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2025.08.21

著者が語る☆書籍紹介 『老年医学のトビラ』

民間医局コネクト編集部です。民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。

今回は、『老年医学のトビラ』を、著者の山田 悠史先生に紹介いただきます。

著者が語る☆書籍紹介 『老年医学のトビラ』

老年医学のトビラ
山田 悠史 (監修)/メディカル・サイエンス・インターナショナル
発刊:2025/8/29
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著者解説

マウントサイナイ老年科の山田悠史と申します。 この度、執筆・監修を担当した一冊の本が、メディカル・サイエンス・インターナショナル社から出版されることになりましたのでご紹介させてください。その名も『老年医学のトビラ』です!これは、僕がニューヨークで出会った、高齢者診療の世界を形にした本です!
正直にお話しすると、僕が日本で総合内科医として働いていた頃、高齢者の診療にはそれなりに自信がありました。目の前には常に高齢の患者さんがいたので、「老年医学のトビラの開き方は無数の経験を通してとっくに知っている」と思い込んでいたのです。
しかし、ニューヨークで老年医学の扉を叩いた時、静かに、しかしはっきりと悟りました。 僕が開けていたのは、本物の『老年医学のトビラ』とは違う、別のトビラだったのだと。
その衝撃や、目から鱗が落ちるような発見の数々を、日本の医療現場で奮闘するすべての医師に届けたい。そんな熱い想いが、この本が生まれた原動力です。
高齢者診療は、一つの疾患を治すだけでは決してうまくいきません。では、複雑に絡み合った問題をどう整理し、患者さんにとって本当に大切なケアに繋げるのか?
その答えが、僕がニューヨークの師たちから授かった『5つのM』という鍵です。
■ Mobility(身体機能)
■ Mind(認知機能・精神)
■ Medications(薬剤)
■ Multicomplexity(多疾患併存・複雑性)
■ Matters Most(最も大切なこと)
この驚くほどシンプルで、しかし本質的な5つの視点があれば、日々の診療が劇的に変わります。患者さんの全体像が見え、真のニーズに寄り添うことができるようになります。
この本は、これから高齢者診療の海へ漕ぎ出す研修医の先生方に向けた入門書です。 しかし、かつての僕のように「高齢者診療の経験は十分にある」と感じている先生方にも、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。きっと、今見えている景色とまた違った景色が見えるはずです。
僕がニューヨークで目にした“新しい景色”を、皆さんにも見てほしい。 素晴らしい執筆陣と共に、そんな想いを込めて作り上げました。
『老年医学のトビラ』は2025年8月末発売です。 どうぞ、よろしくお願いいたします!

目次

序章 老年医学のトビラを開く鍵
高齢患者を担当することになったら…
主要なプロブレムにフォーカスしすぎず,「5 つのM」で患者の全体像を把握し,真のニーズを見極めよう

第1章 転 倒
転倒した患者をみたら…
原因を特定し,できるだけ取り除き,将来の転倒を防ぐ

第2章 せん妄
「入院患者が暴れている」と呼ばれたら…
すぐに「抗精神病薬」と早合点せず,まず落ち着いて診断し,隠された複数の原因を追究する

第3章 認知症
この患者さん,認知症かもと思ったとき,認知症をもつ患者を受け持ったとき
むやみに機能評価に走らず,生活を診る気持ちで対応しよう

第4章 高齢者のうつ病,不眠
うつ病も不眠も,加齢とともに増加する疾患です
専門医へ紹介する前にできることは?

第5章 ポリファーマシー
「いつもの薬を処方しておこう…」ではなく
その処方の真のアウトカムと不利益を考えて,目の前の患者にとって適切か見直す

第6章 高齢者の漢方薬
漢方薬は「選んで終わり」?
カンポウを求める患者の希望を深掘りしてみよう

第7章 フレイル
聞いたことはあるけれど,いまいち何だかわからない…
高齢者の臨床像の解像度をぐっと押し上げるのに役立つ!

第8章 尿失禁と便秘
よくあること…と侮るなかれ
排尿・排便の問題はQOL に大きく影響する!

第9章 「見えない」
日常生活で各方面に影響を及ぼす視覚
老年期に特有の問題を学ぼう

第10章 「聞こえない」「においがわからない」
コミュニケーションや生活上の困る問題につながる
難聴,嗅覚障害について整理しておこう

第11章 「食べられない」
「全然食べてくれないんです」と相談されたら…
年のせいでしょう,と安直に判断せず,可逆性の要因・病態をしっかりと鑑別しよう

第12章 高齢者のスクリーニングと予防
がん検診や予防接種は「万人向け」でも「◯歳だから」でもありません
「何を」「いつまで」行うか個別化して提案しよう

第13章 事前指示書の作成
「まさかこの患者さんが…」とならないように
作成のプロセスは,患者と家族の人生,価値観にふれる対話でもある

第14章 ケアのゴール設定
患者,患者家族,主治医の意見がすれ違うときは
意思決定者を見極め,共同意思決定(SDM)の考え方に沿ってゴールを設定しよう

付録 加齢による正常な変化

<著者プロフィール>

山田 悠史

山田 悠史(やまだ ゆうじ)

マウントサイナイ医科大学老年医学科アシスタント・プロフェッサー
2008年慶應義塾大学医学部卒業。東京医科歯科大学医学部附属病院初期研修などを経て,2015年からマウントサイナイ大学ベスイスラエル病院内科レジデント,2020年からマウントサイナイ大学老年医学科フェロー,2022年から現職。
日本総合内科専門医,米国内科専門医,米国老年医学専門医などの資格を有する。
日本国内では、ポッドキャスト「医者のいらないラジオ」のパーソナリティ, 合同会社Ishifyの共同代表, 有志団体めどはぶの代表を務める。
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