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2023.10.04

書評『国家試験後の臨床 レジデントが学ぶべき100のこと』 臨床のリアルと研修医生活で起こる不安に対処できる1冊

民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。

医学書を読むのが大好きな先生方が初学者に向けた医学書解説・比較の医学書レビューと、日々医師のために医学書を作る出版社の担当者がおすすめの良書をこちらで集めて発信していきます。

購入先のリンク(Amazon)も掲載していますので、お気に入りの書籍があればご購入ください。

レビュー:三谷雄己先生(踊る救急医先生)

  • もうすぐ研修医としての生活が始まる…不安ばかりだけど大丈夫だろうか…
  • 研修医として働き始めたけれども、国家試験で学んだことと差が大きく難しい…

これらは、初期研修中の先生と仕事をする中でよく耳にする悩みや疑問点であり、

私自身もこの悩みを解消しようとして様々な本を読み漁っていたところ、

『国家試験後の臨床 レジデントが学ぶべき100のこと』(渡部晃平著/日本医事新報社)に出合いました。

本書を読むことで、各診療科の基本知識はもちろん、抗菌薬や心肺蘇生など、どの診療科に行っても必ず必要となるような医学知識を勉強することができ、研修医生活が自信をもって過ごせるようになります!

今回、臨床のリアルを知り、研修医生活で起こりうる不安に対処するために読むべき一冊として自分が自信をもっておすすめするのがこちらです。

国家試験後の臨床〈レジデントが学ぶべき100のこと〉
渡部 晃平 (著)/ 日本医事新報社 発行
価格:5,500円(税込)
発刊:2023/3/14
Amazon

書評『国家試験後の臨床〈レジデントが学ぶべき100のこと〉』
    1. 1.本書のターゲット層と読了時間
    2. 2.本書の特徴
    3. 3.個人的総評
    4. 4.おすすめの使い方・読み進め方
    5. 5.まとめ
    6. 6.医書レビュー

1.本書のターゲット層と読了時間

【ターゲット層】
・初期臨床研修が始まったばかりで、何から勉強していいかわからない研修医
・各診療科をローテーションする中で、壁にぶち当たったことが何度もある研修医

【推定読了時間】
・16~18時間程度

2.本書の特徴

本書は、渡部晃平先生(洛和会音羽病院・総合内科)が執筆された、

【本書の構成】
●著者が研修医時代に遭遇した困難をもとに書かれ、リアルな経験に基づいている
●科に縛られず、さまざまな視点や切り口で医療現場をとらえている

ことが特徴の一冊です。

本書を読むことで学べる項目は特徴的なものをピックアップすると、このようになります。

【本書で学べること】
●検査からデータの扱いにまでわたる、研修医に必要な最低限の知識
●授業では教えてくれない、現場のリアル

これらは研修医の先生方にとっては今後どのような診療科に進んでも学んでおくべき大切な事項であると思います。

3.個人的総評

本書の特徴はなんと言っても、実臨床を経験する中で、誰もが戸惑いがちなポイントを抜き出し、実務において非常に役に立つ点です。

著者である渡部先生が卒後10年目の医師の立場で「現場で使える知識」をシェアしてくださっています。

特に、DICの解説や、抗菌薬治療におけるMICの解説など、難しい概念も生理学に基づいてスッキリと解説されており、本当に読みやすいと感じました。

また、多くの医師が苦手意識を持つ、療養型病院や施設入所、介護保険、DPCの知識といった、初期研修終了後、必ず必要となるこれらの内容にも触れていることが、非常に素晴らしいと思いました。

このような知識を各診療科の先生方が、専攻医一年目から全員スタンダードとして身につけていると、いかにスムーズなマネジメントができるのか…と想像すると本当に楽しみです。

加えて、無料の電子版が付属しており、巻末のシリアルコードを登録することで、本書の全ページをスマホやタブレットで読むことができます。

忙しい勤務の隙間時間にも、辞書的にいつでもどこでも確認できるので非常に便利です。

そんな本書は、著者自身の研修医時代に抱えた苦悩がつまった一冊です。

彼は自称「非常に出来の悪い研修医」として、国家試験で学んだ知識と実際の臨床とのギャップに困惑し、うまく対応できなかったそうです。

そこで、自らが学んだ内容を整理し、自分自身が理解できる形で、ブログで発信することを始め、仕事に適応するための道筋を見つけていったという背景があります。

私自身も実践している、「学びながら発信する」という行為そのものに非常に共感を覚えました。

一方で、あくまで個人的な印象ではありますが気になった点としては、

●蘇生の現場でのチームビルディング
●ARDSにおける呼吸管理の筋弛緩薬について

などについては、自分が日々臨床をしている立場から見ると少し違和感を覚える記述があるということです。

自分自身が普段、救急治療をある程度専門としているからという点もあると思いますが、それ以外の項目についても、もしかしたら少し誤解を生んでしまう記述があるかも…と思うような表現がいくつかありました。

この点については、書籍の内容を全て鵜呑みにするのではなく、“自分自身でそれぞれが学んだ内容について、再度吟味して疑問に思った点は論文や文献にあたって調べ直す”ということが大切です。

自分自身で調べ直すことによって知識を深いものにできるため、学ぶ過程で少し悩ましいと感じた部分は、再度調べ直すことをおすすめします。

これらは本書の個人的な評価であり、しかも何様だよと言われてしまうことは重々承知ではありますが、自分は

本書は初期研修に必要な、リアルな現場の知識を身につけるのに最適な一冊である!

と感じました。

4.おすすめの使い方・読み進め方

【本書のおすすめの読み方・活用方法】
●まずは目次を確認、内容を把握しよう!
●興味のある分野は目次を通じてつまみ食い感覚で読んでみる
●その後は経験した症例の前後で、辞書的に読み直して復習!

個人的におすすめの使い方をご紹介します。

本書は非常に網羅性が高く、通読するにはかなり時間がかかってしまうかもしれません。

そのため、一度で全てを把握しようとすると非常に負荷が高くなる可能性はあります。

初期研修の初めに目次などを参考に全体を軽く通読した上で、「今後、初期研修の二年間のうちにこれらをすべてマスターするんだ」という気持ちで、二年間でわからなかったことや、研修終了後壁にぶつかった際にこの書籍に立ち戻って勉強するという方法がおすすめです。

例えば「辞書代わり」として普段の臨床での知識の蓄積、そして壁にぶつかった時、一番初めに確認するべき書籍として活用するなどで、広く網羅的なこの書籍の真価が発揮されること間違いなしだと思います。

そのあとは実際の症例を通じてインプットとアウトプットをたくさん経験していきましょう。

5.まとめ

本書は初期研修に必要な、リアルな現場の知識を身につけるのに最適な一冊である!

研修医生活で起こりうる不安に対処するために読むべき一冊である!

まとめると、本書は授業では習わない初期研修で身につけるべき知識について、網羅的に学ぶことができる初期研修医には本当におすすめの一冊です。

この一冊を通じて学ぶことで、

各診療科の基本知識はもちろん、抗菌薬や心肺蘇生など、どの診療科に行っても必ず必要となるような医学知識を勉強することができ、研修医生活が自信をもって過ごせるようになります!

今後の学びや業務をより良いものにしたい方には是非手にとっていただきたい一冊です◎

以下に要点や基本事項をまとめましたので、

購入する際には是非参考にしていただければ幸いです。

6.医書レビュー

基本情報 タイトル:国家試験後の臨床 レジデントが学ぶべき100のこと
著:渡部晃平
出版社:日本医事新報社
発行年月日:2023/03/14
ターゲット層

●初期臨床研修が始まったばかりで、何から勉強していいかわからない研修医
●各診療科をローテーションする中で、壁にぶち当たったことが何度もある研修医

推定読了時間

16-18時間程度

本書の特徴

●著者が研修医時代に遭遇した困難をもとに書かれ、リアルな経験に基づいている
●科に縛られず、さまざまな視点や切り口で医療現場をとらえている

本書で学べること

●検査からデータの扱いにまでわたる、研修医に必要な最低限の知識
●授業では教えてくれない、現場のリアル

評価
購入先

本書の読み方・活用方法

●まずは目次を確認、内容を把握しよう!
●興味のある分野は目次を通じてつまみ食い感覚で読んでみる
●その後は経験した症例の前後で、辞書的に読み直して復習!

本書のまとめ

本書は初期研修に必要な、リアルな現場の知識を身につけるのに最適な一冊である!

研修医生活で起こりうる不安に対処するために読むべき一冊である!

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この記事を読んで参考になった方、面白いと思ってくださった方は今後も定期的に記事を更新していきますので応援の程よろしくお願いいたします!

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★今回の書籍以外にも、踊る救急医先生の医学書レビューはこちらのページで読むことができます!
想定読者や各診療科ごとにわかりやすくまとめられているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
詳細はこちら≫https://dancing-doctor.com/2021/03/31/review-reader/

<プロフィール>

三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
広島大学救急集中治療医学所属
広島大学病院 救急科 医科診療医
日本医師会公認健康スポーツ医
日本救急医学会認定ICLSインストラクター

立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。


【踊る救急医】
Twitter https://twitter.com/houseloveryuki
ブログ https://dancing-doctor.com/

三谷 雄己【踊る救急医】

書評『国家試験後の臨床 レジデントが学ぶべき100のこと』 臨床のリアルと研修医生活で起こる不安に対処できる1冊

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