記事・インタビュー

2019.12.25

感染症水際対策を担う一員として

横浜検疫所 検疫医療専門職
梅田 恭子

検疫医療専門職として横浜検疫所に勤務し、4年目になります。現在、4歳になる息子の育児のため、育児時短の制度を利用しながら働いています。検疫医療専門職の業務と、泌尿器科医だった私が検疫所で働くことになった経緯をご紹介します。

横浜検疫所での検疫医療専門職の業務について

検疫所は、エボラ出血熱やMERS(中東呼吸器症候群)など、国内には常在しない感染症の病原体が国内に侵入することを防止することを目的として、全国の海港、空港に設置されています。海外に行かれたことのある方は、帰国時に空港の検疫ブースでサーモグラフィーによる発熱チェックを受けたことがあるかと思います。そのため、検疫所というと空港をイメージしがちですが、検疫所は海港にも設置され、日本に来港する船舶の検疫を担っています。

仕事は基本的に、医師としてよりも検疫官としての業務が中心になります。船舶の検疫は、今はほとんどが電子申請を利用した書類審査となっているので、申請された内容に疑義がないかを確認する作業が主となります。また、船内の状況をじかに確認するために訪船することもありますし、船舶衛生検査(船の衛生状態を確認して国際証明書を発行)に同行する、港湾衛生調査のため埠頭周辺にネズミや蚊を捕らえるための捕獲器をしかけに行く、なども業務の一環です。

医師としての専門性が要求される業務では、主に予防接種業務(横浜検疫所では黄熱予防接種を行っています)や、電話による予防接種相談、帰国後の健康相談の対応があります。そのほか、横浜港に入港する船舶に病人が発生した場合には診察したり、客船の入港前、船医からの情報を基に検疫感染症の疑いがある病人の発生の有無を判断したりします。そのためには、日々世界中の感染症の発生状況にアンテナを張り、情報を収集することも重要な業務の一つです。

母として、検疫官として

私は、もともとは泌尿器科医として臨床の現場で働いていました。そんな私がなぜ検疫所に勤務するようになったかといいますと、やはりライフスタイルの変化が大きな理由です。

性格上、いくつかのことを並行して行うことが苦手なため、結婚を機に家事に集中したいと考え、定時勤務である保健所に勤務しました。結局、臨床の現場のほうが自分に合っていると感じ、2年で病院勤務に戻りましたが、妊娠を機に、改めてその後の働き方について考えました。

泌尿器科は外科系で手術もあり、夜間の急患などで呼び出されることも比較的多いため、育児をしながらの勤務は私にとって困難に思われました。もちろん外来診療のみという勤務形態の選択肢もありましたが、それよりは、育児をしながらでもフルタイムで働ける職場で、新たな専門性を身に付けたいと考えました。

以前、勤務したことのある保健所も選択肢の一つでした。しかし、空港や港で働くことや、学生時代に得意だった英語を活かせるグローバルな仕事に憧れがあったこと、さらに自宅から近いことも後押しとなり、横浜検疫所の医師募集に応募しました。

現在、4歳の息子をほぼ1人で育てながら(平日は夫の協力が期待できないため)、育児時短制度を利用し働いています。職場には育児をしながら働く女性が多く、職場の理解や協力が得やすいため、勤務時間内は充実して働くことができています。

検疫に興味がある方へ

最後に、港で働く検疫医療専門職の醍醐味をお伝えしたいと思います。

まずは立地です。海港検疫所の多くは海を臨む場所に設置され、横浜検疫所でも毎日、窓からベイブリッジを行き交う船を見ながら働いています。普通はなかなか乗船する機会のない貨物船や客船の内部を見ることができたり、沖に停泊している船舶の検疫のために、傭船でクルーズできたりするのも検疫官ならでは、です。海外を行き来している船の中はエスニックな香りがして、慣れない頃は、緊張とともに異国に来た感覚を味わったものでした。

そして自治体や警察、海上保安部など、水際対策に携わる多くの他機関の方々と、訓練や会議などを通して協力・連携する機会を多く持てることも、得がたい経験です。

年に1、2回、夜間休日に緊急で検疫に行かなくてはならないことがあるなど、大変に感じる時もありますが、日本の水際を守る一員として働いていることを、日々誇りに思っています。

 

検疫医療専門職は行政職でありながら、医療現場で培ったリーダーシップを要求されることも多く、医師として十分にやりがいのある職業です。もちろん感染症の知識を求められますが、私が泌尿器科出身であるように、入省後に研修等で学ぶことができます。社会医学系専門医を習得することも可能ですので、検疫所にとどまらず、やる気次第でさらに可能性を広げることもできるのではないでしょうか。

<プロフィール>

梅田 恭子

梅田 恭子(うめだ・きょうこ)
横浜検疫所
検疫医療専門職

2002年信州大学医学部卒業後、同泌尿器科入局。2016年4月より横浜検疫所検疫衛生課に検疫医療専門職として勤務。

<連絡先、お問い合わせ先>

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梅田 恭子

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