記事・インタビュー

2024.07.31

<開催報告>けいゆう先生と考える!後悔しない診療科の選び方 ③ワークライフバランスとキャリア選択に関する疑問

第1章) 後悔しない診療科の選び方

第2章) 入局のメリット・デメリット

第3章) ワークライフバランスとキャリア選択に関する疑問 ※今回

第3章) ワークライフバランスとキャリア選択に関する疑問

 司会  アンケートではワークライフバランスに関する質問も行いました。「仮に呼び出しが多い診療科・勤務先で働いていて家族ができた場合、あなたならどうしますか」という質問に対して、「同じ診療科で QOL の高い勤務先へ転職する」という回答が最も多くありました。

ワークライフバランスが崩れたら、「診療科を変えずに転職」がトップ

 山本先生  勤務先の変更に関する希望をどの程度受け入れてもらえるのかは医局によって全然違うと思います。希望受け入れてもらえる、受け入れてもらえないの2択じゃなくて、結構グラデーションがあると思うんですね。僕自身は、こういう強度で働きたい、という相談に対して、状況に応じて選択肢を提示してもらえる医局にいますし、そういう医局も結構あると思うんですね。自分の候補となっている医局のシステムや風土を、事前にちゃんと情報収集しておいた方がいいと思います。

あと皆さんが今後、すごく働きづらいな、自分に向いていないな、と思ったときに、よくよく注意してほしいのが、本当にその診療科の仕事が自分に向いていないのか、それとも単に環境が良くないのかというのが、区別がつきにくいことなんですよ。しんどい渦中にいると特にそうです。自分は全然向いてないと思って、その診療科自体をやめてしまうと、実はちょっと勿体ないかもしれない。もしかしたら、施設を変える、環境を変えることによって、同じ診療科の仕事をやっていけるかもしれない、また仕事が好きになれるかもしれない。 完全にやめてしまうという選択肢が必ずしも正解じゃないかもしれない。働く環境を変えるとか、医局を変えるでもいいと思うんですね。こういう選択肢を常に持っていてほしいです。
よくあるのが、例えば外科を辞めたいという若い先生が、実は職場を変えると、また仕事に前向きになれたりすることがあるんですね。 環境を変えるだけで解決できることもあるので、ぜひそのことは覚えておいてほしいかなと思います。

診療科選びは固定ではない、もう少しおおらかでよい

 山本先生  あとはこのデータで「そうならないように QOL の高い診療科を選ぶ」という方が25%しかいなかったのはある意味驚きでした。
選んだ働き方を一生続けないといけない、と完全に将来を固定しなくてもよくて、途中で変えることはできます。例えば僕の後輩にも、元々内科をやっていて外科に転向した人がいます。最初から一世一代の選択を迫られているんだとは思わなくていいと思うんですよね。もう少しおおらかに見ても全然いいと思いますよ。

これからいろんな症例を経験して、いろんな診療科を回ったら、案外途中で興味のある科が変わることもよくあります。
僕の後輩で、学生時代ずっと外科志望で、外科系コースで初期研修を受けていて、当然外科に進むものと思っていたら、初期研修2年目の夏に「すいません、内科に変えます」という人がいました。ずっと外科医に憧れて、外科医になりたかったという人が、研修医2年目の秋に内科に変える。それでいいんですよ。あまり自分のイメージを自分で固定してしまわない方がいいとよく思います。

 質疑応答 

 研修医・医学生からの質問① 

ー山本先生は研修医時代と今とで、考えているキャリアプランは違いますか?

 山本先生  実は全然違うんですよね。僕は、大学時代内科医志望だったんですね。特にがん診療に興味があって、腫瘍内科か放射線治療科が良かったんです。初期研修も最初はずっとそうだったんですが、いろいろな科をローテートするうちに消化器外科志望に変わりました。
消化器外科というのは、がんの手術をして病気を切除して5年たって、再発がなかったら卒業ですって言えるんです。「おめでとうございます。もう病院来なくていいですよ」って言えるんですね。こっちの方が自分には向いている、と気づいたのが初期研修の1年目のときなんです。やっぱり実際の患者さんの診療に携わらないと、こういう側面は見えにくいなと思いましたね。

 研修医・医学生からの質問② 

ー志望科を内科から外科に変えるにあたり、実際に外科で働き始めて合わなかったらどうしようという不安はありませんでしたか?

 山本先生  それはもちろんありましたよ。何科に入っても、自分に合うかどうかやってみないとわからないところはあると思うんですね。
これは自分が指導する立場になって、後輩を見ていても思うんですよ。
例えば卒後3年目で外科に入ってきますよね。 最初のラーニングカーブの角度が急で、早く上手くなる人とゆっくりうまくなっていく人。その角度は人によって違うんですけど、最終的にどうなるかは最初の段階では分かりません。最初のカーブが緩やかっだった人が、のちに逆転するかもしれない。
どんなふうに自分が成長するのか、これは実際にやってみないとわからない。どの診療科でも同じですよね。

 研修医・医学生からの質問③ 

ー結婚や相手の出産など、家族が増える機会に当たって、最も悩んだあるいは考えたことは何ですか?

 山本先生  家族ができ、自宅から遠いところに通わないといけなくなったときに、引っ越すかどうかと考えました。子供が2人、まだ小さい頃、僕が大阪から京都に通わないといけなくなったことがありました。もし今の家から通うとしたら往復2時間以上。子供は近くの幼稚園にも行っているし、そこに適応している、という場面で引っ越すかどうか。これが、僕が悩んだポイントで、家族ともずいぶん相談しました。
まず、どの経路で通うかと考えるわけです。電車を調べたところ、10分ぐらい余分にかかるけど最初から最後まで座っていける方法があるとわかったんです。そうすると、座っている間にいろいろ作業ができるんですね。朝の1時間、朝活するには貴重な時間ですよね。よくよく考えると、一見デメリットに思えたことがメリットに変わると気づいたんですね。結局、その時間を利用して医療情報サイトを作ったり、書籍の原稿を書いたりしていたんです。
デメリットが多く見える選択肢でも、自分で良い方向に変えられることもありますから、ぜひ参考にしていただければと思います。

第1章) 後悔しない診療科の選び方

第2章) 入局のメリット・デメリット

第3章) ワークライフバランスとキャリア選択に関する疑問 ※今回

山本 健人

<開催報告>けいゆう先生と考える!後悔しない診療科の選び方 ③ワークライフバランスとキャリア選択に関する疑問

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