記事・インタビュー
前回までで、他病院と差をつける求人票の作成と面接術についてご紹介しました。基本的には、これらのプロセスを一度やって終わりではなく、改善を続けていくことで、それらの質がよい高いものになっていきます。PDCAサイクルという言葉がありますが、まさにP(Plan:計画)、D(Do:実行)、C(Check:評価)、A(Act:改善)の流れを繰り返し実施していくことが重要です。
では、このC(Check:評価)では、具体的にどのようなことを評価するのか?について、今回はご紹介いたします。
1.前回までの復習
前々回では(1)自院(2)他院(3)採用候補医師について分析し、求人票を自院の強みと弱みを意識したものにブラッシュアップすること、前回は面接時の事前準備が重要であること、事後の対応においてはスピードが命であることをご紹介しました。求人票の作成や、面接を終えた際に、ぜひ今回ご紹介する内容について、ご自身で自己評価してみてください。何か改善点が見つかるはずです。
2.実施した内容の評価軸について
評価軸として、3つの点を紹介させていただきます。どれも対応することはもちろん理想的ですが、最初からすべてに取り組むのは最初からは難しいので、ぜひ課題を感じる部分や苦手を感じる部分だけでも取り組んでいただけたらと思います。
(1)給与、エリア、専門性の確認
医師が転職する際に確認する事項は多くありますが、基礎として「給与」「エリア」「専門性」については是非確認してみてください。
「給与」は言わずもがな、医師は確認します。同じ職務・エリアで他院に劣らない給与か、劣る場合は何かそれを補うアピールポイントはないか、検討してみてください。たくさんの医療機関の採用を支援してきましたが、医療機関の方でも気づかない魅力はたくさんあります。ぜひ諦めずに他院と自院を比較し、自院の強みを見つけ、求人票に表現してみてください。
「エリア」については、物理的に変えられないものなので弱点となる場合の補完が難しいですが、エリアそのものの魅力を語るのも一つの手です。ペルソナ(採用候補医師の人物像)の年齢に合わせて、その年代の医師が何を魅力に思うかを想像しながらエリアをアピールするのも良いかもしれません。またはエリアのアピールが難しければ福利厚生として交通費の提供額を再検討し、例えば新幹線通勤も許容するような内容だといかがでしょうか。
「専門性」については、ペルソナとセットでぜひ改善を検討してみてください。ご自身の医療機関ではどのような医療を提供したいのか、どのような症例や手技が経験できるのか、逆にペルソナはどのような専門性を発揮したいと思っているのか・あるいは専門性にはこだわっていないのか。「専門性」はは採用担当者がご自身の医療機関のことをよく知り、また医師のキャリアについてもよく知ることで、採用プロセスを大きく改善できる点でもあります。惜しみなく、分かりやすく、対外的にアピールしていくことも重要です。文字だけでは伝わりにくい部分でもあるので、前年度実績や保有する医療機器などの情報とセットにしてアピールしてみてください。
(2)スピード
採用プロセスである“求人票作成→書類選考→面接→内定通知書の送付”のひとセットを振り返り、それぞれのプロセスでもっと早い対応はできなかかったか、早く対応できるようにするためにどのような改善ができるか、ぜひ検討してみてください。医師に限らず、転職する際は複数社を並行して検討します。どこか一つ、対応が遅れる転職候補先があると、よっぽど魅力を感じてもらえていない限り、その候補先は候補から脱落してしまいます。スピードを改善するためには、採用担当者だけでなく、面接する診療科の医師や院長の協力も必要かもしれません。院内の決裁フローの見直しが必要かもしれません。そのような改善も含めて、ぜひ改善点を見つけてみてください。時間がかかることもあるかもしれませんが、スピードに関するボトルネックを解消するのは非常に重要です。また、その改善過程で院内の採用活動への結束も期待できます。
(3)手厚いフォローアップ
1.採用候補者である医師
2.採用候補者の紹介元(人材紹介会社など)
3.面接者など採用プロセスで関わってくれた方々へのフォローアップがどうだったかについてもぜひ検討してみてください。
採用候補医師に必要な情報は伝えられていたか、紹介元に伝える情報は不足していなかったか。逆に紹介元から事前にもらいたい情報があったならば、その点を紹介元にフィードバックすることも喜ばれるかと思います。面接を担当してくれた方に、伝えていた情報やお願いした内容に不足はなかったか。ぜひ担当してくれた方と話して振り返りをしてみてください。
採用活動は、このような小さな振り返りとそこから生まれる改善の繰り返しです。
3.いまいる医師を大事に
最後に。採用活動の改善はもちろん重要ですが、病院の魅力はいまいる職員が作るものです。人材不足の際は外を見がちですが、ぜひ内側の状況も確認し、もっと良い職場にするには何ができるか検討してみてください。その際にも、前々回にお伝えした、を導入することをおすすめします。他院と比較した自院のことを一番理解する採用担当者だからこそ見つけられる、在籍医師への対応の改善点もあると思います。ぜひ、内側にも目を向けてみてください。
<プロフィール>
中村 実穂(なかむら みほ)氏
1992年生まれ。学生時代より、医療業界を経営・ビジネス視点で支えることに興味を持つ。
国立大学卒業後、聖隷浜松病院ICUにて看護師として勤務。
その後、原体験に立ち返り、病院経営分野へ進むべく、エムスリーキャリア(株)経営支援事業部へ転職。
全国200以上の病院訪問をしながら、複数の病院の採用コンサルティングに従事。
また、並行しDPC領域コンサルティングの新規事業立ち上げに従事。より臨床現場に近いところで事業開発に携わりたいと思い、2018年10月に現職アイリス(株)に入職。
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