記事・インタビュー
はじめに
研修医が臨床現場に立つとき、多くの壁に直面します。
もちろん医学的知識が実臨床に即したものに昇華できていないため、苦労することもあります。
ですが、実はそんな医学の知識とは異なるスキルが臨床現場では要求されるため、臨床研修がうまく行かないこともしばしばあります。
そこで今回は、臨床現場の壁を乗り越えるための、研修医が身につけるべきスキルを学べる医学書を7つ厳選してご紹介します!実臨床に即した医学的知識も併せて学べる書籍というのを特に意識しました。
これらの書籍は、実際の臨床現場で遭遇する問題を理解し、解決するための具体的なスキルについて学べるものばかりです。これらの書籍を読むことで、今の自分より少し成長できて、自信を持って臨床現場に立つことができるよう願っています。
- 臨床現場の壁を乗り越える! 研修医に必要なスキルを学べる医学書7選
1.「型」が身につくカルテの書き方
まず臨床現場でぶつかるのが、カルテ記載です。医学生の時のカルテ記載とは異なり、臨床現場の流動的なニーズに合わせる必要があることに最初は戸惑うこともあるでしょう。最初にカルテ記載の基本を学ぶための入門書としては、この本をおすすめします。空手の型のように、カルテの書き方にも「型」が存在することをまずは意識しておきましょう。
カルテ記載の基本から始め、効率的でわかりやすいカルテの作成方法が段階的に説明されています。実際の臨床現場で遭遇する典型的な症例や状況をベースに、カルテ記載について実践的に解説されているので、読んだその日から活かせるマインドや手法が盛りだくさんです。医学生や研修医の初期段階などの早い段階でこの書籍を通読することで、カルテ記載は格段に体系的になります。
2.病棟指示と頻用薬の使い方 決定版
研修医が臨床現場で直面する大きな壁、特に病棟管理と患者への指示出しに焦点を当てた実践的な一冊です。国家試験では教わらない「病棟指示」という概念は、最初は理解が難しいにもかかわらず、研修医が臨床研修の初期段階から任される頻度の高い業務ですね。なかなか体系的に学ぶ機会もなく、現場での経験や先輩からの口伝えに頼ることが多いのが実情でしたが、この一冊が登場してから研修医の学習に大きな革命が起きたと私は思います。
この書籍で、指示出しの基本から、頻用薬の効果的な使い方、病棟スタッフとのコミュニケーションツールとしての病棟指示というものについてしっかり学んでみてくださいね。
3.あの研修医はすごい! と思わせる 症例プレゼン〜ニーズに合わせた「伝わる」プレゼンテーション
症例プレゼンテーションは、研修医にとって大きな壁の一つです。苦手意識を持つ人も多いのではないでしょうか?
これは単に医学的知識を共有するだけではなく、いかに内容を必要十分にまとめて、相手のニーズに合わせて構築することができるかという、コミュニケーション能力が試される場でもあります。
この本では、相手のニーズを意識することの重要性が何度も強調されています。プレゼンテーションはプレゼント、その本質と具体的な活用を学ぶのにうってつけの一冊です。
4.医師のためのオールラウンド医療文書書き方マニュアル
医師の日常業務には、思った以上に数多くの医療文書を作成するタスクがあります。これらの文書は患者の治療経過や診断の記録、さらには医療チーム間のコミュニケーションを円滑にするために不可欠です。しかし、多様な医療文書それぞれには、特有のフォーマットや記載すべき重要なポイントがあります。こうした文書を適切に作成する能力は、医師にとって必須のスキルと言えるでしょう。
この一冊で、医師が作成する必要がある医療文書の種類と、それらの文書作成において押さえておくべきポイント、さらには型を豊富な事例とともに学ぶことができます!
5.メール文章力の基本 大切だけど、だれも教えてくれない77のルール
社会人になった瞬間、求められるビジネスメールの文章力。明確で効果的なメールでのコミュニケーションを実現するための具体的なルールやテクニックが数多く紹介されています。
ビジネスメールの書き方に関する多くの書籍が存在しますが、この本が特に際立っている理由は、そのわかりやすさと実践性にあります。77のルールは、すぐにでも仕事で活用できるように、具体的で簡潔にまとめられています。医師向けの書籍ではありませんが、ビジネスメールの書き方について様々な書籍を読んだ中で一番わかりやすく、実践しやすいと感じました。
6.家庭医からER医まで 高齢者に寄り添う診療 学ぼうGeriatric Mind
国家試験と臨床現場との間に存在するギャップに注目すると、その一因として高齢者診療についての学習が足りないというのが大きな原因の一つかと思います。高齢者はしばしばはっきりしない主訴を持ち、複数の慢性疾患を併せ持つことが多く、また、非典型的な症状を示すこともあります。診断と治療の過程を複雑にし、研修医にとって大きな壁となるのです。
この一冊で、高齢者医療に寄り添うマインドや思考回路、高齢者患者のニーズを感じ取れるような臨床推論の基本を学びましょう。
7.病状説明: ケースで学ぶハートとスキル
私も含め、多くの研修医や若手医師は、上級医の外来診察やインフォームドコンセントを後ろについて見学しながら、病状説明の技術を「なんとなく」学んできました。病状説明に関する理論を体系的に解説した書籍はあまりありませんが、その中でもおすすめの一冊がこの本です。
医師が患者やその家族に対して病状を説明する際に必要な理論と技術、さらにはその背後にある心理的アプローチが詳細に解説されています。シチュエーション別の実践編も含まれており、これらの例を通じて効果的な病状説明のための「型」を学び、すぐに活かすことができます。
病状説明に自信がない方は、この本を読んで苦手意識を克服してください!
(番外編)研修医の羅針盤 「現場の壁」を乗り越える、国試に出ない必須3スキル
手前味噌で恐縮です…笑
研修医の先生方が直面する課題に対応するため、“国家試験と臨床現場との間のギャップを埋めるための指南書”として執筆させていただいた一冊です。
医療現場に足を踏み入れたばかりの研修医が直面する壁と、それを乗り越えるために必要なスキルやマインドセットをなるべくわかりやすく、専門的な言葉は使わずに網羅的に解説しました。
壁を乗り越えるためのスキルとして「コミュニケーションスキル」「臨床推論スキル」「意思決定スキル」の3つについて楽しく学ぶことができます。
この羅針盤を手にして、臨床研修という大きな旅路を楽しんで乗り越えていってもらえたら嬉しいです◎
まとめ
いかがでしたでしょうか?国家試験が終わった直後であったり、臨床研修の時期がまだ浅かったりすると、これらのスキルがいかに大切なものなのかということを実感するのは、まだ先のことになるかもしれません。ですが、これらは必ず二年間の臨床研修で身につけなければならないスキルたちであり、さらにそれらを学ぶことが実臨床だけでは難しいものがほとんどです。
そのため、興味があれば、ぜひこれらの書籍をご一読いただき、もし現状ではなかなか必要性がわからなかった場合も、今後、臨床現場で働く中でその必要性がわかってくることもあるかと思いますので、そんな時はこの記事を思い出してみてください。みなさんにとって、自分に最適な一冊を見つけられるお役に立てれば幸いです。
<プロフィール>
三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター
立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。
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