記事・インタビュー
民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。
医学書を読むのが大好きな先生方より、医学書のレビューをお届けします。
レビュー:三谷雄己先生(踊る救急医先生)
学会発表や院内勉強会で
「せっかく頑張って作ったスライドなのに、見づらいと言われてしまった」
「要点が伝わっていない気がする」
と悩んだ経験はありませんか?
そんなときに手に取りたいのが、本書『レジデントのためのスライドのポイント―伝えるためのプレゼンスキル』です。
スライドの構成や色使い、フォント選びといった“ちょっとした工夫”を押さえるだけで、発表全体の印象は驚くほど変わります。
本書は、「結論を先に考える」「余計な情報は削る」といった基本原則を、豊富な具体例や図表を用いてわかりやすく解説。
初心者から経験を積んだ医療従事者まで、誰もが「すぐに実践できる」テクニックが満載です。
発表の質を一段とアップさせたい方、プレゼンに苦手意識を持っている方こそ、ぜひ本記事でレビュー内容をチェックしてみてください。
あなたのスライド作成スキルが、ワンランク上がるかもしれませんよ?
- 書評『レジデントのためのスライドのポイント―伝えるためのプレゼンスキル』
1.本書のターゲット層と読了時間
【ターゲット層】
研修医や専攻医はもちろん、医学生や「スライド作成のフィードバックを受けたことがない」「自分のスライドをブラッシュアップしたい」という方にもおすすめです。学会や院内勉強会で発表が控えている若手医療者の方は特に、すぐに実践できるノウハウが得られるでしょう。
【推定読了時間】
全192ページですが、図やイラストが多く、ざっと読み切るなら4時間程度で可能です。半日もあれば一通り目を通せるので、「スライド作成直前」のタイミングに読み始めても十分間に合います。
2.本書の特徴
●発表スライドのデザインや構成に関するテクニックを、初心者にもわかりやすく解説
●細かい文字表記のルール(フォント、数値・単位の扱いなど)や、学会発表・論文化までを見据えたフローを網羅
●「文章より図表」「行間を大きめに取る」など、シンプルな原則を重視
●結論(結語)に関係ないスライドは思い切って削る大胆さを推奨
学会発表用スライドは、意外と“なんとなく”で作られていることが多いですよね。
本書では、「結語から逆算してスライド構成を決める」という鉄板の原則が示されており、そのうえで行間調整や色選び、フォント選びなどの具体的テクニックが惜しみなく紹介されています。
ちょっとした工夫で「見やすい・伝わりやすい・時間内に収まる」スライドが作れるようになるのが大きな魅力です。
3.個人的総評
私自身、これまで数えきれないほどのスライドを作ってきましたが、その経験から見ても本書に書かれている原則は実践的で本質を突いていると感じました。
「文章より図表」「現病歴は患者さんが主語で、経過は医療者が主語」など、言われてみれば当たり前ですが意外と徹底できないポイントが多くあり、その重要性をあらためて再認識させられます。
やや物足りないと感じたのは「配色」や「視線誘導」について、もう少し踏み込んだ解説があっても良かったかな、という部分。
しかし、本書はあくまで初学者向けの“原則+すぐに使えるテクニック”に特化しており、ちょうど良いバランスでまとまっていると言えます。
自分が学会発表用スライドを作る前に一読しておくと、あれこれ迷う時間を大幅に減らせるはずです。
4.おすすめの使い方・読み進め方
●発表が決まったらまず一気に通読し、要点を把握する
●自分なりに参考になりそうなページに付箋を貼り、スライド作成時に振り返る
●先輩や同僚のスライドに感じる「なんか良い」要素を、本書の原則に照らして再確認
●学会発表だけでなく、院内勉強会や製薬会社主催の研究会でも応用可能
文章量が多くないので、最初にサッと全体像を掴むのがおすすめ。
その後、実際にスライドを作り始めるときに本書を脇に置いてチェックリスト代わりにすると、「どんな配色をすれば見やすい?」「グラフの目盛りはどうする?」などの疑問がスムーズに解決できます。
スライド作成に慣れてくれば、さらに深い配色論など別の参考書に手を伸ばすのも良いでしょう。
5.まとめ
スライド作りの“基本のキ”が詰まった、若手医療者の必携書です。
小さな工夫がスライドの完成度を大きく左右する——そんな事実をあらためて実感させてくれる一冊です。
先輩のスライドをまねるところから卒業し、自分の考えを正確に伝えるスライドを作れるようになると、学会や勉強会での発表もグッと楽しくなるはず。
私自身、「フォントや配色・レイアウトのこだわり」は先輩のスライドを見ながら独学で学んできましたが、こうした情報を体系的にまとめている本は多くありません。
本書を活用すれば、よりスムーズに自分だけの「デザインの引き出し」を増やせますし、迷いも減るでしょう。
「スライドが苦手…」と感じている方こそ、ぜひ本書を手に取り、次の発表が一段と楽しくなる感覚を味わってみてください!
6.医書レビュー
もし読んでみて、もっと詳しい配色やレイアウトのコツを知りたい方は、SNSやDMなどでお気軽にお問い合わせください。私自身、これまで講演会などの経験から、スライドは100種類ほど作ってきた経験があります。
私自身のスライドづく作りのノウハウや、発表で気をつけているポイントなども共有できるかと思います。
「先輩のスライドを丸ごとコピーするだけ」から卒業し、あなたらしい魅力あるスライドで発表を楽しんでみませんか?
この記事を読んで参考になった方、面白いと思ってくださった方は今後も定期的に記事を更新していきますので応援の程よろしくお願いいたします!
みなさまのリアクションが今後の記事を書くモチベーションになります。
★今回の書籍以外にも、踊る救急医先生の医学書レビューはこちらのページで読むことができます!
想定読者や各診療科ごとにわかりやすくまとめられているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
詳細はこちら≫https://dancing-doctor.com/2021/03/31/review-reader/
<プロフィール>

三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター
立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。
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