記事・インタビュー
民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。
医学書を読むのが大好きな先生方が初学者に向けた医学書解説・比較の医学書レビューと、日々医師のために医学書を作る出版社の担当者がおすすめの良書をこちらで集めて発信していきます。
購入先のリンク(Amazon)も掲載していますので、お気に入りの書籍があればご購入ください。
レビュー:三谷雄己先生(踊る救急医先生)
- 臥位になると呼吸困難症状が軽減しているようだ…なぜだろう?
- 「腰痛+血尿だから尿管結石!」でいいんだっけ?
これらは日々ERで後輩と仕事をする中で耳にする悩みや疑問点であり、私自身、救急外来ではたくさんの疑問を持っていたことを思い出しました。
本書は、昨年の救急医学会シーズンに出版された医学書の中で、表紙や帯が特に興味を引いたため購入してみました。
「ER虎の巻」という本書を読むことで、ガイドラインに記載されていない”病態生理の学習”を踏まえた「臨床におけるアクションプランを理解」することができます。
今回、冒頭のような救急外来における臨床疑問を、根拠をもって解消することができるようになる一冊として自分が自信をもっておすすめするのがこちらです。
- 書評『ER虎の巻 ピットフォールから学ぶ救急診療の要』
1.本書のターゲット層と読了時間
【ターゲット層】
・救急診療の幅広い知識(特にピットフォールへの対処)を習得したい初期研修医や救急科専攻医
【推定読了時間】
・8~10時間
2.本書の特徴
本書は、安田英人先生、柏浦正広先生、新里祐太朗先生が編集・執筆された、
●レジデントと上級医の対話形式で、読みやすくレベルアップに繋がる
が特徴の一冊です。
本書を読むことで学べる項目は特徴的なものをピックアップすると、このようになります。
●ピットフォールを中心に据えた切り口による、疑問点とその答え
●救急外来や当直でよく遭遇する疾患・症状ごとに、必要な知識やピットフォール回避の方法
これらは研修医の先生方にとって、今後どのような診療科に進んでも学んでおくべき大切な事項であると思います。
3.個人的総評
本書の特徴はなんといっても、病態生理について解説した後に、臨床のアクションプランについて詳しく説明されている点です。
他のハンドブック と比較しても、病態、生理、解剖の学習後に具体的な治療に進む流れが特徴的だと感じました。
理屈を学んだ後に治療を学ぶため、「なぜその診断や治療を選択するのか」という流れを理解することができます。専門研修医や若手医師 が押さえるべき診断・治療・患者管理の要点がクリアになったと感じることができるのではないでしょうか。
また、救急外来や当直でよく遭遇する疾患・症状ごとに、必要な知識やピットフォール回避の方法を解説しています。
ピットフォールとは”落とし穴”という意味があり、そして一般の書籍では学べないピットフォールが臨床現場には数多く存在しているのです…!
私自身が研修中に経験したピットフォールと似た症例が 掲載されており、これらを事前に学ぶことで救急患者への対応力が上がり、ひいては救急診療の質向上に繋がると感じました。
その他、レジデントと上級医の対話形式で構成されており、読みやすくレベルアップに繋がる医学書だと言えます。
一方で、あくまで個人的な印象ではありますが気になった点としては、複数の著者による執筆で文体が一部異なり、読みにくい部分がありました。
また、重要なポイントの強調が少なく、どこに注目すべきかがわかりにくい点が少し残念でした。
冒頭の要点や最後の要約が視覚的にもわかりやすく整理されていればより良かったと思います。
本書を読む際には、章ごとに内容を箇条書きにするなど整理して、重要なアクションプランを一目で理解しやすくする工夫をすることがおすすめです。
これらは本書の個人的な評価であり、しかも何様だよと言われてしまうことは重々承知ではありますが、自分は
本書は救急外来における臨床疑問を、根拠を以て解消することができるようになる一冊である!
と感じました。
4.おすすめの使い方・読み進め方
●まずは目次を通じて興味のある分野をつまみ食い感覚で読んでみる
●読んだ部分の中で、大切な部分をまとめてみる(箇条書きにしてみるのも良いでしょう!)
●その後は経験した症例の前後で読み直して復習!
個人的におすすめの使い方をご紹介します。
私個人の意見としては、まずは目次を参考に関心のあるページから読み進めるのがおすすめです。
医学書をじっくり読む時間がある場合は通読も一つの方法ですが、本書はピットフォールごとにポイントを解説していることから、興味のある章から読み始めることで楽しく読むことができると感じました。
自身が最近経験した症例や苦手としている箇所を中心に読み進め、実際の臨床にどう活かすかを考えながらメモを取る、また本を参照しやすいように目印をつけておくと、実践に役立ちます。
特に、各章や症例ごとに、箇条書きなどを用いてすぐに見返せるようなまとめを作成しておくことがおすすめです。
その後は経験した症例の前後で読み直して復習しましょう。
インプットとアウトプットをたくさん経験することで、ピットフォールを未然に回避することができるようになること間違いなしです。
5.まとめ
本書は救急外来における臨床疑問を、根拠を以て解消することができるようになる一冊である!
まとめると、本書は救急外来における臨床疑問について、ピットフォールを交えてわかりやすく学ぶことができる本当におすすめの一冊です。
この一冊を通じて学ぶことで、
今後ガイドラインに記載されていない“病態生理の学習”を踏まえた「臨床におけるアクションプランを理解」することができます。
今後の学びや業務をより良いものにしたい方には、是非手に取っていただきたい一冊です◎
以下に要点や基本事項をまとめましたので、購入する際には是非参考にしていただければ幸いです。
6.医書レビュー
この記事を読んで参考になった方、面白いと思ってくださった方は今後も定期的に記事を更新していきますので応援の程よろしくお願いいたします!
みなさまのリアクションが今後の記事を書くモチベーションになります。
★今回の書籍以外にも、踊る救急医先生の医学書レビューはこちらのページで読むことができます!
想定読者や各診療科ごとにわかりやすくまとめられているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
詳細はこちら≫https://dancing-doctor.com/2021/03/31/review-reader/
<プロフィール>
三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター
立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。
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