記事・インタビュー
「国内外を問わず、離島やへき地でも一人で闘える医師を育てる」という理念の基に設立された合同会社ゲネプロは、へき地医療トレーニングの最先端を行くオーストラリアの仕組みを参考とした研修プログラムを提供し、「Rural Generalist(へき地医療専門医)」の育成を支援しています。
救急医としてキャリアを築きながら、医師を育てることを使命とし、起業するに至った代表の齋藤 学先生にお話を伺いました。全3回にわたって、研修プログラムの詳細や先生が歩んでこられた道、そして離島・へき地医療への想いをお届けします。今回は、ゲネプロで実施している研修プログラム、そして研修生/卒業生の進路などをご紹介します。
最大15ヶ月におよぶ研修プログラム
2017年4月にスタートしたRGPJでは、1年間のプログラムと、希望制で3ヶ月間のエレクティブ・トレーニング(選択研修)を用意しています。最初の1年間はゲネプロが指定した研修病院で、外来や病棟管理はもちろん、在宅医療や内視鏡検査など幅広い経験を積みながら、研修先である離島やへき地の医療に貢献してもらいます。
また、離島やへき地医療の最前線にいる指導医は忙しく、時として充分な教育が受けられない問題を解消するため、ウェビナーやワークショップ等で知識・手技を補強できる体制を整えています。
とはいえ、いきなり3ヶ月も海外に行くと、生活環境は大きく変わりますし、壁にぶつかったり途中で嫌になったりしてしまいます。そこで渡航前に1週間程度、肩ならしとしてRMA(Rural Medicine Australia)など、へき地医療関連の海外学会に参加して、英語で学会発表する機会を設けています。これにより自分の英語力不足を痛感して勉強に励む、といった準備ができるわけです。
RGPJ研修生/卒業生の進む道
研修生の志向は3つに分けられます。
- 海外研修に興味がある人
- 離島・へき地医療に興味がある人
- 自分のキャリアに迷って新しい自分探しのために参加する人
専門科目は救急、総合診療が多く、泌尿器科や整形外科、公衆衛生と多彩です。平均年齢は30代後半ですが20~50代までと幅広く、「医学部以外の学部を卒業してから医師になった」という遠回りをしてきた方や、医療資源の不足する環境でがむしゃらに働いて一気に実力を身に付けたいという方もいます。
RGPJの卒業生はまだ1期生・2期生の16人だけですが、もともと所属していた医療機関に戻る人もいれば、自分の地元などに帰って研修で学んだことを基に地域医療を立ち上げようとする人もいます。後者はまさに、私たちの会社名である「ゲネプロ(舞台用語で最終リハーサル)」を体現してくれる人たちですね。自分探しの一環として参加した人の場合は、私たちが一緒に今後のビジョンや勤務先を考えます。
1期生の中には、オーストラリアにアプライした人もいます。もともと海外志向があり、オーストラリアのRural Generalist(へき地医療専門医)を知って「これだ」と思い、IELTSやAMCを頑張って受験しました。今はAMCのPART1に合格したので研修先を探している段階です。ゲネプロ卒業生への支援として私も9月にオーストラリアに行き、面接などのサポートをします。卒業生たちもウェビナーの講師をしてくれたりしますので、ギブ・アンド・テイクですね。
RGPJの最大15ヶ月という研修期間は、短いようで長いものです。それなりの覚悟がなければ途中で挫折してしまうこともあります。しかし、受講したからには学んだことを、ぜひまた離島・へき地で活かし、次の世代の医師を育てていってほしい。そのためにもRGPJやゲネプロをさらにたくさんの人に知ってもらい、1人でも多くの夢を持った先生に来てもらえる環境を整えることが、これからの課題です。
<プロフィール>
齋藤 学(さいとう・まなぶ)
合同会社ゲネプロ代表
離島・へき地に医療をつなぐ ゲネプロ
齋藤 学
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