記事・インタビュー
はじめに
日々の業務をこなす中で、避けて通ることのできない『救急外来診療』。特に初期研修医は当直などの仕事も多いため、普通の勤務医よりも救急外来診療について深く考える機会が多いかもしれません。将来、救急科を志望する研修医にとってはなおさらです。その分、抱えるのは救急外来診療に関するたくさんの悩みや疑問…。昔の自分もそうでしたし、今もなお悩むことばかりです。
「救急外来での指示出しを先輩の先生たちは即座にしているけど、あれってどうやったらそんなにテキパキとオーダーできるようになるんだろう…?」
「低Naの患者さんの電解質補正速度って、どうするんだっけ…?」
「この病態を疑ったときに使うスコアリングってなんだっけ…?」
こういった悩みや疑問を解消するために、皆さんはきっと数多くの本の中から役に立ちそうな参考書を選んで読み進めていることかと思います。医学は日々エビデンスが目覚ましい勢いで進歩する以上、なるべく最新の知識をわかりやすくインプットできるような、最適な一冊を選びたいところです。ただ、それぞれの本でどのような内容について学べるのか、ざっと目次や説明を読んだだけではわかりにくいですよね…?そこで今回は、毎月救急外来診療に関する新刊を購入し読み漁っている医学書マニアの私が、2021年に購入したおすすめの5冊を比較しながらご紹介します!
これからご覧いただく医学書レビューは、これまで研修医時代に100冊以上の医学書を読み、その中でもオススメの医学書のレビューを月5冊以上書いているある救急科専攻医のレビューです。医学生や研修医、各分野の初学者の気持ちが痛いほどわかるので、ぜひこの一冊を手に取ってみたいと思っていただけるようなレビューを心がけています!これから何を勉強しようか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください!
- 【2021年上半期最新版】令和の研修医におすすめのER診療に役立つ医学書5選
1.『救急外来,ここだけの話』
救急診療には根拠となる文献やガイドラインはあるものの、目の前で苦しんでいる患者さんにそれが当てはまるとは限らないものです。私自身も、上級医の先生方と救急外来で日々診療に当たる中で、相談しても解決しない、もやもやとした悩みを多く抱えていました。ですが、本書を読むことでこれまで悩んでいた救急外来対応の根拠を知り、目の前の患者さんに適した思考回路を身につけることができます!今回、救急外来対応に慣れてきた方々こそ読むべき一冊として、自分が自信をもっておすすめするのがこちらの一冊です。
本書の特徴はなんと言っても、それぞれの分野のエキスパートの先生方が執筆されており、圧倒的な説得力があるということ!知っておくべき様々なエビデンスはもちろん、実際にはこうしているという医学書ではファジーに表現されることの多い治療法や対応についても、かなり具体的に記載されています!
一方で、あくまで個人的な印象ではありますが、気になった点としては、本書は救急外来での“Controversial”なテーマを扱った一冊なので、救急外来対応にまだあまり慣れていない初学者には少しハードルが高いということです。
この点を考慮に入れた上で一度手に取っていただければと思いました。今後、本書で登場したようなシチュエーションでの救急外来対応のチャンスが訪れた時に自信をもって取り組むことができます!今後の学びや業務をより良いものにしたい方にはぜひ手に取っていただきたい一冊です◎
基本情報 |
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ターゲット層 |
救急科を目指す研修医から内科後期研修医 |
推定読了時間 |
9-10時間程度 |
本書の特徴 | 救急外来(ER)の分野で議論されているトピックを取り上げ、「第一線の医師はどのように考えて診療しているのか(=ぶっちゃけ、どうしているのか)」を解説。関連するエビデンスを豊富に紹介しながら丁寧に論を進めていくスタイルで、救急医療が専門ではない若手医師も、本書を読めば“Controversial”な状況に強くなる! 大好評の『集中治療,ここだけの話』に続く、シリーズ第2作。 |
評価 | |
本書のおすすめの読み方・活用方法 |
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本書のまとめ |
本書は悩ましい救急外来の現場で、第一線の医師はどのように考えて診療しているのかを学ぶのに最適な参考書である! |
購入先 |
2.『medicina(メディチーナ) 2021年 増刊号 特集 救急診療 好手と悪手』
「Dダイマー陰性だから肺塞栓は否定的ですね…」
「CTで出血はなさそうだからSAHではないですね…めちゃくちゃ痛がっているけど…」
これらは日々ERで後輩や同僚と仕事をする中での一見妥当な判断です。しかし、この判断は誤りなのです。私自身も、このように見逃してはならない疾患について誤った解釈をしてしまい、早期診断が遅れた苦い経験が山のようにあります。
何より魅力的なタイトルに惹かれてほぼジャケ買いしたのですが、通読した後にはやはり素晴らしい一冊だなと感じました!本書を読むことでそれぞれの症候や疾患を疑った際、診断した後の対応について的を射たアセスメントと介入を行うことができるようになります!本書の特徴はなんと言っても、読み進めていった時の学べているなという実感と心地よさが挙げられると思います。冒頭で疾患群における陥りがちなピットフォール(悪手)をまとめた後に、適切なマネジメント(好手)を紹介してくださっているので、これまでの臨床経験と照らし合わせてはっとすることばかりです。本のページ数も多すぎることなく簡潔にまとまっています◎何より、本書の解説は初学者にも理解しやすいようわかりやすく丁寧に書かれているので、ストレスなく通読していくことができると思いました。
一方で、本書において注意すべきだと感じた点としては、それぞれの疾患のピットフォールに着眼点を置いた一冊であるため、初学書としてはやや難しいということ。初期研修医の先生方(特に1年目)にとってはまず、疾患別の基本的な初期対応を学んだ上で本書を読み進めないと、少し歯抜けな知識となってしまうので、その点は頭に入れた上で読んでいただくほうがいいかと思いました!救急外来診療をある程度経験した先生方にとっては、唸るような目からうろこの内容も多くありますので、ぜひ学びに生かしていただきたいです!中級者にとっては(自分も含みます!)、とても効率的にポイントを押さえて学ぶことができる一冊だと感じました。
基本情報 |
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ターゲット層 |
初期研修医2年目から後期研修医 |
推定読了時間 |
7-8時間程度 |
本書の特徴 | 救急外来で出合う疾患や陥りやすいエラーについて、救急診療におけるピットフォールを取り上げ、適切なマネジメントができるようにまとめられている。 |
評価 | |
本書で学べること(例 Amazon紹介欄より一部引用) |
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本書のおすすめの読み方・活用方法 |
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本書のまとめ | ある程度経験を積んだ若手医師にとって、救急外来における診断学やマネジメントを学ぶ上でとても効率的な一冊である! |
購入先 |
3.『Dr.林の 高齢者救急・急変お助け本─高齢者が好きになる』
「高齢者の患者さんの救急外来診療って問診がうまく取れないんだけど、どうしたらいいの…?」
「この方の転院は決定したんだけど、何の目的での転院で、今後どんなことに気をつけながら、どんな生活をしていくんだろう…?」
「在宅診療って個別の症例を経験しても、体系的に学んだことがないから、何が大切で何に注意すべきなのかわからない…」
これらは日々ER診療をしているときや、主治医として自分が診療をする際に疑問に感じていたことです。一方で、日々の手技や手術、重症患者さんの治療管理の知識をまずは身につけようとして、見て見ぬふりをしていた分野の一つでもあります。そんなとき、『Dr.林の 高齢者救急・急変お助け本─高齢者が好きになる』という自分の心を揺さぶるタイトルの一冊に出合いました。
本書を読むことで、今後なかなか訴えのはっきりしない高齢者の患者さんに救急外来で出会ったとしても、自信をもって対応することができます!また主治医として、入院後の患者さんの転院調整、リハビリや介護保険についての知識を得ることもできるので、主治医として患者さんの生活と向き合う医師力が身につきます!救急外来診療を学びたい研修医はもちろん、今後入院患者さんにとって頼れる主治医を目指す後期研修医の先生方にとっても、読むべき一冊として自分が自信をもっておすすめするのがこちらです。
基本情報 |
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ターゲット層 |
初期研修医から後期研修医 |
推定読了時間 |
8-9時間程度 |
本書の特徴 |
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評価 | |
購入先 |
4.『救急外来ドリル~熱血指導!「ニガテ症候」を解決するエキスパートの思考回路を身につける』
毎日様々な主訴を持った患者さんが搬送されてくるERでは、満遍なく全ての分野の知識を持っておく必要があります。ですが、我々も人間である以上、苦手な分野があるのも事実…。少し苦手意識があるなあ…と感じてしまう主訴を持った患者さんに対応することも往々にしてあります。ER診療における、自分の苦手分野を克服したい!と思っていた時にこの一冊に出会いました。
本書を読むことで、これまで苦手意識を持っていた主訴で来院されている患者さんに出会ったとしても、自信をもって対応することができます!よくある解説本のように、それぞれの症候で気をつけることや検査、処方例を挙げるだけにとどまらず、問題形式なのも本書の特徴。目の前に患者さんがいるかのような臨場感をもって学ぶことができるのも魅力です。ER診療について学びたいけれど、研修先の病院の救急車の台数が少なく、研修医がファーストタッチをすることが少ないシステムの病院で働く研修医に強くおすすめします!
基本情報 |
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ターゲット層 |
初期研修医から後期研修医 |
推定読了時間 |
7-8時間程度 |
本書の特徴 |
腹痛から頭痛、マイナーエマージェンシーまで、研修医が苦手とするコモンな症候を救急のエキスパートが症例問題として出題! 実臨床の流れに沿った解説で、救急外来で必要な思考回路を身につける。 |
本書で学べること |
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評価 | |
本書のおすすめの読み方・活用方法 |
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本書のまとめ |
本書は、研修医が何度も問題を解き直して頭に叩き込むべき、ER診療における必修のドリルである! |
購入先 |
5.『武装せよ!当直研修医のためのERのTips~288個のレジデントクエスチョン』
「回転性のめまいは末梢性のめまいと考えてよいのですか…?」
「耳漏が出ているのは中耳炎ですか…?」
「膝が腫れている時、どのように診察したらいいですか…?」
「どうして足関節は内反しやすいんですか…?」
このような研修医の先生方にとってのER診療における素朴な疑問は、私たち専攻医にとっても、どうしてだろう…?と悩んでしまうものが数多くあります。この悩みを解消しようとして様々な本を読み漁っていたところ、この一冊に出合いました。本書の特徴はなんと言っても、ER診療で悩むことが多い素朴な疑問に対して、ほぼ網羅的に解説されていることです!
一つ一つの疑問に対する解説のページ数も多すぎず、簡潔にまとまっているので、苦痛を感じることなく読み進めることができます◎これらの解説は、初期研修医を指導する立場にある上級医にとってもドキッとする、核心をついたものばかりです。今後ER診療をする中で、日々疑問に感じた時にさっと参照できる、辞書のような一冊であり、読み終えた後もずっと使い続けることのできる一冊だと思います。
基本情報 |
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ターゲット層 |
初期研修医(特に1年目後半以降)から、後輩の指導に当たる後期研修医 |
推定読了時間 |
9-10時間程度 |
本書の特徴 | 2016年に刊行されたものを、著者の研修医教育に対する熱い想いと最新情報を盛り込み、大幅な誌面改変を行って、研修医が救急外来で抱える疑問や悩みどころを288のレジデント・クエスチョンとして答える形にまとめられている。 |
本書で学べることの例(目次から一部引用) | 頭痛のクリニカル・ディシジョン・ルール RQ1 頭痛はまず何から考えたらよいですか? RQ2 クモ膜下出血が怖いので、頭痛には全例頭部CT 撮影すれば安心だと思うのですが? RQ3 クモ膜下出血の頭部CT 読影のコツを教えてくださいERの用法注意薬 RQ1 薬剤歴(内服歴、投薬歴、処方歴)の考え方を教えてください RQ2 中毒の被疑薬を調べたいときはどうしたらよいですか? RQ3 ワルファリン内服者はどのような点に注意が必要ですか? |
評価 | |
本書のおすすめの読み方・活用方法 |
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本書のまとめ |
本書は、救急外来での数多くの疑問を解消してくれる、ER診療における道標となる一冊である! |
購入先 |
まとめ
いかがだったでしょうか?気になる一冊は見つかりましたか?今後どの診療科に進むとしても、ER診療でずっと使い続けられる参考書のみを紹介しました。どれを選ぶか迷ったら、この機会に5冊まとめて購入するのもいいと思います。せっかく学習するからには、ぜひ最新の参考書を手に取っていって、明日からの研修医生活をより良いものにしてくださいね!
★今回の書籍以外にも、踊る救急医先生の医学書レビューはこちらのページで読むことができます!
想定読者や各診療科ごとにわかりやすくまとめられているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
詳細はこちら≫https://dancing-doctor.com/2021/03/31/review-reader/
<プロフィール>
三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター
立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。
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