記事・インタビュー
民間医局コネクト編集部です。民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。
今回は、『呼吸器内科診療の掟』を、著者の中島 啓先生に紹介いただきます。
著者解説
本書は、研修医、若手医師の先生方向けに呼吸器内科診療において実臨床で役立つ鉄則をまとめた書籍です。
「私が研修医、若手医師だったらこんな本が欲しいかな」ということを意識して目次や内容を企画しました。さらに私自身が「このテーマについては、この先生の原稿が読みたい!」という全国のトップエキスパートの先生方に執筆をご依頼し、呼吸器内科医から感染症内科医、総合内科医まで多分野の医師で、総力を挙げて書き上げました。
各トピックにおいて、実臨床ベースで本当に役立つことを重視して”5つのRules”を挙げてまとめています。ガイドラインではカバーができない臨床現場でのコツ、ピットフォールまで踏み込んで書いています。よって、本書は、呼吸器内科臨床における“クリニカルパール”の結集ともいえます。
そして、呼吸器内科の幅広い診療内容をカバーすべく、病歴、身体所見、症候学、検査、画像、呼吸管理から、薬剤の使い方、呼吸器コモンディジーズ、重要疾患まで57のテーマを選択しています。よって、呼吸器疾患を診療して遭遇する様々なトピックに関して、まず押さえておくべき重要ポイントを理解することができます。
さらに、本書では、最新のエビデンスをおさえながらも、臨床現場で判断が必要となるエビデンスのない領域についても踏み込んで解説しており、かゆいところに手が届く内容となっています。実際のケースに合わせてイメージしやすくするために、”Rules”を適応する症例提示をできるかぎり紹介しました。また、”1STEP UP”として、今後に繋がるトピックや専門的な補足事項についても触れています。
呼吸器診療では、肺を通して体全体を見て、全人的医療を行うことが大切です。本書に書かれた珠玉の”Rules”は、臨床現場で、研修医、若手医師の先生方が、ハイレベルな呼吸器診療、トータルな患者ケアを行う上で、強力な武器になると思います。
各エキスパートの先生方が、臨床現場で若手医師に指導されている内容が豊富に盛り込まれており、熱意ある指導医にオンザジョブで指導を受けているような感覚が得られると思います。
本書が、内科診療、呼吸器診療に取り組む研修医、若手医師の先生方に少しでも役に立ち、患者さんの幸福に貢献できることを願っております。
目次
1 病歴聴取
病歴聴取は個々の患者の診断・治療の最適解を得るための基盤になる。
五感を働かせ時間軸を意識して、メリハリの効いた病歴聴取に努めよう。<寺田 邦彦>
2 身体診察 胸部(聴診含む)
―好きこそもの上手なれ―physicalを診療に活かそう!<皿谷 健>
3 身体所見 胸部以外
胸部以外にも呼吸器疾患の情報は豊富にある。<福山 一>
4 呼吸困難・低酸素血症
数字と向き合い、患者とも向き合う。<倉原 優>
5 咳嗽
咳の原因を検索し、適切な治療に結びつけよう。<田中 希宇人>
6 血痰、喀血
喀血の診断、治療は呼吸器内科医の総合力が求められる。
大量喀血では気道確保と気管支動脈塞栓術の適応を。<名嘉村 敬>
7 胸水の対応
胸水穿刺から診断までの流れを体得しよう。<下田 真史>
8 胸部X線
見逃しのないよう「型通り」の手順を身につけよう。<長尾 大志>
9 胸部CT読影
胸部CTで肺野病変を評価する場合は分布、性状、小葉構造との関係に着目しよう。<中島 啓>
10 肺結節影のフォローアップ
画像所見と臨床背景から肺癌の可能性を推定してフォロー計画を立てる。<次富 亮輔>
11 呼吸機能検査〜適応や解釈〜
呼吸機能検査では、まずフローボリューム曲線を見よう。<森川 昇>
12 気管支鏡検査 適応や解釈
あらゆる疾患の可能性を考え、抜けの少ない手技や検体提出を心がけよう。<笹田 真滋>
13 肺エコー
肺エコーは疾患を選べば胸部CTに劣らない検査であるため、その特性を十分に理解しよう。<関口 大樹 山田 徹>
14 人工呼吸管理
実臨床で使えるエッセンス<小野山 薫 則末 泰博>
15 非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)
適応を見極め、HFNCと巧みに使い分け、質の高いNPPV管理を目指そう。<永田 一真>
16 ネーザルハイフロー(HFNC)・酸素療法
高流量システムとHFNCの特性を理解し、適切なHFNC導入を行おう。<永井 達也>
17 呼吸器診療での漢方の使い方
目からウロコの漢方:対症療法から“本治”まで。<南澤 潔>
18 呼吸器緩和ケア薬・プロとしての看取りへの関わり方
本当のプロとは、解決できない苦しみを前にしても逃げずに関わり続けることである。<長野 宏昭>
19 COVID—19
重症化リスクのある患者に早期に診断し、早期に治療を行うことがコツ。<櫻井 隆之>
20 インフルエンザ
どんなに忙しくても情報の収集と解釈は最後まで丁寧に。<藤田 浩二>
21 市中肺炎
重症患者では、IDSA/ATS criteriaを用いてICU入室の判断を行い、副腎皮質ステロイドの併用を検討する。<黒田 浩一>
22 院内肺炎
一律に緑膿菌やMRSAをカバーせず、重症度と耐性菌リスクを評価し抗菌薬の選択を行うこと。<伊藤 明広>
23 重症肺炎・ARDS
重症度を評価して、マクロライド系抗菌薬やステロイドの併用を考慮しよう。<阿南 圭祐>
24 誤嚥性肺炎
原因疾患や嚥下機能を評価し、個別化した丁寧な診療を行えるようになろう。<吉松 由貴>
25 膿胸(急性膿胸を中心に)
膿胸を疑ったら速やかなドレナージと抗菌薬投与。<石田 正之>
26 結核(潜在性結核含む)
疑わなければ診断できない。治療抵抗性の気道症状は必ず検査!<武藤 義和>
27 非結核性抗酸菌症
喀痰抗酸菌検査を上手に活用しよう。<長尾 元太 南宮 湖>
28 気管支拡張症
マクロライド療法の前に原因疾患の鑑別と呼吸器理学療法を!<森本 耕三 伊藤 優志>
29 慢性肺アスペルギルス症
臨床経過と検体検査から慢性肺アスペルギルス症の発症を判断しよう。<武田 啓太>
30 侵襲性肺アスペルギルス症
バイオマーカー検査や画像所見のみで判断せず、患者背景や身体所見などで総合的に診断し、早期治療導入を!<冲中 敬二>
31 ニューモシスチス肺炎
検査前確率を見積もり、β—D—glucanを診断の補助に用いよう。<中島 啓>
32 喘息診療 患者ごとのテーラーメイドな診療をしよう
患者とのコミュニケーションを大切にし、喘息診療を楽しもう。<坂本 慶太 出雲 雄大>
33 難治性喘息
難治性喘息の治療においては、診断の妥当性、アドヒアランス、増悪因子の回避、併存疾患の管理が重要で、適切な時期に適切な生物学的製剤を考慮する。<中込 一之>
34 喘息 増悪の対応
重症発作以上かどうか。それが問題だ。<山田 英恵>
35 COPD診断・安定期治療(HOT)
COPDの薬物療法では、LAMA、LABA、ICSを適切に使いこなそう。<中島 啓>
36 COPD増悪
普段からの状態の変化を見逃さない。<大藤 貴>
37 吸入薬の使い方
適切な薬剤を適切に気管支へ届けよう。<白木 晶>
38 喘息とCOPDのオーバーラップ
コントロール不十分な喘息、COPD患者をみたらACOの可能性を考えよう。<伊狩 潤>
39 気胸
気胸を診断したら虚脱の程度を判断して、治療方針を考えよう。<中島 啓>
40 LAM、Birt—Hogg—Dubé症候群
囊胞性肺疾患の代表疾患であるLAMと、その鑑別疾患について一度しっかり勉強しておこう。<飛野 和則>
41 肺高血圧
日常的な診察・検査から肺高血圧症を疑おう。<竹田 健一郎 重田 文子>
42 間質性肺炎の原因診断
内科力全開で挑む:問診と身体診察が鍵を握る。<宮本 篤>
43 特発性間質性肺炎の管理
疾患挙動と治療選択を意識して、ヘテロな集団である間質性肺炎をとらえよう。<杉野 圭史>
44 間質性肺炎急性増悪
早期に発見し、鑑別をしっかり行う。<伊藤 博之>
45 膠原病肺(血管炎/肺胞出血 含む)
間質性肺炎を疑ったら、第一に膠原病肺も含めた「背景のある」間質性肺炎ではないかと考えよう。<根井 雄一郎>
46 薬剤性肺障害
まず、薬剤性肺障害を疑うことから始めよう。<堀益 靖>
47 サルコイドーシス
特徴的な胸部画像や不定愁訴から、本疾患を鑑別にあげられるようにしておこう。<田中 健介>
48 過敏性肺炎
過敏性肺炎診療指針2022を活用し、抗原の同定および抗原回避の指導を行いましょう。<岡本 師>
49 アレルギー性気管支肺真菌症
感染と免疫の両側面から病態を理解しよう。<石黒 卓>
50 好酸球性肺疾患
好酸球性肺疾患の治療は、原因の除去、原疾患の治療、ステロイドである。<鶴野 広介> ※鶴は正しくは雨かんむりに(隹+鳥)
51 じん肺
地域差はあるものの、じん肺はしばしば出会う疾患である。
労災補償や石綿健康被害救済制度などの公的制度も絡むため、俯瞰的に学んでおこう。<飛野 和則>
52 肺胞蛋白症
胸部CT、気管支鏡検査、抗GM—CSF抗体による正確な診断が重要!
間質性肺炎と間違えてステロイドを安易に使わないように。<新井 徹>
53 胸膜腫瘍(悪性胸膜中皮腫、孤立性線維性腫瘍)
胸膜腫瘍として悪性胸膜中皮腫と孤立性線維性腫瘍の診断と治療をおさえておこう。<大槻 歩>
54 縦隔腫瘍(胸腺腫瘍)
縦隔腫瘍を正しく診断し、治療に繁げよう。<園田 匡史 大熊 裕介>
55 肺癌の薬物療法
ドライバー遺伝子、PD—L1、患者リスクに応じて治療選択を。<高倉 敏彰 藤本 大智>
56 肺癌の集学的治療(化学放射線療法を中心に)
集学的治療チームで個々の症例に最適な治療方針を検討しよう!<山田 薫梨 中原 善朗>
57 睡眠時無呼吸症候群
頻度の高い睡眠時無呼吸症候群が診られる呼吸器内科医になろう。<寺田 二郎>
<著者プロフィール>
亀田総合病院呼吸器内科主任部長。
福岡県生まれ。2006年九州大学医学部卒。患者さんに最高の医療を提供するために、亀田総合病院にて診療・教育・研究の充実に取り組む。2013年〜2017年、2021年、2022年、亀田総合病院呼吸器内科ベストティーチャー賞を受賞。代表的著書に「胸部X線・CTの読み方やさしくやさしく教えます!」(羊土社)、「レジデントのための呼吸器診療最適解」(医学書院)がありamazonベストセラーとなる。研究領域は、呼吸器感染症・ワクチンを主体とする臨床研究。2023年9月より現職。日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医。米国内科学会、米国胸部疾患学会、欧州呼吸器学会にも所属。Scientific ReportsのEditorial board member. Human Vaccines & Immunotherapeutics のAssociate Editor. X/Twitter(@keinakashima1)で、クリニカルパール・臨床研究・医学教育・キャリア形成について情報発信しており、若手医師を主体に多くのフォロワーを有する。亀田総合病院呼吸器内科のブログ(亀田呼吸器道場)とFacebookの運営もしている。
ブログ(亀田呼吸器道場) : https://www.kameda.com/pr/pulmonary_medicine/index.html
X(旧twitter): https://twitter.com/keinakashima1
Facebook : https://www.facebook.com/kameda.pulmonary.medicine
中島 啓
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