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2024.01.15

著者が語る☆書籍紹介 『医師バイト・外勤超実践マニュアル~ありそうでなかった! 専門外の診療にも役立つバイト医のバイブル~』

民間医局コネクト編集部です。民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。

今回は、『医師バイト・外勤超実践マニュアル~ありそうでなかった!専門外の診療にも役立つバイト医のバイブル~』を、著者の大野 哲生先生に紹介いただきます。

日々アルバイトをしている先生方であれば思わず頷いてしまうエピソードが満載ですので、これからアルバイトをする予定の若手医師はもちろん、アルバイトマスターの先生方も必見です!

医師バイト・外勤 超実践マニュアル: ありそうでなかった! 専門外の診療にも役立つバイト医のバイブル
大野 哲生(著)/メディカ出版
発刊:2022/9/26
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著者解説

“医師がバイトをしている“という事実は世間一般ではあまり知られていない。ドラマなどの影響で以前と比べて認知される傾向にはあるものの実際にはどのようなものなのか知っている人は少ない。ましてや医師自身も医師のバイトや外勤に精通していると胸を張って言える(むしろ言いたくない?)人はどれ程いるだろうか。

医師の世界ではバイトだけで生計を立てているバイト医は”楽してお金を稼いでいる“、”ろくな診療もしていない“と、白い目で見られがちな存在である。特に急性期病院で毎に身を粉にして働いている専門医からしたら、圧倒的に自分たちより忙しくない者たちが自分より稼いでいる事実を知ったら驚愕し一種の妬みのような感情を抱くだろう。

しかし何がどうなってマイナスのイメージを生み出しているのかを紐解いてみてみると、意外と単純な図式であることに気が付く。そもそも医師のバイトや外勤は特に地方の医師不足が深刻な医療機関が医師を募集し、それに外部の医師が応える。その間に金銭の授受と紹介業者の仲介がある。という図式で成り立っている。これだけをみたら何ら問題はなくむしろ双方にとってのwin winの関係である。

ではなぜマイナスのイメージをもっているのか。それは多額な報酬をもらっている割には仕事内容が詰まっていないと思われているからではないだろうか。つまり仕事の内容が比較的単純なものが多いうえに、それをやる医師もいい加減に業務をすませているというイメージがあるからではないだろうか。

実際、急性期病院での業務と比較してバイト先や外勤先では比較的負担の少ない業務が多く、そこで働いている医師も向上心や熱意にかけている人も少なくないのは否めない。しかしそういった現場でも行っているのは同じ医療であり、医療の質に差があってはならない。当然設備や物資の違いでできることとできないことがあるため、その差がでてしまうのは仕方がないが、医師の知識不足や熱意の違いで低い質の医療しか提供できなくなるのは絶対にあってはならないことである。

そのため本書はそのような医師バイト・外勤の質の向上を目的とし作成した。また地方勤務、開業などで専門分野以外の診療に携わる際にも”最低限の医療の質“を保証できるようになるマニュアル本を目指して作成した。

医師アルバイトのポイント

求人数/希望者の多い「健康診断」「一般内科外来」「病棟管理」について、本書の内容を引用しながら、アルバイトするうえでのポイントを解説する。

健康診断

健康診断(以下、健診)は医師アルバイトの中で最も人気があり、案件の数も多い。特に5月や9月は企業健診が最も多いとされる時期であり良案件では競争になることも多々ある。数十名~数百名の診察まで規模はさまざまである。診察する人数が多い場合1人あたりにかける時間が30秒程度になることもある。また画像読影を伴う院内健診の案件もあるが、ここでは社内健診等の一般的なものを想定する。

会社の場合、職員休憩所や食堂の一部をしきりで隔て医師の診察スペースを設けることが多く、他のスタッフがここに受診者を呼び込み、医師はそのスペース内で問診→視診・聴診・触診(打診)を行い、判定区分を記入後(←ここが重要!)、スタッフが受診者を次の場所へ案内する。また、受診中に体調を崩す方がいた場合は診察し、病院受診必要の有無を指示することもある。問診から身体診察までの流れと判定区分は通常の診療とは異なるため戸惑うこともあるが、回数をこなし、経験を重ねれば自然と身についてくることが多い。

しかしそんな戸惑いをぬぐいきれない健診業務初心者の医師にもおすすめのマニュアル本が本書であり、健診経験がない医師でも自信をもって一連の診察と判定を行うことができるようになる。また白衣、聴診器、ボールペンは当日貸出してくれることも多いが、白衣、聴診器などは自前の商売道具を持っていく方がプロとしては望ましい。

一般内科外来

一般内科外来のバイトは広く募集されている案件の一つである。クリニックや小規模の病院へ行き、常勤医師が不在の日の代診をするという場合が多い。診察する人数はピンからキリまであるが、午前中もしくは午後の一枠で10~20人程度が平均である。特にクリニックの場合は検査目的ではなく処方薬だけをもらいに受診するというパターンも多いため、一般的には処方Doで行うことが多い。クリニックや小規模病院の診察室を一部屋与えられ、そこで問診、診察、処方の入力、次回の予約(予約制の場合)を行うこととなる。

通常の場合、常勤の看護師や医療事務のスタッフが付き添ってくれるため、わからないことはそこでの業務に慣れているその方達に質問すればすぐに教えていただける。カルテの使い方や処方の仕方などは実際に行い、聞きながら徐々に慣れていくこととなる。長年通院されている方などはそのまま処方Doでも良いことが多いが(むしろ単発で来た医師が大幅に処方内容を変更するのは危険)、初診の方を診察する場合や、毎週定期で勤務する場合などは高血圧、脂質異常症、糖尿病など特に生活習慣病に関する最低限の知識は持ち合わせておく必要がある。

本書ではそれぞれの項目に関してすぐに使えるとても実践的な内容を記載しているため、初めて救急外来ではなく定期外来を担当する場合や一般的な内科知識をすぐに得たい場合は必ず役に立つ。

病棟管理(慢性期病院)

当直業務案件で最も多いのが慢性期病院(療養型病院)もしくは亜急性期病院でのものと思われる。慢性期病院の場合、急性期病院の病棟管理と違い、メインとなる業務は看取りである。その他、かかりつけ患者・関連施設(特養、老健、グループホーム)などからの電話対応や受診もその業務に含まれることが多い。病棟の回診に関しては頼まれる場合とそうでない場合があり、そうでない場合行う必要はない。

慢性期病院の場合、病棟で起こった多くの問題を看護師までで解決してしまうため、どうしても医師がいないと動けない事柄に関する最低限の相談しか来ないことが多い。そのため、勤務時間の大半は“待機”である。基本的に当直室か医局で待機をする時間が最も多い。待機中は指定された部屋の中にさえ居れば良いので、寝る・テレビをみる・インターネットをするなど自由でOK。

当直や日当直での募集が多く、中には4日間連続などの連日勤務の場合もある。実労働は救急の受け入れ頻度・人数によって変動する。受け入れがないところでは看取りがない限り呼ばれないことが多いため、実労働時間はかなり少ない。そのため、入院患者以外の患者(救急、かかりつけ、関連施設入所者)をどれ程受け入れるかを事前に確認することで、ある程度の忙しさを予測することができる。よって、求人応募欄を確認し特に情報の記載がなければ、申し込む前に担当者に質問し確認しておくことが重要である(※全く失礼な質問ではありません)。

このように、お看取りが多くなると考えられる慢性期病院での当直業務についた場合、その経験が少ない医師にもおすすめの本書では、死亡確認に際し、どのような言葉をかけ、どのように立ち振る舞い、どのように書類記載を行うかまでのやり方を細かく記載しているためあまり経験がない医師が、他の医師はどのようにしているのかなどを、本書を通じて学ぶことができる。

まとめ

医師のアルバイトにはさまざまなものがあり、健診、外来、当直などがその代表である。何度かそれらを行う中で徐々に身につけていく知識を基に、多くの医師がアルバイトを行っているのが現状であるが、本書はそのような、言葉にしづらかった部分を言葉にし、できるだけわかりやすさ、実践のしやすさに重きを置いて作成した。

そのため本書は、初期研修を修了し、これからさまざまなアルバイトをお考えの専攻医の先生、これまでスペシャリストとして活躍しておりこれからは開業などジェネラリストとして活躍予定の先生、他科にコンサルテーションする前に最低限の診療を行えるようになりたいと願う先生、臨床から長年離れており、何かをきっかけに臨床に復帰しようと思われている先生など、すべての臨床医に役立つ一冊である。

<著者プロフィール>

大野 哲生(おおの てつお)

1990年9月23日愛知県清須市(旧・西春日井郡) 西枇杷島町出身。2016年琉球大学医学部卒業。旧・名古屋第一赤十字病院(現・日本赤十字社愛知医療センター 名古屋第一病院) で初期研修後、北海道釧路市の慢性期病院で勤務。その後Arbutus college (カナダ、バンクーバー)にてBusiness management Diploma 取得。Arazy Group Consultants Inc. (カナダ、バンクーバー)に入職しJapan coordinatorとして営業、翻訳、薬事コンサルティングに携わり会社史上初の本邦クライアント獲得に寄与。帰国後培ったビジネススキルを基に老人保健施設の管理者兼医師として勤務し組織拡大に貢献。沖縄県にある 社会医療法人友愛会友愛医療センターで急性期医療を行いながら離島医療にも従事し今日に至る。

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大野 哲生

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