記事・インタビュー
民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。
医学書を読むのが大好きな先生方が初学者に向けた医学書解説・比較の医学書レビューと、
日々医師のために医学書を作る出版社の担当者がおすすめの良書をこちらで集めて発信していきます。
購入先のリンク(Amazon)も掲載していますので、お気に入りの書籍あればご購入ください。
レビュー著者:三谷雄己先生(踊る救急医先生)
「ICU患者さんだし、やっぱり毎日採血検査とレントゲン検査は必要だよね…?」
「尿量が減ってきたからとりあえずBA挿入して透析しようか…?」
「急性期は状態が不安定だし、とりあえずしっかり深鎮静で管理しようか…?」
これらは一見、日々のICU診療で妥当な判断に見えますが、近年のICU診療のトレンドを踏まえると必ずしも正しいとは言えないかもしれません。
普段重症症例に慣れていない研修医の先生方にとっては、人工呼吸管理をしている患者さんであれば、毎日きちんと検査して、状態がよくなるまではしっかりと薬剤で寝かせたほうが安全だと感じるかもしれません。
しかし、近年の集中治療のトレンドとしては、急性期であってもなるべく早期に離床を目指し、必要最低限の鎮静で管理するほうが、ICU滞在日数や人工呼吸器からの離脱が早くなるといわれています。
また、時として重症症例だという理由だけで、漫然とルーチン検査を行っているケースも散見されますが、これらは必ずしも妥当な判断とは言えないことも多々あります。
今回は、そんな近年の集中治療のトレンドを体系的にわかりやすく学ぶことができる良書である、太田啓介著『Less is More 考える集中治療』ご紹介いたします。本書を読むことで、今後ICU診療に携わる際、患者さんにとって真に必要な治療方針を設計できるマインドを身に付けることができることでしょう。
これから皆さんにご覧いただくのは、研修医時代に100冊以上の医学書を読み、その中でもオススメの医学書レビューを月5冊以上書いていた、ある救急科専攻医のレビューです。
医学生や研修医、各分野の初学者の気持ちが痛いほどわかるので、是非この本を手に取ってみたいと思っていただけるようなレビューを心がけているとのことです!
これから何の勉強をしようか迷っている方は、是非参考にしてみてください!
- 書評『Less is More 考える集中治療』その薬剤・検査は本当に必要ですか?
1.本書のターゲット層と読了時間
個人的に感じた、本書のターゲット層と推定読了時間は以下の通りです。
集中治療の基礎がある程度わかっている若手医師や、ICU診療に携わるベテランの先生方にとっても面白い内容になっていると感じます。
大きな文字でページ数も程よいので、ちょっとした隙間時間に読了できるのも魅力です。
【ターゲット層】 初期研修医(2年目以降)から後期研修医・ICU診療に従事する医師全般
【推定読了時間】 2~3時間程度
2.本書の特徴
本書は、静岡県立総合病院集中治療センター集中治療科/急変対応科の太田 啓介先生が執筆、以下の2点が大きな特徴です。
●ヨーロッパの集中治療医学会雑誌「Intensive Care Medicine」の「less is more」をもとに、日本の実情も踏まえながら近年のICU診療のトレンドを学ぶことができる。
●様々な介入の善し悪しを含めた「やらないメリット」を知ることで、重症度にとらわれない適切な介入を心がけることができる。
また、本書を読むことで学べる項目の特徴的なものをピックアップすると、以下のようになります。
●ICU診療における早期離床の重要性●早期人工呼吸器離脱に向けた標準的な離脱評価●真に腎代替療法(RRT)が必要な状況とはいつか●抗菌薬の適切な投与期間設計やスペクトラムの選択
ICU診療に従事する医師であれば、一度は学んでおくべき最重要概念ばかりだと思います。これら以外にも、集中治療で重要視されている診療のエッセンスを数多く学ぶことができます。
3.個人的総評
本書の特徴はなんと言っても、圧倒的なわかりやすさと手に取りやすいコンパクトなボリューム感。にも関わらず、集中治療のエッセンスがこれでもかと凝縮されている点でしょう!
ページ数も多すぎることなく完結にまとまっているので、苦痛を感じることなく通読することができます。
そして、文字のサイズが一般的な医学書よりも大きく設定されているのも、読みやすく好印象でした。
研修医や非専門医が、集中治療のポイントを簡単に押さえるのに適した難易度で、新しいエビデンスの引用も多く、ベテランの先生方にとっても参考になる点が多いのではないかと感じます。
一度通読してChoosing Wiselyについて学んだ後でも、半年後や一年後はもちろん、今後医師として診療に当たる上で一生活用可能な診療概念を学ぶことができる1冊なのではないでしょうか。
Choosing Wiselyの論調で展開されていく文章の流れはとても綺麗で、読んでいて心地よい書籍に出合えたことに感動を覚えました。さらに、読了感はここ最近読んだ書籍の中でもトップレベルでした。
僕自身のオススメ度が高いのは総評を見ていただければわかると思いますが、何よりアマゾンでの評価の高さやレビューを読むと、本書がいかに素晴らしいかがわかると思います。
一方で、あくまで個人的な印象ではありますが、気になった点としては、集中治療の基本をある程度理解した後に読み始めなければ、一部の用語に関しては難解に感じてしまう可能性があると感じたことが挙げられます。
特に、ICU診療に不慣れな初期研修医の先生方や医学生の皆さんは、一度他の初学者向けの本で勉強してから読み進めるとよいのではないかと感じました。
これらは本書の個人的な評価であり、しかも何様だよと言われてしまうことは重々承知ではありますが、僕は
本書は近年のICU診療のトレンドを短時間で学ぶのに最適な1冊である!
と感じました。自分自身、まだ理解できていない難解な内容も多々ありましたので、何度も繰り返し読んだり、引用文献にあたったりして理解を深めていけたらなと思っています。
4.おすすめの使い方・読み進め方
【本書のおすすめの読み方・活用方法】
●これまでのICU診療を思い出しながらまず通読!
●興味のある分野、読みながら難しく感じた分野について再度読み直す(引用文献もチェック)
個人的にオススメの使い方をご紹介します!
僕個人の意見としては、本書は比較的通読に適した本なので、まずはこれまでのICU診療を思い出しながら読み切ってしまうことをオススメします。
少し難しい用語や概念が出てきても、さらっと一読してしまってから、ICU診療の全体像を学ぶのがよいでしょう。その後は、興味のある分野や難しいと感じた部分を改めて読み直して、理解を深めていきます。
ただ、書籍の内容をあまり深く理解せずに、丸暗記してしまうと、実臨床に正しく適応できない可能性がありますので注意が必要です。
どんな患者さんにも応用が利くような、そもそも適応となる症例を見極めるには、やはり根拠となる引用文献にあたるのは非常に大切だと思います。
少し面倒に感じるかもしれませんが、難しいと感じたところほど原著論文を探して読むことが、結果として本質を理解する上での最短ルートであると僕は思いますので、気になる文献に関してはぜひ検索して読んでみてくださいね。
そのあとは実際の症例を通じて、インプットとアウトプットをたくさん重ねて、学びを深めていきましょう!
5.医書レビュー
6.まとめ
本書は近年のICU診療のトレンドを短時間で、わかりやすく学ぶのに最適な1冊です!
この1冊を通じて、今後ICU診療をするのがもっと楽しくなってきます! 少なくとも僕はそうでした(笑)。
今後の学びや業務をより良いものにしたい方は、是非手にとっていただきたい1冊です◎
以下に要点や基本情報をまとめましたので、
購入する際の参考にしていただければ幸いです。
この記事を読んで参考になった方、面白いと思ってくださった方はハートマーク(お気に入り)をタップして今後も定期的に覗きに来ていただければ幸いです。今後も定期的に記事を更新していく予定ですので、みなさまのリアクションが今後の記事を書くモチベーションになります!
★今回の書籍以外にも、踊る救急医先生の医学書レビューはこちらのページで読むことができます!
想定読者や各診療科ごとにわかりやすくまとめられているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
詳細はこちら≫https://dancing-doctor.com/2021/03/31/review-reader/
<プロフィール>
三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター
立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。
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