記事・インタビュー

2021.11.10

製薬企業でクリニカル・スペシャリストとして働く

製薬企業でクリニカル・スペシャリストとして働く

約20年に亘り、医師の転職を支えるヒューマンダイナミックス社。様々な医師と製薬会社・CRO(Contract Research Organization)との縁を結び、多くの転職を成功に導いてきました。
実際に、メディカルドクターへの転職を志す場合には、どのような準備やスキル、心構えが必要なのでしょうか。今回は製薬会社の中で「美容医療」をメインで取り扱うアラガン・ジャパン社でクリニカル・スペシャリストとして勤務されている劉 振軍先生に業務内容ややりがいについて伺いました。

<お話を伺った先生>

劉 振軍(Dr. Zhenjun Liu)
1988 年 北京大学医科部 卒業
2000年 神戸大学医学部博士課程 修了
2000-2004 年 J&J、株式会社コッドマン
2004-2011 年 日本メドトロニック株式会社 ニューロ事業部
2011-2017 年 アラガン・ジャパン株式会社 メディカルアフェアーズ本部
2018-2020 年 同フェイシャルエステティック事業本部
2021年 同Allergan Medical Institute 部

Q:美容医療とはどういうものかについて教えてください。

A:風邪をひいたり怪我をした時などに疾患や外傷を治療する一般的な医療と異なり、美容医療は、健康な人が自分のありたい姿に近づくサポートをする、充実した生活を送るために受ける医療です。

つまりポジティブな医療だと思います。単に自己満足や虚栄のためにあるのではなく、我々の心の底に潜む外見的なコンプレックスを払拭し、より積極的な人生を歩むためのものです。美容医療には、人と人との繋がりをより強固にする力もあるのではないかと考えています。

Q:脳神経外科がご専門のようですが、メディカルエステティックス・カンパニーではグローバルでトップであるアラガン・ジャパンに入社された動機を教えてください。

A:元々、美容医療に興味がありました。そのような中、日本で美容注入治療の製品の販売、情報提供活動を適正に行っている製薬会社の存在を知り、私もそれをより多くの方々に知っていただく一助になりたいと考え入社を決めました。

人に物事を教えることにも興味がありましたので、クリニカル・スペシャリストの業務内容はとても私に合っていると考えましたし、実際に業務を行っている今も同様に感じています。

Q:現在担当されているお仕事の内容を教えてください。

A:クリニカル・スペシャリストとして、当社の美容注入医療に興味を持たれ、診療に取り入れたいとお考えになっている医師の方を対象にトレーニングを提供しています。

AMI(Allergan Medical Institute™)チームの一員として、顔のエイジング治療に対する先生方の科学的知識、治療の診断力や注入技術の向上のためのお手伝いをさせていただいています。チームは、医学バックグラウンドのあるメンバー 4 名で構成されており、最新の治療アプローチや美容のトレンドに関する学習を通じて、専門性の高い情報提供活動を行っています。

我々の活動内容としては、医療従事者向けに、当社製品の使用方法の説明や模型を使ったデモンストレーションを行ったり、実際に医療機関でトレーニングとして医師の施術を拝見し、科学的根拠に基づいたアドバイスやディスカッションを行ったりするなど、臨床スキル向上のための情報提供活動を行っています。
それが患者満足度の向上にも繋がると信じ、プライドを持って活動しています。

Q:1 日の大まかなスケジュールは、どのようなものでしょうか?

A:朝起きてまずパソコンを開き、メールやスケジュールのチェックを行います。

先生方のトレーニングは、昼または夕方頃に実施することが多いため、メールチェックが終わった後に出かける準備をします。そして昼頃に医療機関を訪問し、平均 2 時間ほどをかけて、トレーニングを受講する先生と解剖学やエイジング、顔の診断方法などに関してディスカッションをし、また先生方の注入施術を実際に拝見し、必要に応じて更なる改善のための情報提供を行います。

同様の流れで夕方にも別の医療機関でトレーニングを行った後、帰宅する、という流れになります。
基本的には、毎日外に出て、先生方に対して情報提供を行い、ディスカッションやトレーニングを実施しています。

Q:仕事をするためには専門分野以外に、どのような知識やスキルが必要でしょうか。また、劉先生は入社後にそれをどのように習得されましたか?

A:何よりも知識習得がとても重要です。顔面の解剖学やエイジングのプロセスについて、先ずは学んでいただく必要があります。

その後、解剖学やエイジングを踏まえた「顔の適切な診断方法」や「注入方法」について体系的に、そして科学的根拠に基づいて学んでいただきます。また、美容医療は自由診療であることが多く、保険診療とは異なる形での患者さんとのコミュニケーションがとても重要になります。

コミュニケーションスキル向上の一環として、適切なカウンセリング方法などに関する技術習得のための努力も惜しむことはありません。

入社時点でこれらの知識がなくても大丈夫です。私も入社時には、ほとんど美容医療や美容注入治療については知りませんでした。アラガン・ジャパンには、国内外にトレーニングチームがおり、カリキュラムに沿って学習を進めてもらえます。また、他のクリニカル・スペシャリストに同行し、OJT として現場で知識ならびに技術を習得するための指導を行ってもらえることや、クリニカル・スペシャリスト間での情報交換も頻繁に行っていますので、これらも学習スピードを速めてくれると思います。

Q:入社されてから、業務について悩まれたことはありますか。また、それにどのように対処されましたか?

A:医師からの質問に対してすぐに回答できない時は、先生方のニーズに応えられずに申し訳なく、悔しい思いをすることがあります。しかし、そのような場合は正直に分からない旨を伝え、当日中または後日しっかりと調べた後に回答させていただきます。

悔しい思いをした活動を通じて、知識が一つ一つ補完されていき、私自身の自信に繋がっています。

Q:今の業務で、興味が持てたり楽しさを感じたりされる点について、御社あるいは現在のチームのカルチャーの観点からはいかがですか?

A:アラガン・ジャパンはとてもアットホームで、皆の距離が良い意味で近いと考えています。

AMI チーム内はもちろん、他部署の方々とも気軽にやり取りをさせていただくことが多いです。皆、美容医療を通じて患者さんを、そして日本を明るくしたい、という同じ志を持って活動しており、目的が一致しているためか、互いの活動にとても協力的なメンバーが多いと、個人的には感じています。

Q:製薬企業での勤務において、当初は予測しておられなかった点はどんなところですか?また、劉先生は殆ど毎日が出張だと伺いましたが、この点はいかがですか?

A:パソコンやスマートフォンを持ち歩いて、会議に参加する、などという自分の姿を医学部に在籍していた当時は想像もしていませんでした。

サラリーマンとして働くうえで、多少の雑務も生じてきますが、この点も初めは慣れませんでした。しかし、社内で丁寧に指導やサポートをしてくれるメンバーがいるため、大きな苦労はしていません。

また、出張に関して、私は西日本を担当としているため、大阪に拠点を置きながらも、沖縄などにも出向きトレーニングを実施します。働き方としては、コロナ禍で現場に出向くことも減りましたが、やはりオンラインでは難しい場合やクライアントから要望のある場合は出向いて対応します。

Q:製薬企業での勤務において、どのような点にやりがいを感じられているか教えてください。また、今後はどのようなキャリアプランをお持ちですか?

A:様々なキャリアを描ける、というのは製薬会社に勤めるうえで魅力がある点だと思います。

私自身はクリニカル・スペシャリストの業務内容にやりがいを感じており、現在の仕事を更にブラッシュアップしていきたいという想いがあるため、入社後 10 年間クリニカル・スペシャリスト業務を担っておりますが、今後も続けていきたいと思っています。

但し、今後の選択肢として、グローバルのクリニカル・スペシャリストチームへのプロモーション、または、サイエンティフィックな勉強が好きなので、メディカル・アフェアーズなどへのキャリアステップも大いに可能性があると思っています。

Q:海外での勤務も可能なのでしょうか?

A:アラガン・ジャパンはグローバル企業ですので、海外勤務も可能です。

その場合、もちろんコミュニケーションは英語になりますので、ご興味のある方は英語力向上のための自己学習も欠かせませんね。

Q:新しく入社される未経験のクリニカル・スペシャリストが、スムーズに業務を行えるようになるためには、どのようにすべきでしょうか?また、入社までに習得しておいた方がよいとお考えの事項はありますでしょうか?

A:入社時点で知識がなくとも大丈夫です。私も入社時には、ほとんど美容医療や注入治療については知りませんでした。

アラガンには、国内外にトレーニングチームがおり、カリキュラムに沿って学習を進めていただけます。また、他のクリニカル・スペシャリストに同行し、OJT として現場で知識ならびに技術を習得するための指導を行ってもらえるので、これも学習スピードを速めてくれると思います。

重要な点は、新しいことを学ぶことに興味があり、他者に物事を教えることに喜びを感じることのできる方には、とても向いている業務だと思います。

Q:アラガン・ジャパンの組織で働くうえで、外国人の医師としてどのように日本の文化や環境への適応を工夫されましたか?実際に働いてみて、どのような印象をお持ちですか?

A:アラガン・ジャパンはとても協力的なメンバーが多く、また、ダイバーシティなマインドセットのある方も多いため、私はとても働きやすく、直ぐに馴染むことができました。

また、グローバルチームとの距離が近く、頻繁に勉強会や成功体験の共有機会があるため、常に多様性のある環境に置かれており、良い刺激を受けています。

Q:製薬企業への転職を考える医師へ、一言コメントをお願いいたします。

A:先生方の臨床スキル向上と患者満足度の向上に深く関わることのできる業務であり、とてもやりがいを感じています。

会社のサポート環境もとても充実しているため、「何か新しいことをしたい」「企業に勤めながらも臨床に携わりたい」という方がいらっしゃれば、ぜひご検討ください。一緒に働ける日々を楽しみにしています。

<プロフィール>

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堤 康行(つつみ・やすゆき)
株式会社ヒューマンダイナミックス
代表取締役社長

 

ノバルティス、イーライリリーおよびCROのパレクセルで、主に臨床開発とメディカルアフェアーズ部門に所属し、約30年間にわたり各部門の企業医師と業務を共にする。製薬企業およびCROでの業務内容のみならず、近年の製薬企業動向や雇用条件も含めたクローズ情報に精通。その確かな経験と豊富な情報をもとに、製薬業界への医師転職サポートを行う。

 

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宇田 芳則(うだ・よしのり)
株式会社ヒューマンダイナミックス
シニアアドバイザー

 

ノバルティスファーマにおける30年以上の臨床開発業務経験と、管理職としての豊富な人材採用経験を活かして、求職者と採用側の双方のニーズを十分に理解した面接サポートを行なっている。

株式会社ヒューマンダイナミックスの具体的な求人を知りたい先生や、ご質問のある先生は「民間医局」がお手伝いをさせていただきます。お気軽にお問い合せください。

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