記事・インタビュー

2020.03.04

山あり谷あり谷底あり! ドイツ留学(14)

ドイツはノルトライン=ウェストファーレン州にあるボン大学で循環器内科のフェローとして働いている杉浦 淳史です。
この記事では、日本生まれ日本育ちの循環器内科がドイツでの研究・臨床留学の中で経験するさまざまな困難・葛藤・喜びを、ありのままにお伝えします。

山あり谷ありの毎日

三尖弁MitraClip治療

気分が落ち込みがちな1月。朝8時でも真っ暗で、夕方4時過ぎには日が沈む。というか、分厚い雲で太陽が見えない。クリスマスが終わったドイツで冬を過ごしていると、中世ヨーロッパの暗い感じの歴史も理解できるような気がするくらい、どんよりとしてきます。

僕は同僚の会話が聞き取れないと、自ら話すことがどんどん減り、輪から離れていく負のスパイラルに入ります。留学した人は経験あると思いますが、こんな日には、僕は3つのことをします。
「よく寝る」
「原因の語学力を改善する」
「雑談の準備をしていく」

語学力を向上させるためにできる僕のルーティンは、朝にリスニング、スピーキング、シャドーイングを行うことです。それでも1月は特に天候の影響(暗い・寒い・太陽がない)もあって、「早く日本に帰りたい」「仕事に行きたくない」という気持ちを抱えて出勤することが多かったです。

そんな中、カゼをひいて体調も悪く、最高に行きたくなかったある日、朝1件目のTAVIの後に同僚のSebastianが、「Atsushi、今日この後のボスの治療、彼と一緒にやってくれないか? 僕は講演があって無理なんだ。」と言ってきました。助手の役割が大きいTAVIをボスと二人でやるのは初めてでしたが、そこはイエスマン日本人、「もちろんできるよ!(笑顔)」。

治療までの時間、合併症時も含めたイメトレを繰り返し、2件のTAVIは何とかスムーズに終了。するとボスが最後にいきなり、笑顔で思いっきり僕の背中を叩いてきました。「Spitze! Klasse!(褒め言葉)」
ああよかった〜。そして、その後の三尖弁MitraClipでは、いつもより多くのことを教えてくれました。

この、毎日山あり谷あり生活、今は生きるのに必死だけど、いつか懐かしく思うのだろうか……。

移民のメンタル?

最近の僕の毎日は、家族で過ごす以外の時間は以下の3つで構成されています。
(1)データ解析・論文執筆
(2)ドイツ語学習
(3)カテーテル治療

ただ、(1)と(2)がどうにも相反します。(1)は黙々と自分の中に入り込んでいくような感覚で、(2)は覚えた単語やフレーズをオープンにどんどん使っていく感覚だからでしょうか。(1)に励んだ後はひどく語学力が低下しますし、(2)ばかりやっていると(1)に使う時間がなくなります。

先日も、同僚たちが話すことが全く聞き取れず、僕が話している言葉も拾ってもらえないことがありました。そんな時のカテーテル治療や雑談はスーパーつらいです(涙)。最初は交わっていたはずの陣形から、次第に置いてきぼりになります。

そんな時に相談する相手は、移民仲間です。医者、医学生、事務職員、清掃員。職種に関係なく、異国に入ってきて言語と文化の違いに苦しんだ経験のある彼らとは、お互いになんとなく仲間意識があったりします。ドイツ在住8年目のアゼルバイジャン出身の医学生のダヤナートに相談した時に彼が言った言葉は、僕の胸に突き刺さっています。

「ネイティブが話しているのが分からないことはよくあるよ。でも気にしちゃいけない。シンプルに、次に進むだけさ!」

コロナウイルス

ここからは現在、全世界に猛威を振るっている「コロナウイルス(COVID-19)」について、ドイツの様子をお届けします。
2月の比較的早い段階でドイツの南部に4人の感染者が確認されましたが、特にいつもと変わる様子はなく、ただそれでも同僚達とは常にアジアの感染動向を確認していました。2月下旬になりイタリア北部でコロナ感染者の死亡事例が相次ぎ、さらにドイツ国内でも感染者数が増えてきたことで、色々と動きが出て来ました。
ここNordrhein-Westfalenは人口と経済が最も集まっている州であることもあり、2月末の時点、ドイツ国内で最も感染者数が多くなっています。とは言うものの20名で、中国・日本・韓国に比べればかなり少ないです。そのような中で、主観的な要素もかなり混ぜつつ、ドイツと日本の共通点と違いをまとめてみました。

日本 ドイツ
小中学校 3月から一斉閉鎖を要請 感染が出た地域から即時閉鎖
マスクしている割合 大多数 非常に稀
有症状時の対応 電話で特別相談窓口へ 電話で家庭医にまず相談
スーパーの買い占め傾向 あり
2月下旬から
あり
2月下旬から
買いだめ食品 米、カップラーメン パスタの麺
嫌がらせ行為 中国人に対して一部 アジア人に対して一部

こうやって見てみると、非常に面白い。今回、日本の対応は国民も政府も遅く、かつ適切ではなかったのかもしれませんが、逆にドイツの小中学校の閉鎖の潔さには感心します。スーパーの買い占め行為が起きるのをみると、日本人もドイツ人も本質的に結局同じ人間なんだなと、興味深く思います。買い占め行為は全く必要ないと思いますが、ある意味本能的な行動なのかもしれません。

マスクに関しては、正直だれ〜もつけてません。これに関してはもともとマスク着用をほとんどしない文化ですし、友人や同僚に聞くと「だって感染予防効果はないよね」とのことです。うーん潔い。

2020年3月1日現在

<プロフィール>

杉浦 淳史

杉浦 淳史(すぎうら・あつし)
ボン大学病院
循環器内科 指導上級医(Oberarzt)

1983年千葉生まれ。2008年福井大学医学部卒業。
論文が書けるインテリ系でもないのに「ビッグになるなら留学だ!」と、2018年4月からドイツのボン大学にリサーチフェローとして飛び込んだ、既婚3児の父。

杉浦 淳史

山あり谷あり谷底あり! ドイツ留学(14)

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