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2024.07.08

書評『家庭医からER医まで 高齢者に寄り添う診療 学ぼうGeriatric Mind』

民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。

医学書を読むのが大好きな先生方が初学者に向けた医学書解説・比較の医学書レビューと、日々医師のために医学書を作る出版社の担当者がおすすめの良書をこちらで集めて発信していきます。

購入先のリンク(Amazon)も掲載していますので、お気に入りの書籍があればご購入ください。

レビュー:三谷雄己先生(踊る救急医先生)

  • 発熱がないのに、入院した後に尿路感染症が判明した…まさか感染症だったなんて…
  • お腹を触っても痛く なかったのに、消化管穿孔だった…症状が曖昧すぎる…

これらは日々ERやICUで高齢者医療に関わる仕事をする中で感じる悩みや疑問点であり、私自身も高齢者医療に関する学びを深めるために本を読み漁っていたところ、この一冊に出会いました。

本書を読むことで、今後高齢者医療に関わる際に自信を持って対応することができます!

今回、高齢患者に対応するために必要なコミュニケーションスキルと知識を学びたい時に読むべき一冊として自分が自信を持っておすすめするのがこちらです。

家庭医からER医まで 高齢者に寄り添う診療 学ぼうGeriatric Mind
許 智栄 (著), 有吉 孝一 (監修)/ 金芳堂 発行
価格:4,180円(税込)
発刊:2020/6/5
Amazon

書評『家庭医からER医まで 高齢者に寄り添う診療 学ぼうGeriatric Mind』
    1. 1.本書のターゲット層と読了時間
    2. 2.本書の特徴
    3. 3.個人的総評
    4. 4.おすすめの使い方・読み進め方
    5. 5.まとめ
    6. 6.医書レビュー

1.本書のターゲット層と読了時間

【ターゲット層】
・すでに高齢者の医療に関わっている、学び直しをしたい医療者
・医学生からベテラン医師 まで、幅広い層

【推定読了時間】
・6時間程度

2.本書の特徴

本書は、許 智栄先生が執筆された、

●高齢者医療における複雑な問題をシンプルにわかりやすく解説
●初心者からベテランまで、幅広い層に適した内容
●高齢者医療に対する愛情と尊敬にあふれる記述

が特徴の一冊です。

本書を読むことで学べる項目は特徴的なものをピックアップすると、このようになります。

【本書で学べること】
●高齢者特有の症状に対する診療方法
●アプローチ、マネジメントに関する具体的なアクションプラン
●Geriatric Mindをはじめとする高齢患者とのコミュニケーションスキル

これらは高齢者医療に関わる先生方にとって、今後どのような診療科に進んでも学んでおくべき大切な事項であると思います。

3.個人的総評

本書の特徴はなんと言っても、Geriatric Mindという言葉の下、高齢者への愛情と尊敬の念があふれている点です。

初心者がまず最初に読んで基本的なことを理解するのに利用しても良いし、すでに高齢者の医療に関わっている医療者が再度学び直したい時に読むのにも最適であると感じました。

「高齢者医療はできれば避けたいが避けて通れない時代」という消極的な選択であった私でしたが、この本に出会って、先進的な分野であり、すばらしいトレーニング法があると知ることができました。

一冊を通じて高齢者医療への愛情と尊敬を感じることができ、自分の医療の質が上がった実感があります。

もちろん、アプローチやマネジメントをはじめとする知識も豊富に掲載されています。

具体的には高齢者医療における複雑な問題をエビデンスに基づきながら、シンプルにわかりやすく丁寧に説明しています。

例えば、高齢者は痛みを軽く報告する傾向があり、認知症患者も多いことから、元気がない・痛みがない・発熱がないといった症状が多く見られます。

さらに、認知症やせん妄を疑う際のポイントや、曖昧な症状に対して時間を味方にしながら診断を進めていく方法も具体的に示されています。

また、高齢者医療において特に難しいと感じるのは、コミュニケーションの取り方ですよね。

本書では、複合文書を避け、質問を一つだけに絞り、ゆっくりとしたペースで話しかけるなどの具体的なコミュニケーションスキルが紹介されていました。

診療のポイントに加え、ここまでコミュニケーションに踏み込んだ書籍はなかなか珍しく、非常に実践的な内容となっています。

私自身本書を読んでからは、焦る気持ちを抑え、ポイントを押さえた会話ができるようになりました。

一方で、本書の内容が非常に充実しているため、一度に全てを理解するのは難しいかもしれません。

そのため、何度も読み返しながら理解を深めることが必要です。しかし、その努力は必ず報われると感じました。

これらは本書の個人的な評価であり、しかも何様だよと言われてしまうことは重々承知ではありますが、自分は、
本書は医学生からベテランまでぜひ手に取っていただきたい、高齢患者に対応するために必要なコミュニケーションスキルと知識を学びたい時に読むべき一冊である!と感じました。

4.おすすめの使い方・読み進め方

【本書のおすすめの読み方・活用方法】
●これまで悩んだ診療を思い出しながらまず冒頭を読んでみる!
●チャプター3で具体的なよくある症状を学ぶ!
●その後は経験した症例の前後で読み直して復習!

個人的におすすめの使い方をご紹介します。

私個人の意見としては、高齢者救急診療の最も肝となるポイントが、チャプター1「初期対応のコツ」の冒頭3つでよく述べられていると感じたので、これらをまずはしっかりと読んでみることで、総論的な内容を学ぶことができると思います。

それらに加えて、よく救急外来で悩むような「元気がない」「動けない」といったよくある症状の診かたがチャプター3にまとめられています。

これらを学ぶだけでも高齢者救急診療に対する苦手意識を払拭することができると思います。

そのため、よくある症状の箇所はぜひ一度通読してみていただきたいと思います。

そのあとは実際の症例を通じてインプットとアウトプットをたくさん経験していきましょう。

5.まとめ

本書は高齢患者に対応するために必要なコミュニケーションスキルと知識を学びたい時に読むべき一冊である!

まとめると、本書は高齢者医療についてわかりやすく学ぶことができる、高齢者医療に関わる全ての医師に本当におすすめの一冊です。

この一冊を通じて学ぶことで、今後高齢者医療に関わる際に自信を持って対応することができます!

今後の学びや業務をより良いものにしたい方にはぜひ手にとっていただきたい一冊です◎

以下に要点や基本事項をまとめましたので、購入する際には参考にしていただければ幸いです。

6.医書レビュー

基本情報 家庭医からER医まで 高齢者に寄り添う診療 学ぼうGeriatric Mind
著者:許 智栄
出版社:金芳堂
発行年月日:2020/6/5
ターゲット層

●すでに高齢者の医療に関わっている、学び直しをしたい医療者
●医学生からベテラン医師 まで、幅広い層

推定読了時間

6時間程度

本書の特徴

●高齢者医療における複雑な問題をシンプルにわかりやすく解説
●初心者からベテランまで、幅広い層に適した内容
●高齢者医療に対する愛情と尊敬がにあふれる記述

本書で学べること

●高齢者特有の症状に対する診療方法
●アプローチ、マネジメントに関する具体的なアクションプラン
●Geriatric Mindをはじめとする高齢患者とのコミュニケーションスキル

評価
購入先

本書の読み方・活用方法

●これまで悩んだ診療を思い出しながらまず冒頭を読んでみる!
●チャプター3で具体的なよくある症状を学ぶ!
●その後は経験した症例の前後で読み直して復習!

本書のまとめ 本書は高齢患者に対応するために必要なコミュニケーションスキルと知識を学びたい時に読むべき一冊である!

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★今回の書籍以外にも、踊る救急医先生の医学書レビューはこちらのページで読むことができます!
想定読者や各診療科ごとにわかりやすくまとめられているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
詳細はこちら≫https://dancing-doctor.com/2021/03/31/review-reader/

<プロフィール>

三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター

立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。


【踊る救急医】
Twitter https://twitter.com/houseloveryuki
ブログ https://dancing-doctor.com/

三谷 雄己【踊る救急医】

書評『家庭医からER医まで 高齢者に寄り添う診療 学ぼうGeriatric Mind』

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