会(以下、本学会)の懐の深さによるところが大きいでしょう。本学会は医師以外の職種も多く所属し、老若男女を問わずプライマリ・ケア発展のための幅広い意見や活動を尊重する気風が見られます。
もう一つは、本学会の下部組織である専門医部会 若手医師部門(以下、若手医師部門)の活動の特性が挙げられます。
「日本に家庭医療専門医を創る」べく2004年に発足した若手家庭医部会から脈々と継がれる若手医師部門の活動1)が、知識・経験以上に熱意を原動力としています。家庭医療・総合診療の発展への思いが先行しがちな私が、本学会や若手医師部門の気風にマッチして、活動に関わるに至ったのだと考えています。
私が抱く家庭医療・総合診療の発展への思いとは何か。端的に言いますと、「家庭医・総合診療医が地域で活躍してこそ、健康に留まらない社会的な豊かさをもたらしうる」と信じていることです。私はそのような効果的な働きを生み出せる家庭医・総合診療医の質・量を下支えする役割を、学会の中で担っていきたいと考えています。
若手家庭医・総合診療医への支援ってなにしてる?
「そもそも総合診療専門医とは?」という方には、本学会が制作したPR動画2)が理解の助けになるでしょう。
ここでは、図1. に示す3つのGenerality(総合性)が概説されています。ポイントは、「患者を多角的に診る」に留まらず、「家族・生活背景」や「地域全体」も視野に入れた総合的な医療の提供を目指していることです。これらは家族志向ケア、生物心理社会的アプローチ、地域志向ケアなどの枠組みで探求されています。
図1. 総合診療専門医のGenerality(総合性)
日本プライマリ・ケア連合学会「総合診療医という選択 総合診療医 紹介ビデオ」2)を参考に作成
このGeneralityを3~4年間の研修で磨いていくわけですが、十分な専門性を修得するには研修修了後に更なる研鑽を積む必要があります。
現に、英国の家庭医(GP: General Practitioner)は専門医を取得して最初の資格更新までの5年間にFirst53)というプログラムを用意し、さらなるスキルアップのために以下5点を支援しています。
First5による5つの支援
(1)学会との繋がり
(2)ピアサポートやメンタリングによるネットワーク
(3)資格更新
(4)キャリア
(5)生涯学習
英国と日本では家庭医・総合診療医の事情は大きく異なりますが、若手医師部門でも図2. に示す事業をもとに若手の成長や活躍を支援しています。私はこのうちの事業1、2に関わり、若手家庭医・総合診療医が有機的に繋がり成長・連携を促す仕組みづくりをしています。
仕事・家庭・学会活動のバランスどーしてる?
少なくとも本学会では学会活動は無報酬です。私に限らず学会へ積極的に関わる方々の多くが、学びや交流、社会貢献など金品以外に求めるものが動機になっていることでしょう。とはいえ、診療所の常勤医として働き、家庭(核家族)を持つ身として、この学会活動に割く時間・労力のやりくりは悩みどころです。
私の場合、現在取り組んでいる活動の内容・量は「趣味」に近い位置づけでバランスを取っています。仕事に関連した内容であるものの、プライベートな時間に「好きで」活動に取り組んでおり、例えるならば、自動車整備士が趣味で自分の車いじりをしたりサークル活動をしているようなものです。学会活動に関連した家での作業や休みの日の出張は、妻からは「好きなことをしている」という認識で、尊重してもらいつつ疎まれもする日々です(笑)。
仕事と学会活動が相互に高め合う循環は容易に想像できるでしょう。家庭と学会活動との間にも良い循環を作れたら理想だと考えています。例えば、学会活動から得た広い視点や多くの人とのつながりを、人間的豊かさとして家族へ還元することなどを模索していきたいです。
以上、若手医師部門とそこに関わる私の活動の紹介をさせていただきました。
2018年、新専門医制度のもと「総合診療専門医」が育成されることになりました。全国各地の後期研修プログラムを経て、2021年から専門医が誕生し始めます。
現在の若手家庭医・総合診療医たちは、その総合診療専門医たちを迎え、共に専門性やキャリアを醸成していくための鍵となる世代だと考えています。
全国各地で奮闘する若手家庭医・総合診療医のみなさんや、これから開業なども含めプライマリ・ケアの現場へキャリアチェンジを考える先生方も、その熱意と力をほんの少しずつでも持ち寄って、趣味のように楽しみながら、これからの家庭医療・総合診療を盛り上げていきませんか。興味を持っていただけた方は、ぜひ我々のFacebookページからのご連絡をお待ちしております。どうぞよろしくお願いします!
[参考文献]
1) 八藤英典: 若手家庭医部会の歩み. 家庭医療, Vol.15 No.2: 78-81, 2010.
2) 総合診療医という選択 総合診療医 紹介ビデオ
3) C Taylor: First5®—a UK initiative relevant to the global general practice community. European Journal of General Practice, Vol. 18: 229-232, 2012
<プロフィール>
「若手の家庭医/総合診療医、どーしてる?なにしてる?」
豊田 喜弘
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