記事・インタビュー

2018.02.25

【Doctor’s Opinion】DPCが日本の医療にもたらしたものは何か~医療ビッグデータの行方~

産業医科大学 医学部 公衆衛生学教室 教授
松田 晋哉

 平成28年度に全47都道府県が地域医療構想を作成した。今後、厚生労働省から提供されている資料集(データブック)と病床機能報告の結果を踏まえながら、各都道府県及び各構想圏域で機能別病床数の配分や連携の方法など、医療提供体制のあり方を検討することが求められる。

このデータブックには二次医療圏ごとのDPC病院の診療実績、NDBから作成された各種の集約データ(5疾病5事業に対応した医療の二次医療圏別自己完結率、性年齢を補正した各医療行為の提供状況)、消防庁データに基づく救急搬送の状況、そしてDPCとNDBを活用して求めた二次医療圏単位での病床機能別にみた必要病床数の将来推計などが記録されている。

地域医療構想は医療費適正化のための病床削減を目的としたツールであるとの誤った認識が一部で広がっているが、そのような目的で作成されたものではない。少なくとも一般病床については現状追認方式、すなわち現在の傷病別・性別・年齢階級別の入院受療率が将来も続くとしたらどのくらいの患者数になるのかということが推計されたにすぎない。そして、この傷病別の推計にDPCのロジックが応用されていることが重要である。

今回、傷病別の入院受療率の推計を行うに際して、筆者らの研究班では、NDBに格納されているDPC以外のレセプトについても一入院にまとめ、その上でDPCコーディングを行うという方法で傷病別の推計を行うロジックを開発した。DPCの一般化が行われたのである。これは、DPCを急性期から慢性期まで全ての入院形態に支払い方式として導入することを目的としたものではない。筆者たちがDPCの本来の目的である医療情報の標準化と可視化を一般化したということが重要なのである。

筆者らの研究班ではこれまでDPCデータの枠組みを使った病院管理手法やHealth Service Research(HSR)の方法論を提案し、それを年間10回程度開催されるセミナーや報告書を含む各種メディアで広める努力を行ってきた(図)。その結果、多くのDPC病院のマネジメント職が習得したスキルを活用して実務への応用を試みているし、また、多くの研究者がDPCデータを活用した臨床研究や政策研究を行い、その結果が国内外の学術誌に数多く掲載されるようになっている。こうしたスキルは今後地域レベルで整備された情報の分析にも多く活用されるようになるだろう。また、筆者らはDPCで積み上げてきたビッグデータの分析手法を介護データにも適用し、その可能性をすでに実証している。データに基づく医療・介護政策の実施、国レベル・地域レベルでの政策と各医療・介護施設の経営のより良い整合性が図られる体制づくり、それがこの研究に関わってきた筆者らの最終的な目的である。

いずれにしても、今後の医療政策のポイントはまさにデータに基づく管理である。地域医療構想調整会議を意見集約の場として上手に活用し、そしてその検討結果を地域医療計画・介護保険事業計画を策定していく仕組みづくりが重要になる。各地域の医療関係者の積極的な関与とリーダーシップが求められている。

まつだ・しんや

1985年産業医科大学卒。1992年フランス国立公衆衛生大学校 Ecole Nationale de la Sante Pablique 卒業を経て、1997年産業医科大学公衆衛生学助教授に就任、1999年より現役。著書『基礎から読み解くDPC 第3版』(2011)、『医療のなにが問題なのか』(2013)、『欧州医療制度改革から何を学ぶか』(2017)など。

 

※ドクターズマガジン2017年12月号に掲載するためにご執筆いただいたものです。

松田 晋哉

【Doctor’s Opinion】DPCが日本の医療にもたらしたものは何か~医療ビッグデータの行方~

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