記事・インタビュー
はじめに
整形外科を専攻する予定はないけれど、来年から地方の病院で整形外科系の診療をしなければならない…どうしたらいいでしょうか?
来年から外科系の専攻に進む予定で、整形外科関連の書籍を勉強してみたいけど、どの本から読んでみていいかわからないです…。
私は救急科専門医を習得し、現在は整形外科の専攻医として日々研鑽を積んでいます。
その中で、このような質問をよく受けています。
そこで今回は、私が「整形外科に将来進まない研修医にもぜひ読んでおいてほしい」と思う、研修医が読んでおくべき整形外科系の医学書を、4冊に厳選して紹介させていただきます。
私自身は、もともと救急科という他の診療科にいて、現在は整形外科として勤務しつつ勉強しているというキャリアです。
だからこその視点でおすすめできる書籍があると思い、それぞれのおすすめポイントや、どのように活用すべきか、そして私見を踏まえてレビューをさせていただければと思います。
興味がある方は、ぜひこれらの書籍を手に取ってみてくださいね。
1.レジデントノート 2023年1月 Vol.24 No.15 救急・ERを乗り切る! 整形外科診療〜専門医だからわかる診察の着眼点、画像読影・処置・コンサルトのコツを教えます
<まずはこの1冊を読み込む!必読の1冊!>
整形外科をローテーションで始める研修医に、「まず読んでおこう」と勧めるのがこの一冊です。
私自身の経験から言うと、研修医が整形外科系の疾患に出会うのは“主に救急外来である”と思います。
そんな救急外来診療における整形外科系診療の要点を押さえているのが、この一冊です。
レジデントノートの特集での解説となっているため、1〜2時間でさらっと通読できるのも魅力です。
数時間で整形外科関連の救急外来でよく経験する疾患や症状を一通り勉強することができると感じました。
まずはこの書籍を読んで、整形外科系の救急外来診療にどのようなスタンスで臨むべきか、どのような検査が必要なのかということをざっくりと学んでおくと、その後の学びが深まります。
また、腰痛や捻挫といったコモンな症候のみでなく、
- 判断に悩みやすい外傷性頚椎症候群
- 偽痛風などの対応で、病棟でも必要な膝関節炎の知識
等もしっかり学べるのが魅力です。
もちろん、実臨床ではこのレジデントノートで登場する外傷以外にも様々な外傷の疾患が登場してきますが、まずはこの一冊を通読してみることをおすすめします。
2.Gノート増刊 Vol.8 No.2 整形診療 for プライマリ・ケア診療所〜患者説明までよ〜くわかる! よく出会う整形外科系主訴への対応
<非整形外科医向けの本ではじめの一冊にぴったり!>
救急外来ベースではない、一般外来にやってくる整形外科関連の症例の診察について学びたい先生方におすすめの一冊です。
整形外科をローテーションし、それらの外来を見学する前にはこの一冊を読んでおくと良いといつも勧めています。
整形外科の研修にももちろん役立ちますが、今後の医師人生において、地方の病院や田舎の診療所などで勤務する若手医師にとっても役立ちます。
この書籍で登場するような膝が痛い、腰が痛いといった整形外科関連の疾患を抱えた患者さんを診察する機会が多くなるでしょう。
この一冊を読んでおくだけで、整形外科関連の主訴で来院した患者さんの対応について苦手意識が払拭されることでしょう。
中でも、個人的に素晴らしいと思うのは、患者さんに対する病状説明まで詳しく丁寧に書かれている点です。
「わかっていること」「わからないこと」「これから調べること」「今後わかってくるであろうこと」といった様々な視点から患者さんに説明する内容が、文章を通じて学ぶことができます。
私自身も、研修2年目でこの書籍を読んだのですが、目からウロコが落ちる内容が盛りだくさんでした。
現在、整形外科の外来を診察する上でも、非常に役立つ一冊です。
3.フローチャート整形外科診断
<膝が痛い、腰が痛い、様々な主訴での鑑別を学べる!フローチャートを理解すればずっと役立つ!>
整形外科関連の疾患を診察する際に、「腰が痛い、膝が痛い、肘が痛いといった解剖学的な主訴を訴えてくる患者さん」に対して、苦手意識を持ってしまう先生は多いのではないでしょうか。
これらの症例の中で、内因性の救急外来診療については、腹痛や倦怠感といった主訴を経験することも多いですよね。
そして、診察の機会も多いため、学習する書籍も豊富なので、様々な学びが深まります。
しかし、整形外科関連の主訴で来院する患者さんは、外科系の若手医師や整形外科の専門医がそのまま担当してしまうことも多く、研修医が診療する機会が少ないことも苦手意識を増やす一因だと思います。
この書籍は、そんな整形外科的な主訴を持つ患者さんに対する苦手意識を払拭してくれる一冊となっています。
内容の特徴としては、
- それぞれの主訴でどのような鑑別が必要かを解剖学的に順序立てて解説
- 対話形式でストーリー仕立て
となっています。そのため、実際に自分が患者さんと接している気持ちで学びを深めることができ、さらに上級医からのフィードバックを受けながら理解を深めるイメージが持てます。
分量もそこまで多くないため、時間があるときにはこの一冊を通読しておくと良いでしょう。
この書籍のフローチャートを自分なりに暗記してまとめておくことで、フローチャートに沿って患者さんの鑑別を進めることができるのも、視覚的にわかりやすく、お勧めの活用方法です。
生涯活用できる、フローチャートベースの鑑別方法を学んでしまいましょう。
4.骨折ハンター レントゲン×非整形外科医
<絶対に骨折を見逃したくないあなたに!>
整形外科診療=骨折の診断というイメージを持っている方も多いことでしょう。
この書籍は、まさに骨折を絶対に見逃さず、どのようにマネジメントし、今後の治療方針をどう定めていくかにフォーカスされた一冊です。
一点、分量もなかなか多く、一度に読むのはエネルギーが必要なことに注意が必要です。
その分、救急の視点から整形外科診療を解説しており、非専門家が知っておくべきことや、どこまでマネジメントすべきかを明確に示している点が、この書籍の特徴です。
例えば私が特に大好きな概念として、各部位に好発する骨折線を理解しておくことが挙げられます。
実際に診察や画像検査を行う際に、骨折を見逃さずに判別できる能力を養うための重要なポイントです。
本書を読むことで、手、肘、足それぞれの部位で、どの部分に骨折が発生しやすいかをイメージする能力を身につけることができます。
この知識は、一度身につけておくと非常に役立つため、ぜひこの書籍を通じて骨折線のイメージングを習得してください。
また、レントゲンを評価する際のポイントや要点も非常に細かく書かれており、エビデンスも豊富です。
情報が多いことを活かして、この書籍を基に勉強会の資料を作成するのも非常に有益だと思います。
臨床や勉強会でのインプットとアウトプットを自分なりに繰り返し、ぜひ学びを深めてくださいね!
通読がしんどいと感じる方は、とりあえず手元に置き、骨折の患者さんを診療するたびにこの書籍を参照して学びを深めるのも良いでしょう。
まとめ
以上、本記事では整形外科に関する医学書の中でも、
- 「まずはこの1冊を読み込む!必読の一冊!」
- 「非整形外科医向けの本ではじめの一冊にぴったり!」
- 「膝が痛い、腰が痛い、様々な主訴での鑑別を学べる! フローチャートを理解すればずっと役立つ!」
- 「絶対に骨折を見逃したくないあなたに!」
という全ての研修医におすすめの4冊を紹介させていただきました。
整形外科疾患への初期対応は、特に高齢化が進む日本では、どのような科の医師として働く上でも大切な技術だと思います。
ぜひこれらの医学書を手に取り、医師として一生役に立つ知識を身につけてくださいね!
<プロフィール>
三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター
立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。
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