記事・インタビュー

2021.05.07

ヘルステックCEOが語る、医師の働き方①

「アジア×医療ヘルスケア」企業のCEOに聞く!

医療ヘルスケア企業の海外展開支援や病院運営、国内外の医療系スタートアップへの投資、カンボジアでのウェルネスジム経営など、「アジア×医療ヘルスケア」にまつわる事業を展開するメプラジャパン。CEOの佐藤氏から、自身のユニークな経歴と、「医療×ビジネス」という医師の新たなキャリア戦略と可能性についてお話を伺いました。

<お話を伺った方>

佐藤 創(さとう はじめ)
株式会社メプラジャパン 代表取締役CEO

大学在学中に教育系NPO法人を設立し理事長就任。コンサルティングベンチャー取締役、医療法人の経営企画室勤務を経て、株式会社メプラジャパンを創業。2012年にカンボジアに移住し、日系病院設立などを支援。2017年より、東南アジアの国々を飛び回りながら各国の医療機関・スタートアップ・投資家との協業を推進。これまで代表として 3社創業、数社の役員・顧問を歴任
経済産業省「始動 Next Innovator 2018」選出
東京都主催「X-HUB TOKYO Global Startup Accelerator」メンター
シンガポール Galen Growth社 Global Head of Partners (Japan)
iU 情報経営イノベーション専門職大学 客員講師
公式ホームページ:https://mepla.co.jp/

「医療×ビジネス」について学び始めた学生時代

――佐藤さんは大学時代から、起業することを意識されていたそうですね。

大学は一橋の経済学部というばりばりの文系ですが、「いつか会社をやりたい」と考えていました。入学1年目は飲み会やバイトに明け暮れましたが(笑)、2年目にあるIT企業のインターンに参加したことをきっかけに、その後6社くらいの企業でインターンとして働きました。学内は文系でニッチな人が多かったので、学外で理系の人と関わる機会が増えたことが楽しかったですね。

3年の夏に、チームでのプロダクト創生や組織運営に挑戦してみたいと考え、キャリア教育等をテーマにしたNPOを立ち上げて、翌年法人化しました。同時期に、コンサルティング会社の役員にもなり、まる1年半くらいは大学に行かず、朝から終電まで仕事をしていました。

――医療に関わるビジネスに興味を持ち始めたのはその頃ですか。

大学4年生のとき、母と祖父がそろって大病をしたことをきっかけに、医療とその周辺にある課題の多さに気付き、ビジネスの側から貢献できないかと考えるようになりました。以前から、本格的に企業するなら社会的意義が高く、グローバルに求められる仕事、世界中で様々なチャレンジができる仕事をしたいと思っていたのです。

しかも、医療は世界中の人に必要とされ、技術的にも日夜進化する面白い領域です。「自分が取り組むべきテーマこれだ」と感じて、医療の方面に舵を切ることに決めました。

――大学卒業後は北原国際病院で仕事をされていたそうですが、どのようなきっかけだったのでしょうか。

理事長の北原茂実先生の著書『病院がトヨタを超える日』を読んで感銘を受け、知人を通じて北原先生を紹介していただき、弟子入りのような形で飛込みました。北原国際病院は先端的でユニークな取り組みをしている病院でもあり、面白い人が集まっているだろうという期待感もありました。

その後、北原先生の外来見学を機に、経営企画室のインターンとして仕事を始めました。
病院と企業の共同新規事業や、東北大震災直後のクリニック立ち上げなど、様々なプロジェクトに携わり、医療人としても経営者としても鋭い視点と思想を持つ北原先生の元で、大きな学びを得ることができました。

――メプラジャパンとして起業されたのもその頃ですね。

インターンを始めて半年ほど後の2012年4月にメプラジャパンを創業しました。
主に国内向けに事業を拡張し、北原国際病院との仕事も続けていました。

――その後すぐに海外展開をスタートされたそうですが、きっかけは何だったのでしょうか。

2012年の10月に北原先生から急に国際電話がかかってきまして……。「佐藤さん、今からカンボジアに来られる?」と(笑)。
さすがにその日すぐには行けませんでしたが、カンボジアでのクリニックの開業に携わることになり、4日後くらいのフライトで向かいました。

大学卒業前に中国、カンボジア、インドの医療機関や企業家を訪ねる旅などを経験して、「いつかアジア新興国での仕事に携わりたい」という目標はあったのですが、そのチャンスが突然やって来たのです。そこから、カンボジアと日本を往復する生活が始まり、しばらく移住することにもなりました。

国内外でウェルネス事業やヘルステック事業に取り組む

――カンボジアで、北原先生からはどんなミッションを任されたのでしょうか。

2016年にカンボジアのプノンペンに「サンライズジャパンホスピタル(以下、SJH)」が開業し(※)、その少し前に実証実験的に小さなクリニックが開業しましたが、この二つの立ち上げに関わる調査や人材採用を担当しました。
※大手プラントメーカーの日揮・投資会社の産業革新機構・株式会社Kitahara Medical Strategies Internationalの民間3社の出資によるカンボジアの救急救命センター

――現地での医療従事者の採用はどのように行われたのですか。

SJHだけでも3000人以上の応募があり、英文履歴書・職務経歴書の選考を経て約1000人を複数回面接して、約120人を採用しました。基礎的な学力やPCのスキルチェックなども行っています。

職種ごとの知識や技術については、日本人医師、看護師、理学療法士などにもチェックをしてもらい、私は主に応募者のパーソナリティーや協調性、仕事に対する考え方を知るという役割でした。

――採用面で苦労されたことはどのような点でしたか。

どんなスタッフがSJHに向いているのかを、見極めていくことが難しかったですね。新興国であるカンボジアの医療水準は、全体的に高いわけではありません。
ですから、技術や専門性を求めるよりも、応募者が日本での研修を素直に吸収できるか、成長のポテンシャルがあるか、チームワークを重視できるか、どれだけカンボジアの医療や患者さんのことを考えているか、といった点を重視して、選考を進めました。

1970年代後半から1980年代後半まで、カンボジアでは長く内戦が続きました。ポル・ポト政権下での虐殺で医師が殺害され、病院も医療制度も教育も破壊されています。その影響で、40歳代以上の医師はほとんどいません。いたとしても、変わった背景を持つ人が多いといった事情もあり、医師に関してはおのずと若手を中心に採用する流れになりました。

――SJHの開業後に、メプラジャパンのビジネスも海外に乗り出されたのでしょうか。

結果的にそうなりました。
創業して10年目までには海外に進出したいと考えていましたが、今からできるなら今始めても同じだという感じでした。

――現在は国内と東南アジアを中心に、それぞれ、どのようなビジネスを手掛けているのでしょうか。

現在、国外では主にカンボジアでのフィットネス事業を展開しています。
具体的には、カンボジア国内で現在5店舗のフィットネスジムを運営し、上位中間層のビジネスパーソンに向けた、パーソナルトレーニングや食事指導等のサービスを提供しています。

医療の分野だけではなく、ウェルネスの分野からも予防医学や健康管理に関する支援・指導ができる環境が必要だと考えて設立しました。カンボジアでは、ウェルネスに課金する意識がまだ一般的ではありませんが、継続的に通われる方の数は増えています。今後も、カンボジア内でのトレーナーの育成や、ウェルネスに関するサービスのレベル向上を目指していきたいと考えています。

国内では、日本から主にアジア圏に進出する医療機関・医療関連企業の支援事業を行っています。主に、IoTやAIを使った医療現場の課題解決や、オンライン診療の開発などに取り組む大手IT企業や医療系スタートアップといった、ヘルステック系のクライエントのサポートが中心です。

――具体的には、どのような業務を担当されているのでしょうか。

基本的には、海外展開の0→1のフェーズを支援しています。多くの場合、プロジェクトの立ち上げの段階から関わり、候補となる国やそれらの国の医療規制の調査、パートナー企業の選出や交渉、出資のサポートなどを行います。

企業で働きたい医師、興味ある医師は、民間医局までお気軽にお問い合せください。

エージェントへ相談するお問い合わせ

佐藤 創

ヘルステックCEOが語る、医師の働き方①

一覧へ戻る