記事・インタビュー

9月下旬、臨床留学に備えて語学学校へ通うべく、まずはミュンヘンへ向かうことにしました。ちょうどその頃ミュンヘン中央駅に多くのシリア難民が到着したことが世界的なニュースになり、ミュンヘンが連日報道されている中での出発となりました。
ミュンヘン到着
ミュンヘン空港は街の中心からわりと離れていて、街の中心であるマリエン広場まではSバーンと呼ばれるドイツ国鉄のローカル線で40~50分かかります。大量の荷物を抱え2駅隣りのミュンヘン中央駅に到着。ニュースでは大変そうだったけど実際はどうなっているのかなと、不安と若干の好奇心を持って駅に降り立ちました。
――ミュンヘン中央駅前には恐ろしい光景が広がっていました。
辺りは酒の匂いが充満し、あちこちで奇声が聞こえ、突然走り出す若者もいて、大声で歌っている奴もいる。ああ、とんでもないところに来てしまったなと、しばらく固まっていました。もう引き返せない、大丈夫かな・・・・・・
・・・・・・
あれ? そういえばイスラム教って酒飲んでいいんだっけ? というか、よく見れば何となくみんな楽しそう? いや、そもそも騒いでいる連中はアラブ系ではないみたいだけど?
こういうの、どこかで見たことあるなとしばらく記憶を掘り起こしていくと、学生時代の学園祭の打ち上げの光景にそっくりであることに気が付きました。

実はミュンヘンでは9月中旬から10月上旬にかけて「オクトーバーフェスト」が開催されていて、会場のみならず、町全体が酔っ払いだらけになります。私がミュンヘンに着いたのはちょうどそのオクトーバーフェストが始まったばかりの時で、それはそれは浮かれた空気が充満していたのでした。
心配していた難民の集団はどうなっていたかというと、当時は国がミュンヘン郊外に住居を用意し、そちらに移っていたそうです。彼らは宿舎で長旅の疲れを癒し、まずは自分の家族を探したそうです。私が彼らを街で見かけるのは数ヶ月後のことになります。
ミュンヘンのオクトーバーフェストの会場はフェスト以外の期間は空き地になっています。移動式遊園地も、フェストが終わればあっという間に片付けられます。ちなみに、このフェストの数週間だけ働いて、一年食べていけるくらい稼いでいる人もいるそうです。
語学学校
お祭り騒ぎを尻目に、生活のセットアップに奔走しました。ミュンヘンくらい大きな都市になると、語学学校はたくさんあります。大体どの語学学校でも住むところの斡旋をしてくれますが、大きな語学学校は独自の寮を持っている場合があります。
私は最大手の語学学校であるゲーテを選び、そこの寮に入ることにしました。というか、日本にいたときには、どんな語学学校があるのか具体的な情報を見つけるのが大変だったので、ゲーテの他に選択肢があることすらよく知らなかったのです。
ゲーテはとにかく授業料が高かったです。安い語学学校の倍以上していた印象です。しかし講師陣はとても充実しているし、生徒同士が仲良くなるためのイベントも毎週行われていて、電車に乗って遠足に行ったり、ミュンヘンの観光地を巡ったり、なんならみんなでクラブに行ったりもします。あと、ゲーテではどのクラスにもドイツでの就労を目指す医師たちが数人ずついました。各国の医療制度なんかをいろいろ聞けるのも面白かったですし、卒業後もお互いに情報を交換しあったりできる友人もたくさんできました。
語学学校時代はマジでがんばりました。最初は(最後まで?)授業はほとんど理解できなかったのですが、宿題もきっちりやって、毎日ドイツ語で日記を書いて添削してもらいました。また語学学校から歩いていける距離にあるミュンヘン大学の図書館で、夜12時まで毎日勉強していました。
図書館の前にはルートヴィッヒ通りという大きな道路があり、その南端にはオデオン広場があります。パレードやお祭り、デモなど、ひっきりなしに人が集まるイベントが開催されている場所です。100年前にはヒトラーが起こした「ミュンヘン一揆」で銃撃戦もあったそうです。
ある日、いつもどおり深夜に図書館から出ると、日中のデモがまだ続いていたことがありました。ドイツ語がさっぱりだった時期だったので、デモが何を主張しているのかよく分からなくて、デモの横を通っても大丈夫なのかなーと少し不安になりました。
しかしよく見ると、デモの中には制服の警官やパトカーがかなりの数、入り込んでいました。翌日語学学校の先生に聞いてみたところ、ミュンヘンではかつてナチスを生み出した反省もあり、デモをする方もコントロールする警察の方もしっかりルールを守って行うので心配することはないよ、とのことでした。
語学学校にも慣れてきて、どんどん勉強を進めるうちに「もっとドイツ語に触れなくては」と思うようになりました。一番いいのは、きっとドイツ人の何かしらのコミュニティに入ることだろうと考え、おもしろそうな情報がないかあちこち聞いて回ることを始めました。
次回はその辺の話から続けていきたいなーと思います。
<プロフィール>

安 健太(あん・けんた)
カールスブルグ心臓糖尿病センター
心臓血管外科 医師
安 健太
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