記事・インタビュー
今回は、「患者の満足を第一に考え、質の高い医療を提供する」を理念に、地域医療支援病院として群馬県高崎市を中心とする地域の医療を支えている日高病院。中でも腎臓病治療に関しては、腎臓外科、腎臓内科、平成日高クリニック・透析室の3つのセクションが連携し、「腎臓病治療センター」として、総合的な医療を提供しています。群馬県だけでなく県外の患者様や医療関係者からも信頼を集める同センターの一翼を担う腎臓外科の添野真嗣先生と久保隆史先生に、科の特徴などについて伺いました。
<お話を伺った方>
添野 真嗣(そえの・まさつぐ)
腎臓外科部長
腎臓治療センター副センター長
・出身:東京都出身 群馬大学卒
・専門領域:腎移植・バスキュラーアクセス・腎不全外科
・認定医・専門医など:日本移植学会 移植認定医・代議員、日本外科学会 専門医・指導医、 日本透析医学会 専門医・指導医、日本臨床腎移植学会 腎移植認定医、臨床研修指導医
久保 隆史(くぼ・たかふみ)
血管内治療センター副センター長
腎臓外科部長
・出身:宮崎県出身 島根医大卒
・専門領域:バスキュラーアクセス・腎移植・循環器
・認定医・専門医など:日本内科学会認定内科医、日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医、日本心臓血管インターベンション治療学会認定医、日本移植学会移植認定医
シャント手術、PTA、腎移植を3本柱に腎不全患者様をケア
Q:腎臓外科ではどのような診療を行っておられるのですか。
添野 先生
シャント手術、PTA、腎移植の3つを柱として、腎不全の患者さんへの手術やカテーテル治療をメインに行っています。他の病院にはあまりない診療科なのでイメージしづらいかもしれませんが、腎不全患者さんに対する様々な外科手術を行っているので、『腎不全外科』と言い換えてもいいかもしれません。末期腎不全の患者さんは最終的に血液透析、腹膜透析、腎移植のどれかを選択しなければなりません。どの選択を行っても、手術を行う必要があります。当科では腎臓内科が受け持つ保存期腎不全の患者さんが多いこと、平成日高クリニックなどの関連透析施設が抱える透析患者さんが多いことなどから、絶えず手術の依頼を受けています。長年この狭い分野をコツコツとやってきたっこともあって、群馬県内はもちろん、県外からもたくさん患者さんを紹介して頂ける様になりました。症例数が全国トップクラスになったのは、地域の皆様に信頼して頂いた結果だと思っています。
Q:主な症例数を教えてください。
久保 先生
2021年に実施したシャントPTAは約2,700件でした。これは我々腎臓外科メンバーが日高グループ内の病院(日高病院、日高リハビリテーション病院、白根クリニック)で施行した全体件数です。毎年、依頼が増えて件数が伸びています。あとはハイブリッドPTAの件数も71件と多かったです。ハイブリッドPTAは血栓除去を手術で行い、その後狭窄部に対してPTAを行う手技で、手術とPTAを同時に行うのでハイブリッドPTAと呼ばれています。フォローアップしている患者さんが増えている影響があると思います。シャント手術は約220件と一昨年に比べ60件程度減りましたが、人工血管移植は20件程度増えて約140件でした。これは近年近隣の病院で、最初のシャント手術は自施設で行い、上手くいかなかった場合は当院を紹介して頂くという流れができているのだと思います。腎移植は31件ありました。当院は2017年から年間20件以上の症例をこなすハイボリュームセンターとなっており、フォローアップしている患者さんも約200名ほどいらっしゃいます。
Q:腎臓外科の体制とお二人のご経歴を教えてください。
添野 先生
私は2003年に群馬大学を卒業後、腎移植に携わりたいと考え、当時日本有数の症例実績があった東京女子医大の腎臓外科(現在は解散)に入局しました。そこでは腎移植だけではなく肝移植や膵移植も行っており大変忙しかったです。シャント手術数も全国トップクラスでしたし、腹膜透析カテーテル留置や副甲状腺の手術などの腎不全患者さんに対する外科も学びました。派遣先の病院で3年間の一般外科研修を積んだ後、当院で腎移植を立ち上げるということで赴任になりました。以後、シャント手術と腎移植に携わっています。
久保 先生
私は2000年に島根大学を卒業後、約10年間は循環器内科で主に心臓カテーテル治療に従事してきました。透析患者さんに携わることも多かったので、心臓カテーテル治療に従事しつつ培ってきたそのスキルを生かせる病院ということで2010年に当院に赴任しました。以後心臓カテーテル治療だけでなく、透析領域では透析シャントPTAや腎移植血管のPTAなどのカテーテル治療に携わっています。
Q:腎臓外科の体制とその他の先生はどのようなバックグラウンドを持った方たちですか。
添野 先生
現在は外科出身が2名、泌尿器科出身が1名、循環器内科出身が1名、腎臓内科出身が2名、消化器内科出身が1名の合計7名で活動しております。出身大学、出身地は様々で、大学の医局とは関係がなく、学閥などはもちろんありません。腎不全患者さんや移植患者さんは全身状態が悪いことも多く、内科的な管理を必要としますので、内科出身の先生が多いので助かっています。色々な専門分野を持った先生が集まっているので、科の中で内科的治療の相談も行えます。例えば循環器疾患のことは久保先生に聞くなど、科の中で解決できることが多いメリットもあります。
医師全員で病棟回診を行い、入院患者様の症例を共有!腎移植も全員参加
Q:腎臓外科における修練生の1日の流れを教えてください。
久保 先生
朝8時30分に医局集合です。9時から約30分間かけてメンバー全員で病棟回診を行います。9時30分からは各々の担当に分かれて、外来、PTA、手術を行います。12時30分からは1時間のランチタイムです。みんなで集まって食事をしながら、患者情報や進捗状況などの情報交換を行っています。13時30分からはまた各メンバーが分かれてPTA、手術を行います。最後に17時に約30分間かけて病棟回診を行い、18時までに帰るという流れです。緊急手術などがあった場合はこの限りではないのですが、予定の手術やPTAに関しては17時30分まで終わらせるように配慮しながらやっています。
Q:病棟回診を全員で行っておられるのはなぜですか。
添野 先生
患者さんに会って話して、患部を触るというのが外科の基本になります。当科では挨拶代わりにシャント音を聴くのがルーティンになりますね。実際に会うと患者さんの情報を共有しやすくなり、どのような手術を行い、どのような結果になったかをみんなで経験できます。毎日2回、みんなで意見交換しながら診療に取り組んでいるので、カンファレンスを行う必要性はありませんね。月2~3回程度の腎移植も全員参加で行っていますし、もちろん内科出身の先生も手術にはいってもらっています。経験を積みたい方には非常にいい環境だと思います。
Q:専門医・認定医資格の取得状況や学会活動について教えてください。
添野 先生
専門医・認定医資格は皆さん積極的に取得されています。当院は、透析医学会専門医や移植学会移植認定医など、腎臓系の様々な資格を取得できる施設です。内科出身の先生の中には腎臓内科専門医を取った方もいます。学会活動は個人に任せています。透析学会に参加している人や、シャントの研究会に行っている人もいますし、私は移植関連の学会に参加しています。珍しい症例も多いので、やろうと思えばいくらでも発表できる内容はあります。
Q:国内留学など研修の受け入れも積極的に行っておられるそうですね。
添野 先生
現在、1名が国内留学で研修中です。これまでも、信州大学、自治医科大学、群馬大学など様々な大学の医局の先生を受け入れてきました。大学の医局に所属したまま当院で1~2年間にわたってシャントやPTA、腎移植などの経験を積んだ後、大学に戻って皆さん活躍されています。親が透析クリニックを開業されていて、継承する前にシャント手術を学びたいということで来られる先生もいます。
東京から新幹線で約50分!活気があって生活に便利な街!高崎
Q:職場の雰囲気を教えてください。
久保 先生
我々の科は医師同士のコミュニケーションが活発で、プライベートでも仲がいいですね。メンバーでLINEグループを作っていて、時にはとりとめもない話で盛り上がることもあります。今は新型コロナのために中止していますが、以前はみんなでゴルフや飲み会を楽しんでいました。朝8時30分に医局に病院内の全ての医師が集めって申し送りや連絡事項を伝える場があるのですが、毎日みんなが顔を合わせるので、科の垣根を越えて相談しやすい雰囲気はありますね。
Q:高崎での生活や教育環境はいかがですか。
添野 先生
高崎は活気があり、大型商業施設や各種設備も揃っていて生活に便利な街です。東京駅までは新幹線で50分とアクセスも良く、東京郊外とほぼ同等の時間で行くことが可能です。気温も東京とあまり変わりませんし、雪はほとんど降りません。県内はゴルフ場が多く、車で1時間もかからずにいけるコースがたくさんあります。温泉も多く、特に伊香保温泉や草津温泉は国内でも有名ですし、温泉好きにはたまたらない環境です。高崎市や前橋市は公立学校が充実していますし、太田市には小中高一貫で英語での教育を行っている学校もあります。新幹線を使えば十分に通学圏内なので、埼玉や東京の学校にお子さんを通わせている先生も多いですね。
Q:最後にどんな方と一緒に働きたいか教えてください。
添野 先生
シャント手術やPTA、腎移植など私たちが手がけている分野を学びたい方なら、どんな方も歓迎します。内科系でPTAや手術に興味があるけど、自分の病院では研修する機会に恵まれない方とかは興味を示してほしいですね。経験がなくてもPTAや手術手技をゼロから教えていますので大丈夫です。科のメンバーは個性派揃いなので、どんなキャラクターの方でも馴染むことができると思います。残業も少なく、休日も上手く分担してしっかり休めるように配慮してますので、オンとオフのメリハリをつけて働ける環境になっていると思います。興味がある方は、ぜひ一度見学に来ていただきたいですね。
添野 真嗣、久保 隆史
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