記事・インタビュー
前回は、求人票の作成にあたり必要な現状把握の内容と、求人票作成後の活動方法についてご紹介しました。このプロセスを経ることで、貴院の求人票の内容と、世の中にいる医師の求めているものがマッチするようになっていきます。一度見直すだけでは完全にはマッチしないので、前回ご紹介した内容を何度も繰り返し、求人票をブラッシュアップしていくことが必要です。
本日は、ブラッシュアップ後、応募が増え、面接を実施できるようになってきた医療機関に向けて、面接術をご紹介いたします。
1.前回の復習
前回は、(1)自院(2)他院(3)採用候補医師について分析し、求人票を自院の強みと弱みを意識したものにブラッシュアップすること、また、ブラッシュアップしただけで終わらずに、それを持って医師の目に留まる場所(貴院や人材紹介会社のホームページ)に掲載するための行動をご紹介させていただきました。
行動をすると、何かしら返答が返ってきます。貴院のホームページへのアクセス数の変化や、人材紹介会社の方の返答を反映させて、よりブラッシュアップしてみてください。これを繰り返すことで、貴院の求人票がどんどん磨かれていきます。
2.面接前の準備
「面接は準備が8割!」というのはよく言われる台詞ですが、本当にそのとおりです。面接を何回実施するかについては医療機関ごとに異なるかと思いますが、多くは1回の面接かと思います。せっかく医師に時間を取ってもらうので十分に貴院について知っていただき、またここが重要ですが、貴院も医師についてよく理解できる時間にしてください。
以下に、準備段階で抑えるべきポイントについていくつかご紹介します。
(1)医師側の貴院についての懸念や良いと思っている点の把握
貴院に入職してご活躍いただけそうかどうかはもちろんですが、医師が入職するかどうか迷う懸念やポイントはどこにあるのかを把握する時間にしてください。
ここで把握した内容を、面接時や面接後のフォロー時に活かしていきます。仮に人材紹介会社経由での応募医師であれば、医師が気にしていることや迷っている点を人材紹介会社側から聞き出してください。
当日は、その点をカバーできるような設計にしていきます。また、逆に入植について良いと思っているポイントも聞き出し、当日はその点を改めてアピールできる場になるような設計にしていきます。
(2)貴院側の医師についての懸念や良いと思っている点の把握
最終的に採用するかどうかは診療科のトップや病院長が決定するかと思います。
事前に医師の履歴書などの内容をお伝えし、意思決定者が何を懸念に思っているかを確認してください。また、逆に良いと思っているポイントも確認してください。
採用担当の心に留めるだけでなく、医師本人に伝えることがとても大事です。医師側も何を良いと評価されているのか聞くことで、自分が医療機関に貢献できるかどうかを判断する機会にもなります。貢献できると感じてもらえたら、入職へ一歩前進です。
(3)当日、貴院から医師に伝えるべきことの整理と、面接者への共有
事前に医師側の貴院について懸念が分かると、その懸念を払拭するためにできることとして何があるか検討してみてください。
例えば診療科内の人間関係を気にしていたら、意思決定者だけでなく年代の近い医師や病棟の看護師長に会ってもらうことも一つの手です。手技の環境を気にしていたら手術室や検査室を含む関連施設の見学を取り入れてみてください。
長距離転居を伴う転職であれば、医師が多く住んでいるエリアを車で回ってみることも良いかもしれません。これらはすべて過去に実際に実施した内容ですが、いずれも効果的でした。鍵となるのは、(1)の医師側の懸念の把握の内容となるので、まずはそれを行い、対応策を検討してみてください。
また、医師側の懸念事項はぜひ面接者にも共有し、それに関する話題を面接中に出してもらえないか協力を仰いでみてください。
(4)当日、医師に確認するべきことの整理と、面接者への共有
貴院の意思決定者側に医師についての懸念があれば、それについて確認したほうが良いことを、まとめてみてください。
診療に関する内容は面接者側で質問するかと思いますが、事務側で聞いておきたい内容などもメモしておくと良いかと思います。
3.面接時に実施すること
面接は上記準備した内容に従って実施してみてください。
面接でぜひ心がけていただきたいことは、医師に「働くイメージを持ってもらう」ことです。貴院で働くイメージを持ってもらうために、一緒に働く人・場所、住む場所や暮らしに関わる場所などをぜひ紹介してください。
4.面接後のフォローについて
面接後は、もし内定を出すのであればなるべく早く内定通知書を出すことをおすすめします。通知書を出せるまでの時間は医療機関によると思いますが、採用に活動的な病院は当日中か翌営業日中には医師に渡しているケースが多いです。また、ぜひ来ていただきたいという医師にはオファーレターという、面接者が当日感じたことや来ていただきたい旨を記載したお手紙のようなものを同時に送付するケースも多くあります。
内定を出すかどうか迷う場合は、その理由とどのようにしたら内定を出す・出さないを決められるかについて検討し、人材紹介会社経由の医師であればその内容を人材紹介会社側に伝えてください。会社によりますが、医師への伝え方を一緒に考えてくれるケースもあると思います。
面接後はとにかくスピード勝負です。内定を出す場合も、出さない場合も、早い対応をする医療機関は好印象です。
<プロフィール>
中村 実穂(なかむら みほ)氏
1992年生まれ。学生時代より、医療業界を経営・ビジネス視点で支えることに興味を持つ。
国立大学卒業後、聖隷浜松病院ICUにて看護師として勤務。
その後、原体験に立ち返り、病院経営分野へ進むべく、エムスリーキャリア(株)経営支援事業部へ転職。
全国200以上の病院訪問をしながら、複数の病院の採用コンサルティングに従事。
また、並行しDPC領域コンサルティングの新規事業立ち上げに従事。より臨床現場に近いところで事業開発に携わりたいと思い、2018年10月に現職アイリス(株)に入職。
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