記事・インタビュー

2019.12.25

検疫医療専門職として働く5つの魅力

厚生労働省 検疫所

病院以外で働く医師のキャリアとして、厚生労働省所管で全国の海港・空港の検疫所において検疫業務、健康相談業務および予防接種などの業務を担当する検疫医療専門職の働き方や魅力をご紹介します。

検疫医療専門職のご案内

検疫とは、「国内に常在しない感染症の病原体が船舶又は航空機を介して国内に侵入することを 防止する1)」こととされております。海外から入国する際に、空港でサーモグラフィーを用いて体温を確認している様子を思い浮かべる方も多いかもしれません。

全国に13ヶ所の検疫所(本所)2)があり、約50人の医師が「検疫医療専門職」として勤務しております。検疫医療専門職の約3割が女性で、3人の検疫所長をはじめ、女性幹部の登用も進んでおります 。

検疫医療専門職は、国家公務員としての身分が保障されています。日々の検疫業務のほか、検疫所の業務を管理・運営する経験を積んでいき、所長や課長等の幹部に任用される候補職員でもあります。

このたび、特に行政職に興味をもたれている方に、検疫医療専門職の情報を提供させていただきます。各検疫所を見学することも可能ですので、お気軽にお問合せください。

1)検疫法第1条
2)平成31年4月1日現在、詳細は「勤務地(全国の検疫所)」を参照

検疫医療専門職の業務内容

検疫医療専門職の業務は、主に空港で行われる業務、港湾で行われる業務、危機管理への対応等があります。

(1)空港での業務の例

海外には、国内では見られない種々の感染症があります。人や物の移動が大量・高速化し、感染症は急速に世界に拡がるおそれがあります。 2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、2009年の新型インフルエンザ(A/H1N1)の世界的な流行は記憶に新しいところです 。現在は、中東でのMERS(中東呼吸器症候群)、中国での鳥インフルエンザA(H7N9)等の感染拡大が懸念されています。

私たちは、海外で発生している感染症を早期に発見するために、入国時に感染症が疑われる方の診察・検査や、体調がすぐれない方からの健康相談に対応しています。

【検疫業務及び健康相談業務】

国際線が到着する際、まず事前に寄せられる検疫前通報等の書類審査を実施します。

乗客の到着後は、サーモグラフィーによる発熱反応のチェックや、有症者の診察・健康相談などを行います。また、渡航する方々の健康状態(年齢、基礎疾患、予防接種歴など)や渡航先、渡航期間、渡航先での活動などに応じて、電話や空港等で個別に健康相談を行っています。感染症だけでなく、高山病、航空性中耳炎、虫刺され、日焼けなどの相談もあり、渡航医学を含む臨床医学全般の知識を活用して対応しています。

【検疫感染症の検査】

サーモグラフィーで発熱反応を認めた方や有症者について、渡航状況などに応じて採血を実施します。

  • 血液検査:マラリア、デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症
  • 咽頭ぬぐい液検査:鳥インフルエンザA(H5N1、H7N9)、MERS

 

(2)港湾での業務の例

港湾においては、海外から来港する船舶を介して国内に常在しない病原体が侵入するのを防ぐために、船舶の検疫を行っています。感染症に罹患している疑いのある人が乗船している場合は、診察の上、必要に応じて隔離、停留、消毒等の措置を行います。

【検疫業務】

船舶の検疫は、入港前に必要な情報が検疫所に送信される無線検疫審査と、着岸臨船検疫があります。

無線検疫審査の場合は、申請された内容の疑義を確認します。

臨船検疫の場合は、検疫官が実際に乗船し、乗客の健康状態について船長や船医から聴取します。船内に病人がいる場合には、診察の上、検疫感染症の可能性の有無を確認します。また、船内の衛生状況を確認するために訪船して検疫を行うこともあります。

【衛生業務】

外航船舶に対し、船内の衛生検査を実施し、国際航行に必要な証明書を発給しますが、検査官に同行し、一緒に船内の衛生状況を確認することがあります。

検疫所では、デング熱やペストなどの検疫感染症の国内への侵入と蔓延を防止するため、港湾区域において感染症を媒介する蚊やネズミの生息状況及び病原体の保有調査を行っていますが、調査に同行することがあります。

 

(3)危機管理・危機対応

国内にはない感染症への対策は、国の危機管理としても大変重要です。世界には致死率の高い感染症や人から人に容易に拡がるおそれのある様々な感染症があります。これらの感染症の流行状況は日々変化しており、感染症の疫学、診断、治療等に関する新たな知見も集積されています 。

検検疫所の業務は病院と違い、空港や港湾関係者や出入国管理局、税関、自治体、医療機関等の外部機関とのコミュニケーションが重要です。感染症が国内に広がらないよう、周囲の自治体や医療機関等と日常的に連携して、危機管理に備えています。

【渡航者向けの情報提供】

FORTH(海外で健康に過ごすために)」というホームページで、感染症などの情報提供を行っているほか、各検疫所でもそれぞれのホームページで情報提供を行っています。

世界の最新の情報を収集し、渡航される方々へ提供しています。専門的な情報を、できるだけわかりやすく提供することが私たちの役割です。

【検疫感染症措置訓練】

感染症に迅速に対応するためには、日常からの備えが重要であり、検疫所では様々な訓練を実施しています。このような訓練の企画や立案も、私たちが中心になって行っています。

 

(4)その他の業務
【予防接種業務】

一部の検疫所では、海外に渡航する方々に黄熱等の予防接種を行っています。私たちは予診や接種を行うほか、副反応が出た場合の対応方法、渡航先によって推奨される予防接種や接種スケジュールなどの相談にも対応しています。

【職員の健康管理】
一部の検疫所では、健康管理医として、職員の健康管理を行っています。

検疫医療専門職の5つの魅力

(1)働きがいのある職場

医師と行政官の両方の楽しさが経験できる

  • 医師として、普段あまり診れない渡航感染症や、体調不良の渡航者を診る機会が多く、臨床経験が役に立ちます。
  • 行政官(検疫官)として、空港や港湾関係者や出入国管理局、税関、自治体、医療機関等の外部機関と、会議や訓練を行います。多方面の方々と働く機会があり、危機管理に日々携わっているという実感がもてます。
(2)女性医師が働きやすい環境

検疫医療専門職の約3割が女性で、3人の検疫所長をはじめ、女性幹部の登用が進んでいます。

(3)オンとオフがはっきりとした勤務時間

1週間あたりの勤務時間は決められており、仕事のオン・オフがはっきりしています。

  • 勤務時間は、週平均38時間45分、4週8休制となります(早出、遅出、週末の当番等、詳細な勤務時間は、検疫所ごとに異なります)。
  • 育児・介護中の職員は、勤務時間の変更、短縮や有給休暇制度の利用が可能です。
  • 検疫医療専門職の1週間あたりの勤務時間は決められており、時間外の緊急の仕事が少ないなど、仕事のオン・オフがはっきりしています。
※表中の勤務時間には、所定の休憩時間等も含む
※表中の勤務時間には、所定の休憩時間等も含む
(4)医師としての給与体系
  • 給与は、一般職の職員の給与に関する法律に基づき、病院、療養所、診療所等に勤務する医師及び歯科医師と同じ基準で支給します。
  • 入職後も、一定の条件1)の下、審査を経て許可された場合は、公務に影響のない範囲で、医療機関にて有報酬の兼業ができます。
(5)幅広いキャリアパス
  • 検疫所での幅広い業務を経験することで、検疫医療専門職から課長、支所長、所長といった幹部への登用の道もあります。
  • 上述の兼業制度を活用することで、医療技術の維持や、現在取得している専門医・指導医資格等の維持・更新が可能です。

1)兼業に係る業務が申請者の技量を遙かに上回る業務内容ではないか。兼業が公務に影響を与えることはないか。兼業先の医療機関が保険医療機関であるか。など

勤務地(全国の検疫所)

検疫医療専門職は、検疫所の本所や、国際空港である支所での勤務が想定されます。

育児・介護中の職員が利用できる主な制度1)

1)国家公務員育児休業法に基づく

(1)勤務時間の短縮(対象:未就学児の親)
  • 育児短時間勤務
    ①3時間55分×5日、②4時間55分×5日、③7時間45分×3日 、④7時間45分×2日+3時間55分×1日
  • 育児時間
    勤務時間の始め終わりに1日につき、2時間以内で勤務しないことが可能(給与については、減額)
(2)勤務時間の変更(対象:未就学児の親、家族を介護する者等)
  • 早出遅出勤務
  • 勤務時間の繰り下げ又は繰り上げ
  • 休憩時間の短縮(昼休みを15分または30分短縮して、勤務終了時間を切り上げ)
(3)休暇制度(有給休暇)
  • 子の看護休暇:子の疾病・負傷等の場合に(1日単位で)未就学児一人につき、年5日まで取得可能
  • 短期介護休暇:介護等のため(1日単位で)年5日まで取得可能

女性の医療職からの声

【女性の勤務環境、ワーク・ライフ・バランスについて】
  • “育児中の職員が多く、理解のある環境のため、子育てしながら勤務しやすいです。”
  • “オン・オフがはっきりしており、平時であれば予定が立てられやすいです。”
  • “勤務時間が決まっていること、夜間の呼び出しがほとんどないことから、育児しながらでも勤務が可能です。また、子供が病気の時など、突然の休暇もとりやすい職場環境です。”
【働きがいについて】
  • “医師としてというよりは検疫官として、水際危機管理に日々携わっているという実感があり、働きがいのある仕事です。”
  • “特に空港では体調不良の渡航者を診る機会が多く、これまでの臨床の経験を活かしてやりがいのある仕事ができます。”
  • “病院で勤務していた時と大きく異なる点として、訓練や会議などを通して国、地方、民間を問わず他機関との連携・協力を要することが多々あり、多方面の方々と知り合う機会が増えることが挙げられ、このとこも業務のモチベーションの維持につながっています。”
  • “ルーチンワークは地味ですが、検疫の強化となると危機対応機関としての対応が求められます。やりがいはあると感じます。”
【キャリアパスについて】
  • “検疫所に入職する際は、ほとんどの医師が未経験ですので、皆、同じスタートラインに立つことができます。臨床とは異なった行政という勤務環境で、専門科、臨床年数等の異なる、様々なバックグラウンドの医師が入職しています。”
  • “研修会への参加を積極的に勧めてくれる上司が多く、様々な学会の認定や専門医を取得する機会に恵まれています。”
  • “保健所と業務的に共通項が多く、対象が地域住民であるのか、入国者、海外渡航者の違いがあります。行政職として、検疫所も選択の一つとして検討して欲しいと思います。”

検疫所イメージキャラクター

検疫所の認知度向上の取組の一環として、検疫所職員の投票をもとに、イメージキャラクターを選定しました。

実際に働いている医師からのメッセージ

検疫医療専門職として、現役で活躍されている方々より、検疫に従事することになったきっかけや検疫医療専門職としての経験・働きがいをご紹介します。下記よりご覧ください。

<連絡先、お問い合わせ先>

ご質問・お問い合わせはこちら

担当:厚生労働省 医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全企画課 検疫所業務管理室 人事・給与係
住所:〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2
電話番号:代表 03-5253-1111(内線2466)/ 直通 03-3595-2333
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