記事・インタビュー

2026.01.14

【Doctor’s Opinion】大規模災害時の保健医療福祉活動に係る体制整備 ー都道府県保健医療福祉調整本部とDHEATー

富山県厚生部参事・医務課長事務取扱

小倉 憲一

令和6年能登半島地震の発生から約2年が経過する。同災害での富山県保健医療福祉調整本部の設置と富山県災害時健康危機管理支援チーム(DisasterHealthEmergencyAssistanceTeam:DHEAT)の派遣経験を踏まえて、当時、東海北陸ブロックDHEAT協議会幹事長となっていたことから令和6年10月21日に富山県内での地震発生を想定した第1回東海北陸ブロックDHEAT実働訓練を実施した。本稿ではその訓練概要や都道府県保健医療福祉調整本部、DHEAT等について紹介する。保健医療福祉調整本部の設置については、平成29年7月5日付け厚生労働省5課局部長通知「大規模災害時の保健医療活動に係る体制の整備について」(いわゆるマネジメント通知)により、「大規模災害発生時に参集する保健医療活動チームの派遣調整、保健医療活動に関する情報の連携、整理及び分析等の総合調整を行う行政組織の設置」が国から各地方自治体に求められることとなった。さらに令和4年7月22日付けの通知により、保健医療分野だけでなく福祉分野の支援を行うチームとの連携、調整を行う重要性も鑑み、現在では大規模災害発生時に各地方自治体で保健医療福祉調整本部が設置されることとなった。

また平成30年3月20日に厚生労働省健康局健康課長通知として「災害時健康危機管理支援チーム活動要領について」が発出され、DHEATが制度化されることとなり、令和4年3月29日付けの通知により各都道府県は保健医療調整本部機能の強化ならびに統括DHEAT (公衆衛生医師等)を被災都道府県から任命しておくこととされた。さらに令和4年3月からは一般財団法人日本公衆衛生協会にDHEAT事務局を置き、全国DHEAT協議会が、さらに令和5年3月以降、地方ブロックDHEAT協議会が組織化され体制の強化がなされてきた。このように体制整備が進められる中、令和6年1月1日16時10分に最大マグニチュード7・6の能登半島地震が発生した。この能登半島地震では厚生労働省等の調整により34自治体から22チーム104班(1班あたり医師や保健師、事務職等の5人で構成)のDHEATが派遣され、石川県庁や能登北部保健福祉センター(保健所)、珠洲市、輪島市、穴水町、能登中部保健福祉センター(保健所)等の被災自治体で災害マネジメント支援等の活動を行った。令和6年能登半島地震を踏まえた、今回の富山県での実働訓練では災害医療現場で用いられるCSCA(指揮と連携、安全、情報伝達、評価)を活動の中心として、発災後3日目までの超急性期の全体像の把握を目標とした。東海北陸ブロック内の各県DHEATが富山県保健医療福祉調整本部および地域保健医療福祉調整本部となる保健所や市町保健福祉部へ派遣され、DHEATとしてCSCAの初動対応や、行政の二層または三層構造での避難所等の被災者の把握(災害時保健医療福祉活動支援システム–D24H–の活用)等を行った。都道府県保健医療福祉調整本部の本部長を支援する統括DHEATや、派遣されたDHEAT全体の司令塔となるDHEAT都道府県調整本部(仮称)、都道府県や地域保健医療福祉調整本部等の被災地域でのDHEAT先遣隊の役割を明確化していくことは喫緊の課題であった。

本実働訓練では想定を省略したが、実際の大規模災害時には、都道府県保健医療福祉調整本部にDMATや日赤救護班、DPAT 、JMAT等、さまざまな保健医療福祉活動チームのリエゾンやコーディネーターが参加することになる。また本訓練ではDMATが医療を、DHEATが保健、公衆衛生の中心を担っていくこととした。都道府県保健医療福祉調整本部に入ったDHEATの役割は統括DHEATへの支援と、DHEAT都道府県調整本部での活動に分けて考える必要がある。DHEAT都道府県調整本部は厚生労働省のDHEAT事務局や保健師チームの派遣調整担当と連携しながら避難所数や被災者数等により、現場へ派遣するDHEATの班数やチーム数、派遣期間等を調整していくとともに、派遣されるDHEAT全体のロジスティックとしての役割を果たしていくこととなる。このDHEAT都道府県調整本部の体制が整備された後は、現地に派遣されたDHEATや保健所または市町村を通じて、避難所や在宅等の被災者に関する情報等、保健、公衆衛生に関するニーズを同本部で集約化していくこととなる。高齢者施設や障害者施設等の福祉に関する情報については保健医療福祉調整本部の平時からつながりのある所管課が集約化していくことになる。富山県DHEATは令和6年能登半島地震において現地に最初に入ったDHEAT先遣隊となった。DHEAT先遣隊については隣県等の利点を生かした、“顔の見える関係”にある地方ブロック等からの優先的な派遣が有効である。令和6年能登半島地震後、同年10月厚生労働省健康・生活衛生局健康課長通知によりDHEAT活動要領の一部が改正され、DHEAT先遣隊を災害発生の急性期(概ね48時間以内)に派遣することにより、被災都道府県等の被害状況等に係る迅速な情報収集、保健医療福祉調整本部の速やかな設置及び運営の支援を目的としたDHEAT先遣隊派遣事業を実施することとされた。令和6年能登半島地震でのDHEAT派遣を通じて、発災早期から都道府県保健医療福祉調整本部または保健所等に入ったDHEATが保健師チーム等と連携して保健、公衆衛生を担っていく必要性を強く感じた。

小倉 憲一  おぐら・けんいち

阪神・淡路大震災後、日本DMAT隊員となり東日本大震災等を経験。米国ピッツバーグ大学大学院災害管理センター勤務後、救命救急センター長として富山県でドクターヘリを導入し、その後3年間、県新型コロナ感染症対策本部で入院調整等を担った。令和6年能登半島地震では富山県保健医療福祉調整本部を起ち上げ、DHEATとして石川県支援に入った。現在、富山県で地域医療構想や医師確保等に関わっている。

※ドクターズマガジン2025年12月号に掲載するためにご執筆いただいたものです。

小倉 憲一

【Doctor’s Opinion】大規模災害時の保健医療福祉活動に係る体制整備 ー都道府県保健医療福祉調整本部とDHEATー

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